お問い合わせ

NTTファシリティーズ

メールのアイコン

ビジネスコラム

日本政府が2050年に目指す「カーボンニュートラル」とは

2021年1月27日

Tweet
Facebook

 温室効果ガス排出を正味でゼロにする「カーボンニュートラル」という取り組みに注目が集まっています。菅首相が所信表明演説で、「2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと宣言したことをきっかけに、ビジネスにおいても大きな影響を及ぼすと考えられております。日本が実現を目指すカーボンニュートラルとはどのようなものなのでしょうか。日本を含め世界各国の動向を探るとともに、カーボンニュートラル独特の「削減」と「吸収」という考え方について考えていきます。

所信表明演説で語られた「カーボンニュートラル」とは

 カーボンニュートラルとは、企業や家庭が排出する温室効果ガスを省エネルギー化によって削減するとともに、削減しきれない分を、植林や森林保護といった「ほかの場所での吸収」によって正味でゼロにする取り組みのことです。カーボンとは炭素のことで、ここで言う温室効果ガスとはおもに二酸化炭素を指します。

 2020年10月26日、菅首相が所信表明演説の中で「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言したことから、日本でカーボンニュートラルに対する注目が高まっています。

 所信表明演説では、これまでビジネスの制約として考えられることもあった環境問題への取り組みは、産業構造を変革し、経済と環境の好循環を生み出すとし、発想の転換が必要になると説明しています。

 2020年12月25日には、経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表しています。グリーン成長戦略はカーボンニュートラルの取り組みを、経済と環境の好循環につなげるための産業政策です。

 自動車産業や蓄電池産業、土木インフラ産業、ライフスタイル関連産業など、14の重要分野ごとに目標を掲げ、予算、税、規制改革・標準化、国際連携といった政策を実行計画に盛り込んでいます。

世界で進むカーボンニュートラルへの投資と規制

 世界各国もカーボンニュートラルに力を入れています。経済産業省の資料によると、2050年までに124の国と地域がカーボンニュートラルを実現しようとしています。その中でも取り組みが先行しているのがヨーロッパ各国です。

 イギリスは、2019年6月、「Climate Change Act(気候変動法)」を改正する際に、世界に先駆けてカーボンニュートラルを法制化しています。さらに、カーボンニュートラルの実現に向け、2030年までに政府が1.7兆円を支出する計画を立案。この計画によって民間投資が5.8兆円誘発され、25万人の雇用が創出されるという試算をしています。

 EUは2018年11月、2050年までにカーボンニュートラルを実現するための「A clean planet for all(万人のためのクリーンな地球)」というビジョンを発表。2020年3月にはビジョンをより具体化した長期戦略を発表し、現在はカーボンニュートラル目標を含む欧州気候法案を審議しています。今後、再生可能エネルギーの導入などを進めるといった対策とともに、バイオマス(生物資源)の活用、森林吸収源の確保を進める戦略も立てています。

 アジアでは、世界の石炭消費量の約半分を占めている中国が、2020年9月の国連総会一般討論で「2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」と表明。石炭に依存したエネルギー構造をどのように転換するのか、温室効果ガスの削減に向けてどのような政策を展開するのか、動向が注目されています。

 このように、世界各国はカーボンニュートラルを実現するために各種の施策を講じています。背景には、新型コロナウイルスの影響によって世界的に経済活動が停滞する中、カーボンニュートラルによって環境投資を活性化させ、経済復興につなげようという狙いもあります。こうした動きは「グリーンリカバリー」と呼ばれています。

企業レベルでカーボンニュートラル達成を目指す動き

 カーボンニュートラルを実現しようというのは、国だけではありません。企業レベルでも達成を目指す事例があります。

 グローバルに活動するあるIT企業は、製品の生産プロセスからサプライチェーン、さらには製品ライフサイクルに至るあらゆる事業活動において、2030年までに気候への影響を正味ゼロにすることを目指しています。この企業は、製造過程における温室効果ガスの排出を削減するのに加えて、吸収する取り組みにも力を入れており、サバンナでの自然再生や、コロンビアにおけるマングローブ林の保護といったプロジェクトを展開しています。

 企業がカーボンニュートラルに取り組むには、まず事業における温室効果ガスの排出量を把握する必要があります。その上で削減目標を定め、省エネルギー化に取り組みます。それでも削減できない分は、再生可能エネルギーの導入や「排出権の購入」などの手段を利用して、間接的に温室効果ガスを吸収することで埋め合わせます。

 こうした取り組みを通してカーボンニュートラルに挑戦することは、投資家からの評価を考える上で重要になります。とくに近年は、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字をとった「ESG投資」の考え方が主流になりつつあります。カーボンニュートラルへの挑戦は、経済と環境を両立させた新たな経営手法を創造することにもつながります。

 世界はカーボンニュートラルの実現に向けて、すでに大きく動き出しています。日本企業も、その影響を受けることが予測できます。カーボンニュートラルへの積極的な取り組みは、企業価値を高めるだけでなく、グリーンリカバリーの契機にもなる可能性を秘めています。その動向を注視しながら対応を進めてはいかがでしょうか。

関連する記事

最新のコラムや導入事例を
メールマガジンで配信いたします。
えふ・マガの購読はこちら

お問い合わせ・資料請求

PAGE TOP