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ZEBの導入をより容易にする「ZEB Oriented」とは

2019年5月29日

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 2019年2月、ZEBロードマップフォローアップ委員会は、ZEBの普及に向けたとりまとめた案を公表しました。その中で注目したいのが、ZEBの“第4の定義”となる「ZEB Oriented」です。ZEBは、日本が脱炭素社会に移行する上で重要な要素と考えられており、その普及に政府も力をいれていました。しかし、建物の規模が大きくなるほど、導入の難易度が上がる傾向があったため、今回新たなカテゴリーを設けるなど規制緩和が図られたのです。「ZEB Oriented」とは、一体どのような内容なのでしょうか。今回は、その内容に迫ります。

「ZEB Oriented」が新設された理由とは

 「ZEB Oriented」とは、ZEBに設けられた新たなカテゴリーのことです。後ほど詳しく解説しますが、これまでZEBの達成が困難だった建物でもチャレンジしやすいように、判断基準が緩和されています。

 以前も紹介した通り、これまでZEBは3つのカテゴリーに分けて定義されてきました。カテゴリーには、「ZEB(正味で100%以上省エネ)」「Nearly ZEB(正味で75%以上」」「ZEB Ready(正味で50%以上)」があり、企業のモチベーションや建物の実態に合わせて取り組めるようになっていました。しかし、敷地面積のある建物、高層ビル、既存建物の場合、最もやさしい判断基準の「ZEB Ready」の達成でさえ難しいという現実があったのです。

 「ZEB Ready」を達成するためには、断熱、日射遮蔽、昼光利用などによってエネルギー需要を減らす「パッシブ技術」、高効率設備の導入によってエネルギーを無駄なく使用する「アクティブ技術」を活用します。しかし、それらの効果は建物が大型化すればするほど小さくなってしまうのです。

 パッシブ技術については、建物が大きくなるほど外部からの影響を受けづらくなるため、効率は下がります。アクティブ技術は、空調や照明、給湯、エレベーターを高効率化して無駄を減らしますが、大規模な建物では設備の数が多くなり、設備も大きくなるため、省エネルギーに取り組むためのコストも膨らんでいきます。

 「ZEB」や「Nearly ZEB」に進むためには、太陽光発電などを活用した「創エネ」の活用も欠かせません。太陽光発電で発電可能な量は、ソーラーパネルの設置数によってほぼ決まってしまいます。その設置場所は、都会のビルでは屋上が中心。ビルが高層化すればするほど、部屋数とともに消費電力が増えますが、屋上の面積は変わらないために創エネで相殺できる分は相対的に小さくなっていきます。

 さらに、既存建物の場合、既に接している設備などをパッシブ技術やアクティブ技術、創エネに対応したものに切り替えるためには、新築に導入するのと比べると大きなコストが必要になります。加えて、テナントへの影響も考慮する必要があり、同意を得るための手間も無視できません。

ZEBを身近にする“規制緩和の中身”

 今回の規制緩和のポイントは、「ZEB Oriented」の新設により、大規模な建物でも取り組みやすい判断基準が設けられたこと。さらに、事業用途によって判断基準が異なるというのも重要な点です。

 「ZEB Oriented」の対象は、延べ面積が10,000平方メートル以上の建物です。その基準は建物の用途によって異なります。事務所や工場、学校などは、40%以上の一次エネルギー消費量削減。ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所などの場合は 30%以上の削減となっています。

 従来の定義では、ZEBのファーストステップとなっていた「ZEB Ready」でさえ、正味で50%以上の一次エネルギー消費量削減という内容でした。それと比べると、「ZEB Oriented」の登場によって、いかに大規模な建物が取り組みやすくなったのかが分かります。

 延べ面積が10,000平方メートルを超える建物は、日本の建物で消費されるエネルギーのうち、36%程度を占めているといわれています。日本が掲げる、2030年度に温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減するという目標を達成するためには、多量のエネルギーを消費する大規模な建物を含め、あらゆる建物において省エネルギー化と創エネの活用が欠かせないでしょう。

 ZEBが今回の規制緩和によってより身近になり、さらに補助金などの整備も進む今、環境負荷の軽減を目指す企業において、本格的に検討するタイミングがきたといえるのではないでしょうか。

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