ビジネスコラム

投資家の新たな指標「ESGスコア」とは

2021年12月1日

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 近年、投資家の間で定着しつつある<環境・社会・ガバナンス>に配慮している企業を重視・選定して行う「ESG投資」。どの企業に投資するかを判断する際に用いられるのが「ESGスコア」です。ここでは評価対象企業のESGパフォーマンスやリスクを定量的に測定し、他の企業との相対比較を可能とする仕組みの概要を解説し、投資家から選ばれる企業になるためのポイントについて紹介します。

「ESGスコア」はどの企業に投資するかを判断する指標

 「ESG投資」が、投資先を選定する基準の一つとして定着してきています。「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を表します。かつての投資は、キャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報を中心に企業価値を測り、それをもとに行われていました。しかし、現在では利益だけでなく、環境や社会との関わり、企業の持続的成長(サステナビリティ)を重視し、それを考慮するのが一般的です。これがESG投資です。

 ESGという言葉が知られるようになったのは、2006年に当時の国連のアナン事務総長が機関投資家に対して、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI)を提唱したことがきっかけです。ここ数年は、海外の公的年金基金などの機関投資家によるESG投資が急速に拡大しています。日本においても、世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名し、ESG投資を積極的に推進しています。

 GPIFによる運用は、上場企業がESGスコアに関心を高める契機になりました。資本市場全体に幅広く分散し、投資額が大きい運用をする投資家は「ユニバーサル・オーナー」と呼ばれます。ユニバーサル・オーナーが、長期にわたって安定した収益を獲得するためには、投資先の企業価値が持続的に高まることが重要です。ESGの要素に配慮した投資は、それにふさわしい投資であり、そのため多くの企業が関心を持つようになりました。

 こうして、投資家の間で定着しつつあるEGG投資ですが、その際にはどの企業に投資するかを判断する指標が必要になります。そこで活用されているのが「ESGスコア」です。投資家はESGスコアを活用して対象企業の価値を判断し、それにもとづいて投資を行います。ESG投資の拡大とともに、ESGスコアの活用も徐々に進み始めています。

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 ESGスコアは、大きく分けて、すべての要素を考慮してスコアリングする「総合型」と、特定の課題に基づいてスコアリングする「テーマ型」に区分されます。「統合型」は、ESGの各分野ごとに項目を割り振ってスコアリングするもの。「テーマ型」は、二酸化炭素排出量など特定のテーマに基づいてスコアリングを行います。世界には600以上のESG評価機関があり、それぞれが独自のスコアリングを行っています。規模の大きい機関投資家が注目する代表的なESGスコアは10程度です。

 評価基準については、各ESG評価機関によって大きく異なります。また、情報収集の手法も違いがあります。以前は、企業が開示するESG情報が少なかったため、アンケートによって情報を収集する評価機関が多くありました。しかし、最近ではESG情報を開示する上場企業が増えたため、こうした公開情報を使って評価する傾向が強くなっています。

 各ESG評価機関は、「E」(環境)と「S」(社会)と「G」(ガバナンス)について具体的な評価項目を設定しています。たとえば、あるESGスコアは「E」「S」「G」の3つの大項目ごとに、14テーマの中項目を設け、さらに個々のテーマ別に10~30の小項目があり、全部で300以上の評価項目で構成されています。

 また、ESGスコアは同じ業種であれば同じ尺度で評価されます。自動車メーカーならば、内燃機関中心の大手メーカーも新興の電気自動車メーカーも、同じ測定指標で採点されます。

 ESGスコアを基準にして投資先を選定した投資信託(ESGインデックス)もあります。投資家にとっては、どの投資信託を選ぶのか、そしてそれぞれの投資信託が取り入れているESGスコアは総合型なのか、テーマ型(環境型、社会型)なのかが重要になります。ちなみにGPIFでは、どのESGインデックスで運用するのか、そのESGインデックスがどのESGスコアを採用しているかについても公表しています。

スコアは自社の取り組みを確認する目安になる

 「ESGブランド調査」というものがあります。ESGスコアを公開している560の日本企業について、一般の消費者やビジネスパーソンがESGの視点からどんなイメージを持っているかを聞くインターネット調査です。最新の結果をみると、1位に輝いたのは大手自動車メーカー、2位につけたのは大手飲料メーカーで、日本を代表する有名企業が上位を占めました。

 1位の大手自動車メーカーについては、「環境」と「ガバナンス」が強いという結果が出ました。特に環境に対する関心が高く、「省エネに努めている」「有害物質の削減に努めている」「従業員の環境教育に力を入れている」などの項目が高く評価されました。その中でも省エネに関しては、企業の環境活動を評価する際に重視する項目として回答者の62.9%が「省エネに努めている」を選ぶなど、最も関心の高いテーマとなっています。

 こうした調査が行われるのも、ESGスコアを公開する企業が増えているためです。それに伴って各企業では、ESGへの対応を強化しています。特に環境については、自然保護に配慮した活動を行う、環境問題に配慮した製品を出すなど積極的に取り組む企業が増えています。

 プラスチックの削減やフェアトレードの取り組みも、近年のトレンドといえるでしょう。ストローを紙製品に変更するといった地道な取り組みも、ESGスコアのアップにつながります。

 企業を取り巻く環境が変わるにつれ、上場企業に求められるESGの水準は年々高まっています。上場企業にとって、ESGスコアへの対応は、自社のESGの取り組みが実施・開示できているかを確認する重要な機会になることでしょう。もちろん、非上場企業にとっても、「自社がESGにどれくらい対応しているのか」を見直すのに有用な指標になるはずです。ESG投資が一般的になるにつれ、ESGスコアへの社会的関心も高まってくるのではないでしょうか。

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