ビジネスコラム

都市経営のDXを推進する「Project PLATEAU」とは

2021年8月11日

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 2021年3月26日、都市経営のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる新しい試みがスタートしました。その名は「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」です。国土交通省主導のもと、「Society5.0」実現に向けて、誰もが自由に利用できる3D都市モデルのデータ提供を目的としたプロジェクトです。その全貌を明らかにするとともに、都市や私たちに与える影響を考察します。

3D都市モデルのオープンデータ化で進む人間中心の街づくり

 「Project PLATEAU」は、3D都市モデルをオープンデータとして公開し、街づくりに関わる分野での活用を促すプロジェクトです。その公式Webサイト「PLATEAU ver1.0」では、東京23区をはじめとする全国56都市の3D都市モデルのオープンデータを公開しています。

 “プラトー”という名称は、フランス人哲学者のジル・ドゥルーズと精神分析家フェリックス・ガタリの著書『千のプラトー』に由来しています。ここでは、始めでも終わりでもない、精神の結節点として“プラトー(高原・台地)”という言葉が使われています。“プラトー”とは、一つの頂上を目指す統一的なものではなく、多様で自律・分散的なシステムが平面的に接続・連続することで強靭性を獲得していく哲学的な実践であるとされています。「Project PLATEAU」は、データ拡張性と連携性の高い3D都市モデルの提供により、あらゆる分野の価値が結び付き、サイバー空間を介して相互につながり、自律的で強靭な世界の発展していくという期待が込められています。

 3D都市モデルとは、二次元の地図に建物・地形の高さや建物の形状などを掛け合わせて三次元の地図を作成し、その上に建築物の名称や用途、建設年などの情報を加え、実世界の都市空間をデジタル上で再現したデータです。

 「Project PLATEAU」のデータは、許可されたルールの範囲内であれば、誰でも自由に複製・加工や頒布ができます。たとえば、3D都市モデルを活用したフライトシミュレーションにより、高層ビルが立ち並ぶ都市部でも安全かつ効率的なドローン航行ができるように実証実験を行っていたり、また新型コロナウィルス感染症の拡大によって緊急事態宣言が発出されているなか、これらのデータを利用して、百貨店を中心としたバーチャルな都市空間の街歩きを実現しようとする動きもあります。

 これまで、建物やエネルギーに関する情報は、各省庁や地方自治体に分散していました。3D都市モデルにこれらの情報を統合することで、街づくりにおける都市景観の分析や、2050年カーボンニュートラル実現に向けた温室効果ガス排出量の予測など「Project PLATEAU」には、社会課題解決へ貢献し、それに伴うさまざまな分野でのイノベーションと、新しい市場を創出することが期待されています。

意味情報を加えもう一つの都市をバーチャル空間に構築

 これまでも3Dマップはさまざまな分野で活用されていますが、それとProject PLATEAUの3D都市モデルとでは異なる点があります。ではどこが違うのでしょうか。

 従来の3Dマップは、都市空間の「形状」を単純に再現した「ジオメトリー(幾何形状)モデル」と呼ばれるものでした。一方、「Project PLATEAU」の3D都市モデルは、3Dマップに「セマンティクス(意味情報)モデル」を加える点が特徴です。実際に存在する建物や街路、橋梁といった構造物を3D化したデータに、名称や用途、建設した年、行政計画といった意味情報を付与します。

 建物や街路の名称、用途などの情報を記述するためのデータフォーマットには、「CityGML」を採用しています。CityGMLは、セマンティクスを記述できる地理空間データのための唯一の標準データフォーマットです。これにより、さまざまな地理空間データとの重ね合わせや加工が簡単に行えるようになります。

 これまでの日本では、CityGMLによって地理空間データに付与できるようになった建物や人口流動、エネルギーなどの情報は、各省庁や地方自治体が分散して管理していました。そのため相互の連携が十分にとれず、貴重なデータが活用されずに終わることも珍しくありませんでした。

 そこで「Project PLATEAU」では、産学官の連携を強化するために、社会基盤情報流通推進協議会と協定を結びオープンデータ化を開始しました。こうして都市情報を集約し、三次元化した地形データと統合した点が「Project PLATEAU」の大きなポイントです。

 「Project PLATEAU」のような、サイバー空間に実世界の環境を再現し新しい街づくりに役立てる試みは「デジタルツイン」と呼ばれることもあります。同様の試みは他にもあります。たとえば、「DTC(デジタルツインコンピューティング)構想」は、その一例です。

 DTC構想は、実世界とサイバー空間とを結びつける「デジタルツイン」の概念をさらに発展させ、多様なデジタルツインを自在に掛け合わせてさまざまな演算を行うことにより、大規模で高精度な実世界をサイバー空間に再現するものです。

 DTCを用いることにより、地球・宇宙規模のシミュレーション、都市の課題発見・解決、疾病拡散予測・抑制、個人の疾病予測をはじめとする先端医療といった革新的サービスの創出が可能となるとしています。

「Project PLATEAU」が推進する未来の新たな街づくり

 「Project PLATEAU」には、データ活用による新しいかたちの街づくりに寄与することも考えられています。3D都市モデルに、GPSなどから取得した位置情報を重ねることにより、場所や空間における人や車の流れを可視化できます。さらに、これを活用して、街の空間やモノが、人々の行動にどのような影響を与えるのかをヒト目線で検証している事例もあります。こうした検証は今後、街の魅力を高めるために活用できるものと期待されています。

 また、このコロナ猧と、今後も起こりうる感染対策として、カメラやセンサーにより集めた人の流れや時間ごとの密集度などの情報を集約し可視化して、人の集まる場所の混雑状況を把握することが重要になってきています。混雑の把握・予測が正確に行えるようになると、混雑のピーク時間に合わせて移動や入場の制限をかけ、過密を避けるといった対策を打てるようになります。こうした行動データに「Project PLATEAU」が実現する3D都市モデルをかけ合わせることで、効果を高い精度で予測しつつ、建物環境や空間形成、交通動線などを検討する「スマート・プランニング」が可能になります。

 防災も「Project PLATEAU」への期待がかけられている分野です。3D都市モデルを活用した防災計画の可視化により、被災を回避しやすい場所の特定や避難ルートの検証など、災害リスクを正確に知ることができれば、より精緻な計画の立案につながります。

 このように、「Project PLATEAU」をはじめとする3D都市モデルを未来の新たな街づくりへ活用することが本格化しつつあります。「Project PLATEAU」は、都市経営にデジタルトランスフォーメーション(DX)をもたらすだけではなく、さまざまな分野に影響を及ぼすことで、イノベーションを引き起こし、街づくり以外にも、ビジネスや生活、行政のありかたを変える可能性があると考えられています。仮想空間と現実空間を高度に融合させて経済発展と社会的課題の解決を両立する「Society5.0」実現に向けた取り組みとして、「Project PLATEAU」に注目してみてはいかがでしょうか。

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