デジタルトランスフォーメーション(DX)に向け、さまざまな企業がAIやIoTなどの活用を開始しています。そうしたことに対応するため、GPU(グラフィックス プロセッシング ユニット)を搭載した高性能サーバーの活用もはじまっています。そこで問題になっているのは、高性能化と引き換えに超高発熱となったサーバーの冷却。今回は、データセンターの高発熱化に対応するため、進化、多様化する冷却方法について紹介します。
データ活用が企業の競争力を高める
少し前まで、商品は消費者が小売店まで足を運んで購入するのが普通でした。しかし、今では、ネットショッピングの普及により、Webサイト上で商品の購入が可能になっています。その中で、店頭で商品を確認してWebで購入する「ショールーミング」。その逆に、Webで商品を見て、実際に店頭で確かめてから購入する「Webルーミング」といった新しい消費行動も生まれています。
企業は、競争力を高め、将来的に成長を続けるためにオンラインとオフラインを自由に行き来する消費者の行動を把握する必要があります。それには、ポイントカードやクレジットカード、アプリの履歴などを含めたビッグデータを収集・解析し、適切な仮説を立て、満足度の高い購買体験を提供しなければいけません。最近では、需要予測などにAIを活用する企業も増えています。
こうした変化は、もちろん小売店だけでなく、あらゆる業界で起こっています。そのため、デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを生み出すDXの重要性が増してきているのです。
AIへの対応で生まれた「超高発熱装置」とは
急増するデータトラフィックに合わせて、データセンターではコンピューティングリソースの増強が求められるようになっています。
その1つの方法としてスケールアウトがあります。これは、サーバーの台数を増やすことで、処理性能を向上させる方法です。Webサーバーなどのように、扱うデータ量は多いものの処理する内容が単純な場合には有効な手法だといえます。一方で、ICT機器が増える分、消費電力も増えていきます。
近年、スケールアウトだけでは対応が難しいケースもでてきています。DXの進展にともない、ビッグデータの解析など、複雑なデータ処理に取り組む企業が増えており、それに対応できる高性能なサーバーが求められているのです。
そこで有効になるのが、スケールアップです。スケールアップでは、CPUなどのチップをアップグレードしたり、メモリやハードディスクを増設することで、サーバーの性能を向上させます。しかし、従来のサーバーに使われてきたCPUの性能を向上させるだけでは、AIやビッグデータなどの処理が追い付かないケースもあります。
その中で、CPUと合わせてGPUを搭載し、例えばAIのディープラーニングなどの高度な処理をするサーバーも登場しています。GPUは、3Dグラフィックを処理する際に座標計算を行うのですが、それがディープラーニングの処理で必要となる計算とほぼ同じため、CPUよりも効率的に処理できるのです。
GPUを使用することでサーバーの処理能力は飛躍的に向上しますが、問題もあります。複雑なデータ処理をするためには大量の電力が必要になり、電流が流れるとその分だけ熱が発生します。GPUを搭載したサーバーは、超高発熱装置と呼ばれるほどの熱を帯びることになるのです。
スケールアウトによるICT機器の増大、さらにスケールアップによるGPUサーバーや高性能CPUの登場。この2つを背景に、データセンターの内部は高発熱化する傾向にあり、今、その冷却が課題になっています。
「壁吹き出し」「リアドア」次々と登場する進化系空調方法
高発熱化するデータセンターをより効率的に冷却するため、空調がさらなる進化を遂げています。
近年、GPUサーバーなどの超高発熱装置を冷却するために使われるようになったのが、「リアドア」という空調方式です。サーバーラック背面に送風機を取り付けることで、より近くからチップに送風を行うことで、効率的な冷却を可能にします。
「気流制御」の工夫も見逃せません。例えば、従来のデータセンターで多かった床吹き出しではなく、壁吹き出しを採用するケースもあります。これによって2重床をなくして天井を低くすることで、空調効率を向上させることができるのです。このような気流を制御することで、空調効率を向上させようという取り組みが広がっています。
「液冷」というユニークな方法もあります。液冷では、冷たい液体の中にサーバーを直接浸して冷却してしまうのです。まだ試験段階のものですが、今後主流になる可能性を秘めた冷却方法と考えられています。
今回みてきたように、データセンターの冷却する方法は、進化するとともに、多様化し続けています。そうした多様な選択肢を用途や目的に合わせて適切に選ぶことで、データセンターはDX時代に対応すべくクールに進化していくことでしょう。
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