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2020年とともに広がる「エッジコンピューティング」

2019年7月17日

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 前回は、ユーザーや端末の近くでデータを処理する概念「エッジコンピューティング」の魅力について紹介しました。日本では2020年に第5世代移動通信(5G)の商用サービスが本格的に開始しますが、それに合わせてエッジコンピューティングの存在感も増していくと考えられています。今回は、2020年を前に盛り上がりをみせる、そのムーブメントに迫ります。

エッジコンピューティングの登場はリバイバル!?

 今後数年で、エッジコンピューティングは一気に普及していくと考えられています。ある米国の調査会社は、世界のエッジコンピューティング市場は2017年の1500億円規模から、2022年には7000億円を突破すると予測しています。

 その普及を後押しするのは、前回紹介したIoT、そして、今回紹介する5G。来たる5G元年とともに、分散コンピューティングのリバイバルがはじまるのです。一体どういうことなのでしょうか、企業におけるICTの歴史を簡単に振り返ってみましょう。

 1960、70年代、企業のICTは汎用機(メインフレーム)でデータを処理する「集中コンピューティング」が主流でした。1980年代になるとパーソナルコンピューターが普及。それにともない、小規模なデータを端末側で処理する分散コンピューティングが進みました。

 2000年代に台頭したのが、外部のデータセンターでまとめてデータを収集・処理するクラウドという集中コンピューティングです。しかし、前回も紹介した通り、IoTの普及とともにデータトラフィックが急増し、データを集中管理する方法だけでは膨大なデータを支えられなくなってきています。

 そして、現在、クラウドの負荷を緩和するとしてエッジコンピューティングに期待が集まっています。これはデータの処理をユーザーの近く(エッジ)で行う、分散コンピューティングであり、5Gの特性を発揮するのに必要な技術と考えられています。

 このように進化し続けているように見えるICTの世界においても、時代は繰り返しているのです。

0.001秒の遅延で実現が可能になるもの

 5Gには、3つの特徴があります。遅延が1ミリ秒以下になる「超低遅延」、毎秒10ギガビットの「超高速(超大容量)」、1平方キロメートルあたり100万点という「超多地点同時接続」です。特にエッジコンピューティングの恩恵を受けるのが超低遅延でしょう。

 5Gは超低遅延という特性を持っていますが、データセンターを利用し、その立地が地方、海外と伝送経路が長くなればなるほど遅延も大きくなってしまいます。実際に、クラウドでは、国内で約100ミリ秒(0.1秒)以内、日欧間で約200ミリ秒(0.2秒)もの遅延が平均的に発生するといわれているのです。

 エッジコンピューティングは遅延を解消する技術であり、その活用によって車の自動運転に大きな進展をもたらしそうです。自動車は時速60kmの走行時、1秒間に約17メートル進みます。エッジコンピューティングは、車の近くでブレーキに関わる処理や指示を出すため伝送経路は短く、遅延は1ミリ秒(0.001秒)程と体感できないほど小さくなります。つまり、指令を出してから止まるまでの距離も0.017メートルとごくわずかとなり、安全性を担保できると考えられているのです。

日本の屋台骨を支える存在に

 超高速(超大容量)という5Gのもとで、これからはVR、4Kや8Kといったサービスの利用が増え、巨大なデータが生成されていくことでしょう。映像関連でいえば、高解像度の防犯カメラを使用した遠隔監視システムの実証実験も盛んに進められています。

 しかし、365日24時間回り続けるカメラのデータを全てクラウドに転送するとなると、データセンターに大きな負荷がかかってしまいます。そこで、データの認識や解析を行い、有用なものだけを選別してクラウドに送るという利用方法も考えられています。

 従来のLTE方式では、1つの通信局から100台程度の端末へ一斉に接続しようとすると、接続できなくなるケースもありました。5Gでは、2万台規模の端末にも対応する超多地点同時接続が可能になります。先の例のようにエッジコンピューティングでデータを選別することによって、通信回線の負荷も軽減することができます。

 このようにエッジコンピューティングは、5Gやクラウドを支えながら普及フェーズへと進んでいくことでしょう。特に自動車や工場といった日本の屋台骨といえる産業での活用に期待が集まっています。さらに、東京五輪を契機に利用が進むと考えられているVRや、ドローンといった新しい技術の発展においても重要な役割を果たすと考えられています。

 私たちの見えないところで、実に幅広い分野を支えていくエッジコンピューティング。5G時代を迎えるにあたり、これからのビジネスを考える上でも注視すべき技術といえるではないでしょうか。

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