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先が見通せず予測困難な状況「VUCA(ブーカ)」とは

2022年2月16日

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 昨今、「VUCA(ブーカ)という言葉をよく耳にするようになりました。これは何を意味する言葉で、なぜ使われるようになってきたのでしょうか。ここでは、この言葉が意味する内容と生まれた経緯、そして現在を象徴する言葉として注目されている背景について解説します。

常識を覆す社会変化が起こる時代を表す言葉VUCA

 VUCAとは、未来の予測が難しくなる状況のことを示す造語で、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の単語の頭文字をとった言葉です。いまの時代を説明する言葉として、注目が集まっています。これまでの常識を覆すような社会変化が次々と起こる「VUCA時代」では、困難や脅威に対して、柔軟かつ迅速な対応が必要になってきます。

 VUCAを理解するためには、語源となっている4つの単語が何を象徴しているのか、具体的に知っておく必要があります。

 Volatility(変動性)を象徴するのは、ICT技術やAIの急速な普及や進化などです。インターネットの普及とテクノロジーの進展が新しい商品やサービスを生み出し、その変化に伴って消費者のニーズや価値観も多様化しています。また、地球温暖化や新型コロナウイルス感染症の影響における経済の変化など、予測の付かない状況を表しているのがUncertainty(不確実性)です。不確実性が高い状態への対応が不十分なまま事業を継続していくことは、決して容易ではありません。

 そして、経済のグローバル化やICT技術の進展などを背景に、個人の考え方や行動基準は多様化しています。個人の多様化を受け止めるために、社会の側でもダイバーシティを高めるなど変化が起こっています。Complexity(複雑性)には、このような多様化する働き方、新しい生活様式、それらを受容する社会構造の変化などが含まれます。こうした状況の課題は、複数の要因が組み合わさっているため、いままでの成功事例をそのまま適用したり、シンプルな方法で解決が難しくなります。

 そして、Volatility (変動性)、Uncertainty (不確実性)、Complexity (複雑性)のそろった場合に、Ambiguity(曖昧性)の状態になるとされます。3つの要素が絡み合い、予測のつかない曖昧な状況のことです。

企業のビジョンや目標設定、「何を経営課題とするか」も変わる

 VUCAという言葉は、1990年代後半に米国で軍事用語として使われ始めました。冷戦が終結して国際情勢が複雑化し、軍事戦略を立てることが難しくなった状態を示す用語で、21世紀に入ってそれまでの方針が通用しなくなった状況を背景に普及しました。

 2010年以降になると、経済のグローバル化が進む中でビジネスでも従来の常識が通用しないような大きな変化が起き始めたことから、VUCAはビジネス用語としても使われるようになりました。2016年に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で「VUCAワールド」という言葉が使われ、「今はVUCAの時代だ」ということが世界の共通認識となりました。

 現代は、グローバル経済の進展、デジタル技術の発展など、社会や企業の課題が世界規模で変化しています。たとえば新型コロナウイルスの感染症の拡大や、それに伴う「新しい働き方」の必要性などはその典型的な例です。

 その中でもVUCA時代の大きな問題の一つとして挙げられるのが「地球温暖化」です。世界各地でこのまま何も対策がとられなかった場合には、今世紀末に気温が最大4℃、海面が82㎝上昇すると予測されています。日本では気象庁と環境省、文部科学省が、気温が3℃上昇した場合に大雨による河川の氾濫などで洪水が現在の4倍に増加する可能性を指摘しています。

 地球温暖化に対しては、先進国のほとんどがCO2削減量の具体的な達成目標を設定し、脱炭素化への取り組みを進めています。国際法の変更により、今後、脱炭素化の資格を証明できない企業には厳しい罰則が課せられることも想定されます。また、環境保護に貢献しない企業の製品やサービスの利用を消費者が避ける傾向もすでに現れています。

 こうした変化に対応するためには企業は、「何を経営課題とするか」を明確にし、具体的なビジョンや目標を設定することが重要です。経営ビジョンを持つことは、いつの時代でも重要ですが未来予測が難しいVUCA時代を生き残るためには、企業全体として、社会へ何が貢献できるかを考えなければいけません。

VUCA時代に求められるのは多様な人材の確保

 行政側でもVUCA時代に対応した政策を進める動きがあります。経済産業省では、2019年に発表した「人材競争力強化のための9つの提言(案)」で、今後VUCA時代の環境変化によって、日本企業が急速かつ激しい変化にさらされていくと分析しています。

 変化が激しく将来の予測が困難なVUCA時代のビジネスパーソンには、状況に合わせて自身を柔軟に変えていくことが必要になってきます。その際には、周囲の環境の変化を冷静かつ客観的に把握しなければなりません。

 企業にとっても、予測が困難な経営課題の解決に貢献できる優れた人材の確保が急務です。変化へ臨機応変に対応し、新しい課題を発見し、イノベーションを起こせる人材を採用・育成できるかどうかが、そのまま企業の未来を左右します。

 同省はその上で、「経営戦略を実現する重要な要素として人材および人材戦略を位置づけること」「多様化する個人のあり方をふまえ、個人と企業の双方の成長を図ること」「経営トップが率先して、VUCA時代におけるミッション・ビジョンの実現を目指し、組織や企業文化の変革を進めること」の3つの大原則を提言しています。

 具体的な方策として「変革や人材育成を担う経営人材、ミドルリーダーの計画的育成・支援」「個人の自律的な成長や学び直しを後押しし、支援する機会の提供」「経営トップ自ら、人材および人材戦略に関して積極的に発信し、従業員・労働市場・資本市場との対話を実施」など6つの提言をしています。グローバル化、デジタル化、少子高齢化などの社会変化に対応するには、人材マネジメントのアップデートが必要なのです。

 変化が激しく将来の予測が困難な時代は、状況に合わせてビジネスのかたちを柔軟に変えていくことが求められます。特に「多様性」はVUCA時代を生き抜く上で避けては通れないテーマです。VUCA時代は、同質性の高いコミュニティよりも、多様な人材が集うコミュニティを目指すべきとされています。変化を恐れず、果敢に挑戦するための取り組みをいまから少しでも進めることが、VUCA時代を生き抜くカギとなるのではないでしょうか。

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