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ビジネスコラム

「電力レジリエンス」で停電を、強くしなやかに乗り越える

2020年11月11日

 自然災害の激甚化とともに、防災の分野でキーワードとなっているのが「電力レジリエンス」。災害の発生時でも電力インフラを維持する強靱(きょうじん)さを表す言葉です。近年、地震や台風によって大規模かつ長期的な停電が発生し、企業活動に大きな損失をもたらしています。そうした現状を前に、政府も電力レジリエンスの推進に力を入れています。今回は、電力レジリエンスの動向と、企業が取り組むためのヒントを紹介します。

大規模停電によって高まる電力レジリエンスの重要性

 「レジリエンス(resilience」とは、「弾力」「回復力」という意味を持つ言葉で、「強靭(きょうじん)」と訳されることもあります。もともとは心理学や精神医学などで使われていた概念ですが、防災の分野では、自然災害が発生した際に、災害による影響を強くしなやかに乗り越えるといった意味で使われています。

 近年、防災の中でも特に電力と関連付けられた「電力レジリエンス」という言葉を聞くようになりました。その背景には、自然災害の激甚化によって発生した大規模な停電の存在があります。

 例えば、2018年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震では、北海道全域が停電となるブラックアウトが国内で初めて発生しました。道内全域で295万戸が停電し、営業停止を余儀なくされた企業も多く、北海道庁の推計では商工業への影響が約1318億円に上りました。

 2019年には、台風15号によって千葉県を中心に広域で停電が発生。停電がおおむね復旧するまでに10日以上も要し、最大で約93万戸が影響を受けました。同年は台風19号の被害も大きく、電気設備などが浸水した地域では停電が長期化。どちらの台風も、停電によって被災地域の生活や経済活動に大きな支障をもたらしました。

「エネルギー供給強靱化法」で電力インフラはどう変わるのか

 2020年6月に成立した「エネルギー供給強靱化法」の目的は、電力インフラのレジリエンスを確保することにあります。そのポイントとしては、送配電事業者の連携強化、送配電網の強靱化、分散型電力システムの推進が挙げられます。

 2019年の台風15号、台風19号では被災地に全国から電力会社が集まり、電力網の復旧作業にあたりました。しかし、各社の連携があまりうまくいかずに復旧が遅れた経験から、エネルギー供給強靱化法では、送配電事業者に対して災害時における連携計画の策定を義務付け、連携の強化を図っています。また、北海道胆振東部地震のようにブラックアウトが発生した場合には、ほかの地域から電力を融通してもらうことも必要になります。そこで、広域的な電力系統を整備することで、ある地域で停電が発生した場合にも、ほかの地域が補うことができる「広域系統整備計画」を策定し、送配電網の強靱化を実現します。

 再生可能エネルギーをはじめとした分散型電力システムの活用も、エネルギー供給強靱化法の重要なポイントです。自然災害によって電力網が寸断された場合にも、地域内に再生可能エネルギーを利用する発電所が整備されていれば、既存の発電所に依存しない電源として電気を供給することも可能になります。さらに、緊急時に独立して運用できるような、分散型・小型の配電網を運営する仕組みについての法制度も整備されました。

 このように、電力のインフラやシステムといった供給部分を自然災害に対して強くてしなやかなものにしようという取り組みが進められています。しかし、それだけでは社会全体のレジリエンスを高めるには限界があります。プラスアルファとして、電力の消費者である企業の自発的な取り組みも重要になってきます。

企業ができる電力レジリエンス対策

 企業が電力レジリエンスに取り組むためには、BCP(事業継続計画)の策定や、それをいざというときに遂行するための体制づくりが必要になります。その中でも特に重要になるのが、非常時における停電対策です。

一般的に、停電対策として用いられているのが、UPS(無停電電源装置)や非常用発電機です。UPSは停電が発生した際、電気を途切れることなく供給し、システムを安全にシャットダウンさせ、重要な機器やデータを保護することができます。非常用発電機は、電気の供給時間が比較的長く、エレベーターなどの建物が必要とする動力に電気を供給することが可能です。

 近年停電対策として注目されているのが、電気自動車のバッテリーです。被災時に充電されたバッテリーから電力を取り出し、非常用電源として利用するのです。実際に、2019年の台風15号では、さまざまな企業が電気自動車のバッテリーを使って千葉県内の避難所や福祉施設に電気を供給し、話題を呼びました。

 ただし、UPSや非常用発電機、また電気自動車のバッテリーも、電力を供給できる時間は限られるので、長時間電力を供給するためには自立した電源を確保する必要があります。対策として考えられるのは、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーと、そこでつくられた電気を蓄える蓄電池の組み合わせです。建物に太陽光パネルを設置し、送配電網に依存しない、自立した電源を確保する企業も増えつつあります。

 今回紹介した通り、企業が電力レジリエンスに取り組むうえで欠かせない非常時の電源確保対策は多様化しています。選択肢を複数用意しておくことは、自社の停電対策のみならず、地域社会全体のレジリエンス向上にも貢献できます。これを機会に、「電力レジリエンス」という観点から、非常時の電源確保について検討してみてはいかがでしょうか。

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