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EV普及がカギとなる? 地球温暖化対策の今後の展望

2023年2月15日

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 2015年12月の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)におけるパリ協定採択以降、地球温暖化対策の推進に向けてさまざまな業界や分野で取り組みが進んでいます。なかでも大きな役割を担うと期待されているのが「EV(電気自動車)」です。ここでは、なぜEVの普及が地球温暖化対策のカギとなるのか、さらに現状と、導入拡大のために解決するべき課題について解説します。

温室効果ガス排出削減のカギはEV

 地球温暖化は、海面上昇や洪水、干ばつなどの気候変動を引き起こし、人類の未来に大きな影響を与えると考えられています。現在、地球温暖化対策の目標として掲げられているのが「気温上昇を2℃より低く抑え、さらに1.5℃に抑える努力を追求する」という、2015年のパリ協定で策定された目標です。この目標を達成するには、枠組みに参加している国家だけでなく、そこで事業を営む企業や生活する人々の協力が必要となります。

 気温上昇の背景には、温室効果ガスの排出が関係しています。18世紀半ばから始まった産業革命以降、人類の生産活動は石炭や石油などの化石燃料を燃焼させることでエネルギーを得て、行われてきました。その結果、大気中に排出される二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが急速に増加し、地球温暖化を招いたとされています。

 一方で、その化石燃料にも限りがあります。特に石油の可採年数は残り約50年と言われており、将来的に生産量は減少し、やがて枯渇することが予測されています。このような生産量の頭打ちや需要減少のことを「ピークオイル」と言います。今後、新しい資源や採掘技術が進展しない状況が続くと、企業の事業活動や私たちの生活に大きな影響を及ぼすと考えられています。

 そこで、地球温暖化抑制とピークオイル対策という2つの課題に対して、有効とされている手段の一つが、ガソリンエンジンなど内燃機関を使わず電気をエネルギーとしてモーターで走行する「EV」の普及拡大です。

 国土交通省の「運輸部門における二酸化炭素排出量(2020年度統計)」によると、自動車・鉄道・船舶・航空機などに関わる運輸部門の温室効果ガス排出量は、1億8,500万トンと日本全体における排出量の約17.7%を占めています。その内訳として、約9割が自家用乗用車や貨物車など内燃機関を搭載する自動車から排出されています。

 これらに代わり、EVは、二酸化炭素を排出せず、電気のエネルギーだけで走行します。今後、内燃機関を搭載する自動車をすべてEVに置き換えることができれば、地球温暖化の抑制やピークオイルの問題も解決することが可能となるでしょう。また、EVが充電する電力を、温室効果ガスを排出しない太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーで得ることができれば、効果は非常に大きいと期待されています。

世界と日本のEV普及率

 2023年現在、世界各国でEVの普及拡大が進んでいます。台数ベースでもっともEV販売台数が多いのが中国で、2022年の新車販売台数の18.6%、約650万台をEVが占めています。EUでは約300万台、アメリカでは約200万台程度のEVが販売されています。

 世界で最もEVの普及が進んでいる国はノルウェーです。新車販売台数に占めるEVの比率は2022年9月時点で80%以上。その背景には、生活に使う電力の約95%を発電コストの安い水力発電でまかなってきたという電力事情があります。また、ノルウェー国内にガソリン車のメーカーが存在しないことも大きな理由と言えるでしょう。

 これら諸外国に対して、日本の新車販売台数におけるEVの割合は、2022年で1.71%にすぎません。ただし2022年には前年比で2.7倍、販売台数も過去最高を記録しており、今後においてEV普及拡大が見込まれる状況となっています。

 現在、日本では自家用乗用車における新車販売台数のうち、約半数をハイブリッド車やEVなどの環境性能を向上した車種で占めています。しかしながら、事業用途で使用する「貨物車」のほとんどは、従来のガソリン車やディーゼル車が使用されているのが現状です。EVによる地球温暖化対策の効果を最大限に引き出すためには、今後は貨物車をEVに代替する必要があると考えられており、ある調査レポートでは、「2035年の商用車(貨物車を主体とする、事業用途で使用される車両)の販売台数のうち、最大49.1%がEV化する」という予測を発表しています。すでに日本の大手運輸企業では、配送車両をEVに置き換える試みなどをはじめています。

EV普及推進は、企業価値の向上につながる

 企業が地球温暖化対策として、EVの導入を推進するためには、一企業だけでなくサプライチェーン全体でEVシフトする目標を掲げ、それを実践する必要があります。日本の大手小売業者では、EVやPHEV(プラグインハイブリッド車)など環境性能向上車の普及促進に向けて、充電ステーションを全店舗駐車場に設置する取り組みを進めています。また、大手事務用品販売会社では、荷物を配送する車両を2030年までにすべてEV化する目標を掲げ、導入を進めています。こうした取り組みの推進を加速させるため、「輸送手段の電化」を掲げる国際イニシアチブ・EV100へ加盟している企業もあり、2023年2月現在、日本からは7社が加盟しています。EVの導入はこのほかに、輸送に関わる大気汚染や騒音公害を抑えることにも期待されており、積極的にEV導入を推進している企業は、社会的なステークホルダーとして注目を集めるでしょう。

 持続可能な成長を継続しつつ、地球温暖化を抑制するために、温室効果ガスを排出しないEVは大きな役割を果たすと考えられます。現在、日本では政府による充電設備の拡充推進、複数メーカーの参入による市場の活性化といった条件もそろいつつあります。移動や輸送などのモビリティがEVシフトすることは、産業構造に対してこれまでと異なるインパクトを与え、クリーンな社会や街づくりといった課題の解決にもつながると想定されます。EV普及をはじめとする地球温暖化対策への貢献と「企業価値の向上」は、今後その関係をより密接にしていくのではないでしょうか。

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