eスポーツが世界的に急成長する中で、日本もようやく「eスポーツ元年」を迎えたといわれています。日本、そして世界においてゲーム文化がどのように発展し、そして、eスポーツが誕生したのでしょうか。今回は、eスポーツをめぐる動向と、その背景にある家庭用ゲーム機やPC、そしてクラウド化へと進化するゲーム事情について紹介します。
ゲームの世界で覇権を握った日本
1980年代から1990年代にかけて、日本は家庭用ゲーム機の分野で世界を席巻しました。その背景には、米国で起きたある凋落があります。
家庭用ゲーム機が初めて商用化されたのは、1972年に米国で発売された「Odyssey」だったといいます。その後、1976年には、家庭用ゲーム機「ATARI 2600」が発売されます。このゲーム機はカセット交換型であり、ソフトを変えることでさまざまなゲームを遊べるという点が受け、米国で大ヒットしました。
「ATARI 2600」が大ヒットしたことで、米国ではゲームソフトの開発に参入する企業が一気に増加します。しかし、新規参入して企業の中には、ゲームのノウハウを持たない企業も多く、ゲームソフトの質が急激に低下。それがユーザー離れを引き起こし、1980年代初頭から、米国での家庭用ゲーム機ブームは終息していきます。
それと入れ替わるよう現れたのが日本発の「ファミリーコンピューター」(以下、「ファミコン」)です。1983年に発売されたファミコンは、ゲーム機メーカーがソフトの開発会社をコントロールし、質の高いゲームをラインナップ。低価格ながら当時のアーケードゲーム並みのグラフィックを再現でき、多くのユーザーを驚かせました。
ファミコンの登場を契機に、家庭用ゲーム機市場には、さまざまな国内メーカーが参入。日本のみならず、世界の家庭用ゲーム機市場を国内メーカーがリード。特に日本では、家庭用ゲーム機を中心にゲーム産業が発達していきました。
日本とは異なる海外のゲーム事情
米国でも、ファミコンの登場とともに家庭用ゲーム機の普及が再度進むことになります。日本と事情が異なるのは、同時期にコンピューターが高機能化や低価格化し、一般家庭に浸透していったこと。それを受けて、コンピューター向けのゲームタイトルも次々と発売されていきました。
1990年の中ごろからはインターネットの整備が進み、PC向けのオンラインゲームが人気を集めていきます。オンラインゲームの熱はヨーロッパにも拡大。さらに、アジア市場でも、パッケージ型のゲームでは海賊版がすぐに流通してしまうため、オンラインゲームゲームが発展していきます。
PCゲームで人気のタイトルは、家庭用ゲームのそれとは少し趣が異なります。家庭用ゲーム機で人気なのは、家庭で一人でも楽しめるロールプレイングゲーム、あるいは友達と一緒に遊べるアクションゲームや格闘技ゲームです。また、ユーザーの中心的な年齢層は10代であるため、ゲームの表現は健全なものが多くを占めています。
一方、PCゲームは、オンラインで複数のプレイヤーがコミュニケーションを取りながら、目的の達成に挑むという戦略性の高いゲームが人気となっています。ユーザーの年齢層も、家庭用ゲームと比べて高く、敵を倒した時の描写などにおいてリアルさが重視される傾向にあります。
e スポーツで人気の「MOBA」とは
PCゲームの盛り上がりを受け、2000年に韓国eスポーツ協会(KeSPA)が発足。同年、ドイツではエレクトロニック・スポーツ・リーグ社(ESL)が設立され、eスポーツの大会運営やメディア展開が世界で本格化していくことになります。
現在、eスポーツで最大規模の大会は賞金総額が28億円を超えています。そこで競われるのは、複数のプレイヤーがチームを組み、敵チームの本拠地を破壊する「マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)」というジャンルのゲームです。
eスポーツで人気のジャンルはほかにもあり、一人称視点でキャラクターを操作して敵を倒す「ファーストパーソンシューティング(FPS)」、トレーディングカードを用いて対戦する「トレーディングカードゲーム(TCG)」などがあります。
日本人チャンピオンを何人も輩出しているジャンルもあります。特に日本が強いのが格闘技ゲームです。2018年に開催された世界的な格闘ゲーム大会「EVO」で、2つのゲームタイトルで日本人チャンピオンが誕生しています。
eスポーツの盛り上がりを支えるもの
海外で先行していたeスポーツですが、2018年は日本の「eスポーツ元年」になったともいわれています。
国内で、2018年2月には日本eスポーツ連合(JeSU)が発足しました。各種のプロリーグも設立されており、同年5月にTCGのプロリーグが、11月からは日本野球機構がゲームメーカーと共同で野球ゲームのプロリーグがスタートしています。
さらに、2019年9月28日から開催される「第74回 茨城国体の文化プログラム」で、eスポーツが特別競技として実施されることも決定しており、日本における動きは加速していきそうです。
今後、eスポーツはどのように発展していくのでしょうか。その動向に関係しそうなのが、ゲームの「クラウド化」です。今春には、海外の大手IT企業がクラウド経由でゲームを提供するサービスを発表し、大きな話題となりました。
ゲームのクラウド化が進むことで、“家でPCを使ってプレーしていたタイトルを移動中はスマートフォンで”と、デバイスレスになるというメリットもあります。デバイスレスが進めば、私たちにとってゲームがより身近な存在になり、eスポーツの普及にも弾みがつきそうです。
クラウド環境でも、高精細で迫力のあるゲームを楽しむためには、それを支える通信やデータセンターなどのインフラも重要になっていきます。2020年からの5G(第5世代移動通信システム)の商用化や、GPUサーバーといったデータセンターの進化とともに、これからもゲームやeスポーツの盛り上がりをみせていくのではないでしょうか。
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