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再生可能エネルギーの現在地、主力電源化はどこまで進んだのか

2021年9月22日

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 日本は化石燃料に対する依存度を下げるために、再生可能エネルギーの主力電源化をめざしています。世界ではすでに再生可能エネルギーが主力電源の役割を担っているという国も出てきています。一方、再生可能エネルギーの発電設備は整っているものの、電源構成に占める割合は、まだそれほど多くありません。この先、再生可能エネルギーが日本の主力電源となる上での課題と、将来の展望について考察します。

再生可能エネルギーの主力電源化を目指す理由

 日本政府が再生可能エネルギーの主力電源化に関する方針を明らかにしたのは、2018年に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」の中でのことでした。ここでいう、再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスといった、温室効果ガスを発生せず、国内で生産可能なエネルギーを示します。「第5次エネルギー基本計画」では、火力発電や原子力などから構成される電源の中で、再生可能エネルギーの利用比率を大幅に引き上げ、主力電源化をめざすことが初めて明記されたのです。

 それまでの電源構成比で大きな割合を占めていたのは、LNG(液化天然ガス)や石油、石炭といった火力発電です。例えば、2010年度の構成比は火力発電が64%を占め、再生可能エネルギーはわずか10%にとどまっていました。それを第5次エネルギー基本計画では、2030年度に火力発電を56%まで下げ、再生可能エネルギーを22~24%まで拡大するとしています。

 エネルギー政策の方向性を示す計画で、再生可能エネルギーについて、「いつまでに」「どれぐらい」の構成比率を目指すのか、数値目標として具体的に示したのは非常に画期的なことでした。

なお、2021年中に発表される予定の「第6次エネルギー基本計画」では、2050年に再生可能エネルギーの比率を50~60%まで高めるという、より野心的な目標が盛り込まれる見込みです。ほかにも水素や燃料アンモニアといった新しい電源の開発に取り組み、それらの比率を10%まで拡大するとしています。

 日本がこのような意欲的な目標を掲げるに至った背景には、地球温暖化に対する危機感の国際的な広がりが一因としてあります。

 2016年に地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」が発効されたのをきっかけに、それまでの「低炭素化」から、より強く化石燃料からの脱却を目指す「脱炭素化」へと取り組みが変化しました。その中で、さまざまな国々が火力発電の依存度を減らすために、再生可能エネルギーを基幹電源と位置づけるようになっています。日本も再生可能エネルギーに対する姿勢を明確に打ち出し、世界的な流れに加わる必要があったのです。

主力電源化に向けて解決が必要な「コスト」の問題

 「第5次エネルギー基本計画」以降、国内では再生可能エネルギーの積極的な導入が進みました。その結果、日本は発電設備容量だけを見ると、世界第6位となっています。しかし、電源構成比は、欧米の先進的な国と比べ遅れているのが現状です。

 再生可能エネルギーの比率が高い国としては、カナダが有名です。2018年の実績では、カナダにおける再生可能エネルギーの比率は66.3%に達しています。その他に、イタリアが39.7%、スペインが38.2%、ドイツが35.3%となっており、こうした国々ではすでに再生可能エネルギーが主力電源としての役割を担っているといえるでしょう。一方、日本の再生可能エネルギーの電源構成比率は、18%に留まっています。

 日本が再生可能エネルギーのさらなる導入を進め、比率を高めるためには「コスト」の低減が重要になります。世界各国では、普及とともに再生可能エネルギーの発電コストが下がっており、「ほかの電源と比べて安い」という認識が一般的になりつつあります。それに対し、日本では再生可能エネルギーの発電コストが国際水準と比べてまだ高く、ほかの電源に対する価格競争力が弱いのが現状です。IRENA(国際再生可能エネルギー機関)の試算をもとに、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が発電コストを算出した結果、2018年の世界の事業用太陽光発電は1キロワット時あたり8.3円となる一方、日本の非住宅用太陽光発電は1キロワット時あたり16.0円と倍近くなっています。日本で再生可能エネルギーが主力電源に近づくためには、発電コストを火力発電や原子力発電並みか、それ以下にする必要があります。

安価な再生可能エネルギーの実現に向けて

 諸外国では、再生可能エネルギーの買取制度を整備することで、設備の普及拡大と低価格化を実現してきました。ドイツやスペインでは1990年代から買取制度がスタートしていましたが、日本で制度が開始されたのは2012年です。この遅れが、日本の再生可能エネルギー発電コストが諸外国より高い一因でしたが、法改正などを経てその差は小さくなってきました。

 経済産業省が2021年7月に発表した内容によると、2030年時点で、事業用太陽光発電のコストは1キロワット時あたり8円台前半~11円台後半にまで下がると試算しています。この試算では、石炭火力発電が13円後半~22円前半、原子力発電が11円台後半になり、太陽光発電が既存の発電より安価になるのです。これまで、太陽光発電の発電コストが原子力発電より下がったことはありません。

 近年、「RE100」や「SBT」などの脱炭素化や省エネに関するイニシアチブが拡大、また、2020年に菅首相が「2050年までにカーボンニュートラルの実現」を宣言したことなど、再生可能エネルギーに対するニーズ自体は増加傾向にあります。

 さらに、SDGsへの取り組みを宣言したり、企業の環境対応を評価項目に盛り込むESG投資の観点が一般的になるなど、脱炭素化の動きも進んでいます。コストの問題がなくなって、導入時のハードルが下がれば、潜在的なニーズの掘り起こしにつながることも考えられます。

 主力電源化に向け、日本の再生可能エネルギーの発電コストは下がり続けています。さまざまな取り組みが進む中で、「再生可能エネルギーは安い」というのが日本でも常識になれば、再生可能エネルギーの主力電源化が実現する日が近いのかもしれません。

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