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これからの街づくりに欠かせない「エッジデータセンター」とは

2020年5月27日

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 前回は、クラウドの普及とともに、急成長する巨大かつ集約的な「ハイパースケールデータセンター」を取り上げました。その一方で、より小規模なデータセンターの成長も今後見込まれているといいます。それは、「エッジデータセンター」と呼ばれており、分散的にデータを処理することで、自動運転やスマートファクトリーの実現に欠かせない存在となっています。今回は、そうしたエッジデータセンターの動向を紹介します。

近くのデータセンターが通信の遅延を抑える

 エッジデータセンターとは、ユーザーの近く(エッジ)に設置されたデータセンターのことです。

 ハイパースケールデータセンターは、広い地域からのアクセスを考慮した巨大なデータセンターですが、エッジデータセンターでは非常に狭い範囲だけをカバーする中小規模の施設が利用されています。

 また、ハイパースケールデータセンターは、膨大な量のデータを大量のICT機器で処理するパワフルな施設です。一方、それと比べるとエッジデータセンターのデータ処理能力は高くありませんが、通信を行う際に発生する「遅延(レイテンシ)」を抑えることができます。

 遅延とは、データを送信してから利用者が受信するまでの時間のことです。遅延は、データセンターと利用者の間の距離に応じて大きくなります。ITを活用する分野では頻繁にデータを送受信するため、クラウドだけで処理しようとすると通信網に過度の負荷がかかると同時に、遅延の発生が懸念されます。自動運転やスマートファクトリーといった分野の場合、わずかな遅延でも大きな影響を及ぼす可能性があるため、低遅延という特徴を持つエッジデータセンターの利用に注目が集まるようになっているのです。

 今後そうした分野では、迅速な処理が必要な場合はエッジデータセンターを、大量のデータを処理する場合にはクラウド用のハイパースケールデータセンターを利用するという使い分けが進むのではないかという予測があります。

データセンターの最新形態とは

 エッジデータセンターにはさまざまな形態があります。従来からある中小規模のデータセンターやオフィスビルや工場といった施設の一角に設置されたものも、エッジデータセンターと位置付けることができます。

 あるレポートでは企業や産業の集積地の15km圏内にあり、ラック数は数百~数千、面積は1,000~10,000坪のものを、エッジデータセンターとして定義しています。

 目新しいものとしては、「マイクロデータセンター」という形態もあります。これは、サーバやストレージ、無停電電源装置(UPS)、冷却装置などをモジュールに収容したシステムです。この市場は今後急拡大すると考えられています。

 ある調査によると、国内におけるマイクロデータセンターの設置カ所は「コネクテッドカー」「製造オペレーション(工場)」という用途に限っても、2017年末時点で約1000カ所あり、これがさらに2021年末には4000カ所を超えると予想しています。

大量データを処理するこれからの街づくりを支える

 エッジデータセンターは幅広い分野で活用が期待されており、その普及はスマートシティーの推進にも大きく貢献します。

 代表的な分野に自動運転があります。自動車は時速60kmで走っている時に1秒間で約17メートル進みますが、クラウドの場合は国内で約100ミリ秒(0.1秒)以内の遅延が発生するといわれており、安全性を担保できません。それを、エッジデータセンターなどを活用することにより、1ミリ秒(0.001秒)程と体感できないほど遅延を小さくすることができます。

 工場もエッジデータセンターとの相性が良い分野と考えられています。工場にはミリ秒単位での制御が必要な生産設備がありますが、クラウドでデータをやりとりしていたのでは処理が間に合いません。また、大量のデータをクラウドに送信すると、通信網の増強などが必要になりコストが増えてしまうという事情もあります。そのため、工場内にエッジデータセンターを設置するケースもあるようです。

 このほかにも、街づくりといった分野でも活用が期待されています。日本政府では、都市に設置されたさまざまな機器から収集された大量のデータをAIが高速で分析し新たな価値を提供する社会「Society 5.0」を構想しています。都市で生成される大量のデータをクラウドだけで処理するのは負荷が大きくなりすぎるため、ここでもやはりエッジデータセンターの活用が必要とされています。

 さらに、旅客機、ドローンなどの制御、遠隔医療、オフィスビルやエネルギーマネジメントといった分野でも利用が進むと考えられており、エッジデータセンターの存在によって都市の様相も大きく変化していくことでしょう。

 2020年春から商用を開始した移動通信システム「5G」もエッジデータセンターを後押ししそうです。5Gも「超低遅延」という特徴があり、今後それを活かしたアプリケーションの開発が活発になっていくことでしょう。そのラインナップが増えていくと、5Gだけでなくエッジデータセンターを活用する必要になると考えらます。

 このようにエッジデータセンターは、普及間近の状態にあるといえます。それは私たちの暮らしやビジネスにイノベーションをもたらすことになるでしょう。ぜひ今後もその動向を注視してみてはいかがでしょうか。

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