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ビジネスコラム

これからの企業戦略に欠かせないSXとは

2021年11月17日

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 カーボンニュートラルの実現をはじめとする環境に対する意識変革を受け、企業は持続可能性を重視した経営への転換が求められています。そうした中で、社会と企業のサステナビリティを実現する「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」が注目されています。SXとはいったいどのような考え方なのか、SXの動向や具体的な事例を交えて紹介します。

SXは企業の持続可能性を重視する経営変革の指針

 昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を頻繁に耳にするようになりました。DXとは「デジタル技術を活用した変革」を意味し、企業にとってこれから欠かせない戦略のひとつといえます。

 DXに加えて、いま注目されているのが「SX」という言葉です。SXは「サステナビリティ・トランスフォーメーション」とは、企業の「持続可能性」とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図る経営や、投資家との対話のあり方について変革するための指針とされています。

 SXは、経済産業省の「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」が、2020年8月に発行した「中間取りまとめ~サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて~」の中で紹介されています。

 そこでは、「企業のサステナビリティ」(企業の「稼ぐ力」における持続性)と「社会のサステナビリティ」(将来的な社会の姿)を同期化させ、エンゲージメントを行う経営や投資家との対話のあり方をSXの定義としています。

 企業のサステナビリティにおいては、企業としての「稼ぐ力」(強み・競争優位性・ビジネスモデル)を中長期で継続・向上するための取り組み、イノベーションなどに対する投資などを通じて、持続性を高めていくことが求められています。

 社会のサステナビリティにおいては、不確実性に備えて、将来的な社会の姿を見据えて、企業の持続性・成長性に対する中長期的な「リスク」と「オポチュニティ」(機会、好機)を把握して、経営に反映させていく必要があるとしています。

 そして、これらの2つのサステナビリティを同期化し、中長期の「対話」によるレジリエンス(適応力)の強化を図ることが重要だとしています。不確実性が高まる中でサステナビリティを高めていくために、将来へ向けてシナリオ変更がありうることを念頭に置き、企業と投資家が対話を繰り返すことによって、中長期的な価値創造のストーリーを磨き上げ、経営のレジリエンスを高めていくことを重視しています。

 SXが提唱された背景には、近年の社会環境における大きな変化があります。現在、世界的な気候変動やパンデミックなどで、グローバル経済の先行きに不確実性が増しています。そうした中で、リスクや環境の変化に対して、自社のビジネスがどう変化するのかを考えた経営指針が求められているのです。

コロナウイルス感染拡大の影響で「持続可能性」を再確認

 SXの持続可能性について考える上で、「環境負荷」は重要なポイントです。従来の企業経営では、「経済的発展」と「環境への負荷増大」は、いわばコインの表と裏の関係でした。しかし、2015年にパリ協定が発効し、国連でSDGsが採択されたことで、環境負荷を低減する考え方が世界的な潮流になり、経済的発展と環境負荷の低減を両立する企業経営への取り組みが本格化してきました。

 もし、自社のビジネスが環境への配慮に欠ける場合、短期的にみれば、利益を生んで発展し、経済的に潤うかもしれません。しかし中長期的にみると環境に与える影響が顕在化し、企業姿勢を問われ、収益などにも悪影響を与えることが考えられます。SXでは、こうしたリスクも含めて自社の持続可能性を検討することが重要になります。

 最近の調査でも、企業姿勢の変化が顕著に表れていることがわかります。東京商工リサーチ「第6回新型コロナウイルスに関するアンケート調査」(2020年7月14日公表)によると、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナを見据えて「企業戦略を見直した」または「見直す予定がある」と回答した企業は71%に上りました。しかも、見直し内容としては「持続可能性を重視した経営への転換」が69%と最も多いという結果になりました。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、事業に影響を受けた企業も多く、コロナ危機が経営方針の再確認を促したという側面もあると考えられます。今後の日本企業の経営戦略は、SXを念頭に置いて中長期的な視点から検討することが求められ、アンケート調査には、そういった現状を反映しているといえるでしょう。

企業イメージにSXは大きな影響を与える

 いま世界ではSXに取り組む企業が着実に増えています。たとえば、各国の自動車メーカーは、電気自動車(EV)の開発・販売の推進、充電設備の拡充、製造工場への再生可能エネルギーの採用、さらに温室効果ガスの排出を伴わないエンジンの開発などを積極的に行っています。

 米国の大手IT企業には、CO2排出ゼロを目標に掲げ、取引先を含めたサプライチェーン全体で、環境や社会に配慮した事業の根本的見直しなどに取り組んでいるところが多数あります。これもSXの典型的な例といえるでしょう。

 また、農業分野でのSXも進んでいます。日本の農業は、後継者不足が課題となっています。さらに、作業量の割に収益が得られにくいという傾向もあります。そこで、ICTを活用して質の高い作物を生産して高収益が得られるようにする試みが数多く行われています。収益性が高くなって日本の農業の魅力が高まれば、参入する人材や企業も増え、農業が持続性の高い産業に変革する可能性があります。

 SXによる影響は、事業内容だけでなく、企業の姿勢やイメージにも及ぶため、市場へ与えるインパクトも大きいと考えられています。現在では、製造業以外の業種、たとえば保険会社などのサービス業でも、カーボンゼロ宣言をはじめとする環境への負荷低減に取り組むメッセージを発信するようになっています。今後は、投資家だけでなく消費者もSXという観点で企業を見るようになり、推進しない企業は、時代に流れに取り残されてしまう可能性があるのです。今後、SXは企業経営を考える際の重要なテーマの1つとして、サステナビリティを高めるとともに社会や環境への適応を図るという点で、さらに浸透していくことでしょう。

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