ビジネスコラム

芹澤プロに聞く②「失敗を伝えるコーチング術」

2021年1月13日

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 シニアツアーに参戦し続けている芹澤信雄プロには、「ツアープロ」の顔、そして「TEAM SERIZAWA(チームセリザワ)」を率いる「リーダー」としても顔。さらに太平洋クラブ御殿場コースに「チームセリザワ ゴルフアカデミー」を開設し、ゴルフの指導にも熱心に取り組む「校長」としての顔もあります。芹澤プロへのインタビュー第2回は、自身の失敗経験を生かしたコーチング法やパッティングのワンポイントアドバイスを伺いました。

【プロフィール】
芹澤 信雄(せりざわ のぶお)
㈱TSIグルーヴアンドスポーツ所属。1959年11月生まれ。静岡県御殿場市出身。富士平原ゴルフクラブ研修生を経て82年春に22歳でプロテスト合格。87年日経カップでプロ初優勝。96年日本プロゴルフマッチプレー選手権でメジャー初優勝などレギュラーツアー5勝。2009年にシニアツアーデビュー後、2010年富士フイルムシニアチャンピオンシップで初優勝。現在はシニアツアーを主戦場とするほか、太平洋クラブ御殿場コースに「チームセリザワ・ゴルフアカデミー」を設置し後進やアマチュア、ジュニアの指導にも力を入れている。

ブッチ・ハーモンのゴルフスクール施設に感銘

――「チームセリザワ ゴルフアカデミー」を開設し、後進の指導やアマチュアへのレッスンを行っています。いずれはこうした施設を作りたいという構想があったのでしょうか

 1990年代にゴルフ雑誌の企画で、タイガー・ウッズのコーチを務めていた「ブッチ・ハーモン」のゴルフスクールを訪問したことがきっかけです。そのときは、タイガーがスイングするビデオを見ながら解説してもらったり、実際に私がモデルになりスイング理論を直接教えてもらいました。

 ブッチは、タイガーをはじめとしたトッププロを多く育てたことに加えて、スイング理論でも有名ですが、私はそのゴルフスクールの行き届いた設備にも感銘を受けたんです。「いつかこういう施設を作って、ゴルフ界に恩返しがしたい」と、そのときから思っていました。

 2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大で、レギュラーツアー、シニアツアー、女子ツアーと軒並み中止や開催延期が相次ぎました。私もチームセリザワのツアープロたちも、アカデミーの施設に来て練習することが多かったですね。長く競技ができなかった間に、伸び盛りの若いプロたちはスイング改造や欠点の克服に集中的に取り組めたケースも少なくなかったようです。

――そうした若いプロゴルファーが研鑽を積み、さらに実績を積み上げていくためには、どんなことが大事なのでしょうか

 プロになって日が浅いにもかかわらず、トップアマのころからメーカーにサポートしてもらっていると、だんだんと「天狗」になってしまう人も中にはいます。ゴルフは個人競技ですが、周囲の協力があるからこそ、自分の得意な分野でプロとして能力を生かせるのです。

 今は人気先行で実績もないのに、大きなスポンサーが付くケースも見られます。それだけ将来性を買われているのかもしれませんが、周囲からチヤホヤされる中で成長するのは、よほど本人がしっかりしないと、難しいのではないでしょうか。

 ゴルフ業界はプロゴルファーだけでなく、メーカーやメディア、スポンサーをはじめさまざまな人が協力して成り立っています。全ての人に対して日頃から、同じ業界で仕事をする大事なパートナーとして感謝の気持ちを持つことが大切です。これはビジネスでも共通することなのではないかと思います。

 チームセリザワでは、そうした「人として基本となる礼儀やモラル」を身に付けてほしいと思っています。ただ、気を付けていることが1つあります。人は正しいことを言われていても、人間性を否定されれば反発してしまいます。ですから、その「人」に対してではなく、間違った「こと」に対して注意を促すようにしています。

41歳で賞金王に輝いた後輩に対する、心の底からの尊敬

――ゴルフのトレンドは、「アスリート系」「パワー系」になってきました

 ここ10年でアメリカやヨーロッパのツアーでは、「アスリート系」「パワー系」のゴルフが席巻するようになりました。日本のツアーも影響を受けていますね。私は飛距離ではなくショットの安定度を売りにしているタイプなので、今の時代にプロデビューしなくてよかったなと思いますよ。

 その傾向は、’19-’20シーズンの全米オープン選手権でもはっきりしました。優勝したブライソン・デシャンボーという選手は、「フェアウェイキープ率が最低で優勝した初めての選手」と言われていましたね。

 全米オープンは、背丈の高い芝が密集して生えているためにラフの難易度が高く、一流のゴルファーにとっても容易に攻略できるコース設定ではありません。普通ならフェアウェイキープが絶対に求められます。ところがデシャンボーは、ドライバーショットを飛ばすだけ飛ばし、少し狙いが外れてラフに入っても、強引に切り裂いてグリーンを狙っていくスタイルを貫きました。ゴルフのスタイルが変化した端的な例ですね。現在の海外ツアーで日本人選手が戦っていくのは大変だと思います。

 チームセリザワの中では、藤田寛之プロは身長が168cmとプロゴルファーとしては小柄な選手です。体が大きくないため、飛距離で勝負することはできません。そのため、コツコツと練習しながら、得意なショットを増やしたり、ショートゲーム※の技術に磨きをかけるなど、努力を積み重ねていました。

※おおむね100ヤードより短い距離のショットで、ボールをコントロールしてグリーンに乗せピンに寄せる技術。


 そんな藤田プロが、多彩なショットとショートゲームの技術、持ち前の粘り強さで、2012年に国内ツアーの賞金王へと上り詰めたときには、心の底から感動しました。当時の彼は41歳でした。40歳を過ぎて初めて賞金王となった選手は、国内で男子ゴルフのツアー制度がはじまった1973年以降、藤田プロしかいません。

 私は後輩として藤田プロを長年見てきましたが、正直に言うと体も小さいし、最初は「すごい」とも「うまい」とも感じませんでした。まさか賞金王になるとは夢にも思っていませんでした。しかし、努力によってその“まさか”を実現したのです。後輩ながらとても尊敬しています。

 そうした自分の実績をはるかに超える選手に対し、私が教えることができるのは「失敗の経験」です。

 ゴルフは「ミスのスポーツ」と呼ばれるように、失敗がつきもの。プロであっても、緊迫した場面ではミスショットを連発してしまうことがあります。当然私も、苦い思いを何度もしています。例えば、簡単なパーショットを決めれば予選通過というところで打ち損ね、予選落ちを経験したことも一度だけではありません。

 ミスは悔しいですが、成功よりも学ぶことが多くあるように思います。「ミスがなぜ起きたのか」を検証することで、原因を突き止めることができます。原因がわかれば、後はひたすら練習をして克服すればいいのです。それを何度も繰り返すことで、選手としての引き出しが増えます。

 私はチームセリザワの選手と比べてゴルフ歴が長いので、引き出しも豊富にあります。後輩に自分の失敗談を話すことをカッコ悪いとは考えずに、むしろ伝えていていくことをリーダーとしての務めとしています。

「世界一のパーパット」に学ぶ、上達のヒント

――ここからは一般ゴルファーのスキルアップのポイントについて伺います。飛距離を伸ばすための秘訣は何ですか

 昨今のプロゴルファーのドライバーショットが飛ぶようになった要因のひとつに、クラブやボールの性能向上があります。特にクラブの技術は、ものすごい速さで進歩しています。クラブメーカーは、競って「飛ぶ」性能を向上させたニューモデルを登場させていますので、そうしたモデルを使うのもいいと思います。

 大事なのは、「自分に合ったクラブをチョイスすること」と、「基本を体に叩き込むこと」です。もちろん、どんないいクラブでも、ちゃんと打てなければ宝の持ち腐れですから、プロのレッスンを受けるのもいいですね。

 アマチュアゴルファーを見ていると、練習で一番時間をかけているのがドライバー。ショートゲームが大事と思っていても、やはり練習場で気持ちよく飛ばす方が楽しいのです。ゴルフの楽しみ方の1つとして、それは重要なポイントだと思います。

 ただ、「スコアアップを図りたい」という場合、話は変わってきます。プロはショットの練習より、アプローチやパターの練習に多くの時間を割きます。故杉原輝雄プロは、ドライビングレンジでショットの練習を30分したら、パターグリーンに移動して2時間ずっとパットの練習をしていました。それくらいプロは、念入りにショートゲームの練習に力を注いでいるのです。

――芹澤プロはかつて、尾崎将司プロが「世界一のパーパット」と評したように、パッティングの名手として知られています。アドバイスをお願いします

 私が見ていて気付くのは、アマチュアの方はカップインすることに気を取られすぎて、正確にパットをしていません。つまりパターの芯でボールを打っていないということです。

 パターの形状も多種多様ですし、グリップもさまざまなので、その人に一番フィットするパターを探すのもいいかもしれません。しかし、あらゆるスタイルに共通する「パターの基本」があります。それは、どんなパターの形状、グリップであろうとも「頭を動かさずに、芯でボールを打つこと」です。

 ボールをヒットする瞬間に頭が動いてしまうと、パターの芯でボールを捉えることはできません。芯で打つことで、ボールを狙った方向に打ち出せるし、タッチも合わせやすくなるはずです。

 パターならば、家の中でもパターマットを使って練習できます。ご自宅で地道に「パターの芯で真っすぐ打つ練習」を続けてみてください。きっとパッティングで悩むことはなくなると思いますよ。

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