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ビジネスコラム

日本で年末に集中する「交響曲第9番」コンサートの謎

2018年12月26日

 早いものでもう年末です。年末といえば、ベートーヴェン作曲の「交響曲第9番(第九)」をテレビやラジオ、あるいはコンサートで耳にする機会が多い季節でもあります。しかし、この第九が年末によく演奏される習慣は、日本独特で世界的に類を見ないものです。いったいなぜ、日本で「第九」は年末の風物詩になったのでしょうか。その起源を探るとともに、魅力やそれにまつわるさまざまな話題を紹介します。

「第九」演奏の歴史は鳴門市からはじまった!?

 ベートーヴェンは、生涯に9つの交響曲を書きました。その中で最後に作曲されたのが「交響曲第九番ニ短調(合唱付き)」。日本では「第九」として親しまれている曲です。

 日本での初演は、1918(大正7)年6月1日のこと。徳島県板東町(現在の鳴門市)で、地元住民と交流するために、ドイツ人によって演奏されました。

 現在では、日本各地で演奏コンサートが開催されるようになっていますが、その多くは12月、それも年末近くに集中しています。これは世界的な傾向かといえば、そうではありません。では、いったいなぜ日本で年末に「第九」が演奏されるようになったのでしょうか。これには諸説があります。有力なのは、NHK交響楽団の前身「新交響楽団」による演奏に起因する説です。

 新交響楽団は、1927(昭和2)年の定期演奏会で初めて取り上げ、何度も「第九」を演奏し、特に年末に多く演奏会を開催。1940(昭和15)年の大晦日には、ヨーゼフ・ローゼンシュトック指揮による演奏がラジオで全国放送され、多くの日本人が「第九」を聴くことになりました。

 1947(昭和22年)にも、新交響楽団から改称した「日本交響楽団」が年末の日比谷公会堂で3回に渡って「第九」の演奏会を行いました。こうしたことが影響して、次第に「第九」は年末の風物詩になったというのです。

 それ以外にも、1943年に東京音楽学校(現在の東京芸術大学)で学生を見送るために行った年末の演奏がきっかけとなったなど、さまざまな説があります。

 いずれにしても日本は世界で最も多く「第九」が演奏されている国だとされます。その力強さと華やかさが、年末にふさわしい音楽として、人々に受け入れられているのかもしれません。

約3億円という値も付いた「第九」の価値

 「第九」は日本だけでなく、世界中で愛され、演奏されています。特にヨーロッパでは、古くからお祝い事などの際に多く演奏されてきました。

 たとえば、ドイツにある有名な「バイロイト祝祭劇場」では、1951年に行われた同劇場の再開記念公演でも演奏されました。また、1989年のベルリンの壁崩壊直後にも、レナード・バーンスタインの指揮で、東西6つのオーケストラと合唱団の合同演奏による「第九」が演奏されています。

 「第九」第4楽章にある「歓喜の歌」の主題は、欧州連合(EU)、欧州評議会ともに、ヨーロッパ全体を象徴するものとして「欧州の歌」として採択しています。それほどヨーロッパの人々にとっては、重要な意味を持つ音楽なのです。

 さらに、ユネスコが、後世に伝えるべき歴史的文書などの保存・公開を目的に創設した「世界の記憶(記憶遺産)」では、ベルリン国立図書館が所蔵するベートーヴェンの「第九」の自筆楽譜が登録されています。

 楽譜といえば、「第九」の初演にも使われた初版用の筆写楽譜が、2003年にサザビーズのオークションに出品されて話題を集めました。その時に競り落とされた金額は現在の価値で約3億円。音楽資料の落札価格としては、当時の最高額でした。

ベートーヴェンが交響曲なのに歌をいれた理由

 「第九」には、どのような魅力があるのでしょうか。大きな特徴としては、先ほども紹介した「歓喜の歌」という歌が入ることがあげられます。一般的に交響曲は、オーケストラだけで演奏されることが多く、「第九」のように合唱が入るケースはめったにありません。

 「歓喜の歌」は、ドイツの詩人であるシラーの「歓喜に寄す」という詩を再構成したものです。シラーの詩集を愛読していたベートーヴェンはこの詩に出会い、博愛精神に満ちた内容に感動、いつか曲をつけたいと考えていたようです。その想いが結実した第4楽章では、4人の独唱者と合唱団が力強い歌声を響かせ、「第九」の見所の1つとなっています。

 そんな「第九」の初演は、1824年5月7日のこと。ケルントナー・トーア劇場の専属オーケストラと合唱団に、楽友協会のアマチュアが加わって演奏され、合唱は総勢80名以上という大規模なものでした。

 ベートーヴェンは、その演奏中に指揮者の横でテンポを指示していました。演奏は大好評で会場は大きな拍手に包まれました。しかし、ベートーヴェンは当時、すでに聴力を失っていたため、最初は客席からの拍手に気づかず、見かねた歌手が客席を向かせて、初めて拍手を確認したというエピソードが残っています。

 このように「第九」は、さまざまなエピソードに彩られています。最近は、「第九」を一般の人々が合唱に参加する参加型の演奏会も盛んです。年末の文化的な楽しみとして「第九」の生演奏を聴いたり、あるいは自分で歌ってみるのもいいのではないでしょうか。

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