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CO₂を再利用する新コンセプト「カーボンリサイクル」とは

2019年12月18日

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 脱炭素社会に向け、化石燃料への依存を減らす再生可能エネルギーの活用、エネルギー消費を抑える省エネといった取り組みが進んでいます。一方で、環境に左右されやすい再生可能エネルギーを補完するために火力発電は欠かせない存在であり、企業の生産活動の中でも大量のCO₂が発生しています。こうした現状に対し、CO₂排出量を抑えるという方向ではなく、排出されるCO₂を再利用するという新しいコンセプトで注目を集めているのが「カーボンリサイクル」です。今回は、「カーボンリサイクル」の魅力について解説します。

CO₂を再利用する「カーボンリサイクル」とは

 「カーボンリサイクル」とは、火力発電や鉄鋼・化学製品を製造過程などで発生するCO₂を回収し、化学品や燃料、鉱物といった製品に再利用することで大気中に放出されるCO₂を削減しようという新たなコンセプトです。

 CO₂を再利用する技術の中には、すでに実用化されているものもあります。例えば、日本では、CO₂を溶接やドライアイスの製造に利用するという方法が以前からとられてきました。しかし、最終的にCO₂が大気へと排出されるため抑制効果はありませんでした。

 それに対して、CO₂をより多岐にわたる素材や燃料の製造に再利用することで、大気中への排出を減らそうというのが「カーボンリサイクル」の考え方です。例えば、CO₂をウレタンやコンクリートの製造に使用する、トマトのハウス栽培で設備内のCO2濃度を高めることで生産性を上げるといった実証研究がはじまっています。

 この技術開発を進めようという機運が日本で高まっているのです。

政府が示す「3つの指針」

  カーボンリサイクルは、日本が世界に向けて発信するコンセプトです。

 日本の動きをみると、2019年2月1日に、「カーボンリサイクル」の実現に必要なイノベーションを推進するという目的で、資源エネルギー庁にカーボンリサイクル室が設置。2019年6月7日に、カーボンリサイクル室のもとで課題と目標をまとめた「カーボンリサイクルの技術ロードマップ」が作成され、公表されました。

 さらに、2019年9月25日には、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)により、「カーボンリサイクル」をテーマにした世界初の国際会議「第1回カーボンリサイクル産学官国際会議」が開催されました。

 この会議には、日本をはじめ米国やオーストラリア、オランダ、カナダアラブ首長国連邦、パキスタン、など、20の国・機関が参加。「カーボンリサイクル」の普及を目指し、議論が交わされました。

 そこで、日本は、今後の取り組みに関する3つの指針をまとめた「カーボンリサイクル3Cイニシアティブ」を発表しました。そこでは、国際会議に積極的に参加することで相互交流の促進を図る「Caravan」、実証研究の拠点を整備する「Center of Research」、国際共同研究を推進する「Collaboration」に取り組むことが明示されています。

普及に向けたロードマップ

 2019年に入り、「カーボンリサイクル」の普及に向けた動きが加速していますが、課題もまだたくさんあります。

 一番大きいのはコストの問題です。火力発電所などから排出された成分からCO₂だけを分離・回収するのに、現在はまだ大きなコストが必要になっています。また、CO₂は物質として非常に安定しており結びつきが強く、CO₂中の炭素(C)と酸素(O)を分離したり、他の原子と結合させて新たな製品を生み出そうとしても、コストが高く採算性を見出すのが難しいというのが現状です。さらに、そうした過程で大量のエネルギーが消費されるという課題もあります。

 課題解決につながる技術開発を後押しするために、政府も動き出しています。先に触れた「カーボンリサイクルの技術ロードマップ」には、2050年までの計画がまとめられています。

 2030年までをフェーズ1とし、CO₂を分離・回収する技術を確立。2030年頃からをフェーズ2として低価格化に取り組むとともに、CO₂を再利用したバイオジェット燃料、道路ブロックといった製品の普及に取り組みます。2050年以降のフェーズ3は、さらなるコスト低下とともにガスや液体、汎用のコンクリート製品など、CO₂の用途を広げていく計画です。

 「カーボンリサイクル」に関連した技術の確立は、CO₂排出量の大幅な削減はもちろん、新たな資源としても期待が高まります。「カーボンリサイクル」によって作られた製品の普及は、また、企業にとっては環境貢献の新たな選択肢が増えると考えることもできます。そうした意味でも、より一層の発展を期待したいところです。

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