お問い合わせ

NTTファシリティーズ

メールのアイコン

ビジネスコラム

カーボンニュートラル実現に向けた「ZEB」への期待

2023年4月26日

Tweet
Facebook

 日本政府は、2050年にカーボンニュートラルの実現を掲げ、再生可能エネルギー導入拡大や省エネ対策などを推進しています。そこで企業は、化石燃料に頼らない再エネ活用や大幅な省エネ活動が急務となっており、環境経営実現に向けた取り組みが加速しています。その中で、今また注目が集まる「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の現状や展望について解説します。

今また注目されるZEB

 ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、建物の稼働に必要なエネルギーを、自ら作り出したエネルギーで充当し、エネルギー収支を“ゼロ”にすることをめざした建物のことを言います。

 なぜ今、ZEBが求められているのでしょうか。日本政府は、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表しました。その後、2021年10月の地球温暖化対策計画では、オフィスや商業施設などの業務部門におけるCO₂排出量を、2013年度比51%削減する目標を掲げました。

 環境省・国立環境研究所によれば、2020年度の日本のCO₂排出量は10億4400万tに達し、この約4割は発電所や精製工場などのエネルギー転換部門が占めているとしています。日本全体で一次エネルギー由来の消費活動を減らさなければ、カーボンニュートラルの実現は困難となり、そのためオフィスビルや公共施設でのZEB推進が不可欠になってきているのです。

 ZEBを実現するためのポイントは、限りあるエネルギーを無駄なく使う「省エネ」とCO₂排出を伴わない再生可能なエネルギーを活用し発電する「創エネ」です。具体的には、快適性を維持しつつ省エネを実現する設備や機器を取り入れながら、なおも必要となるエネルギーは太陽光発電などの再生可能エネルギーによる創エネでカバーするといった取り組みになります。現在、ZEBは単にカーボンニュートラルを実現するためだけの取り組みではなく、今まさに企業が直面している課題解決におけるひとつの手段としても期待感が高まっています。

 世界に目を向けると、現在、ロシアのウクライナ侵攻を契機に石油や天然ガスなど、エネルギー資源の調達価格が上昇しています。建物や施設を活用したサービスを提供する企業にとって、エネルギーコストの上昇は事業運営を行ううえで大きな課題となっています。

 ZEBにより、エネルギーを外部調達に頼らず済むようになれば、大きなコスト圧縮効果も期待でき、価格高騰への対応策としても有効と言えます。また、昨今のコロナ禍の影響を受けて、リモートワークの普及やフレックス制度が一般化するなど働き方が大きく変化しました。この動きはフレキシブルな働き方の広がりとともに、ZEB推進をきっかけとして、環境に貢献できるオフィスに変えていくチャンスとも言えるでしょう。

既存建物へのZEB推進を加速

 新築の建物であれば、快適性を担保する最新の省エネ技術を取り入れた新しい空調方式の設備や設置効率を最大化した太陽光発電などの創エネ設備の導入は難しいことではないでしょう。採光に工夫を凝らし、照明を最適化・制御することや地中熱利用の採用など選択肢は豊富です。しかし既存の建物をZEBにするにはハードルが高いのも事実です。

 そこでこのハードルを段階的に超えていくためのZEBの定義として、まずはエネルギー使用量を50%以下まで減らすことを可能にした建物を「ZEB Ready」としています。これは既存のビルなどで導入可能な省エネ技術や設備を積極的に活用することでエネルギー消費を半減することをめざします。

 さらに消費量削減を一歩進めるには、省エネ対策に創エネ設備を加えてエネルギーを自ら作り出すことが必要になります。一般的なビルならば、太陽光発電の設置、工場や事業所などでは風力やバイオマスによる発電を採用することも可能でしょう。これらにより、必要なエネルギーを25%以下に削減できる建物が「Nearly ZEB」となります。

 しかしながら、太陽光発電など創エネ設備の設置には、屋上面積が少ないなど建物的に制約があるケースも少なくありません。そこで延床面積1万㎡以上の大規模な建物を対象に、事務所や工場、学校などについては省エネ対策を徹底することでエネルギー使用を60%以下に抑えた建物、ホテルや病院、百貨店などでは70%以下に抑えた建物をZEBへの過程として「ZEB Oriented」と定義されています。これには既存の省エネ技術だけでなく新たな省エネ技術の導入といった、更なる推進が必要とされています。

 ZEBへの取り組みを加速するため、政府や自治体では各種の支援制度を設けています。環境省の「建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業」ではZEB支援事業として、民間建築物や公共施設を対象に、高効率の省エネシステム導入を支援しています。その中で「レジリエンス強化型ZEB実証事業」「ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」は、民間の建物を対象としたCO₂改修支援事業が2023年度まで展開されるとしています。さらに経済産業省は、2025年度までの事業として「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業」を実施し、企業を対象に新築1万㎡以上、既設2000㎡以上の建物を対象にZEB化の実証を支援しています。

ZEBがカーボンニュートラル実現への第一歩に

 2050年のカーボンニュートラル実現とともに、2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択されたSDGsへの取り組みにも注力する企業が増えています。コンプライアンス順守とともに企業の責任としてカーボンニュートラル、SDGsが重要となります。

 こういった背景を踏まえ「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス=企業統治(Governance)」の頭文字を取って、ESG経営を指向する企業が日本でも増加し、金融機関はESG経営に積極的かどうかを融資対象として選別することで、それに合わせ投資家も環境などへの配慮を強化する企業に注目しています。

 企業活動全般にわたりカーボンニュートラルが求められ、同時にエネルギー価格高騰への対応が迫られている状況下で、事業拠点のZEB推進はますます取り組むべき検討項目となりつつあります。

 すでにZEBを実現する技術が多く登場し、事業所等の新築の際にZEBを織り込んだ設計にすることは難しいことではなくなってきています。しかし、それなりの投資が必要となることに留意しなくてはなりません。また、すでにZEBを実現した建物や施設を保有する企業だけでなく、自治体庁舎や住民が利用する公共施設なども相次ぎ建設されています。

 ある企業では、ZEBの研究開発を兼ねて研究施設をZEB化するケースもあります。また、事業所だけでなく工場でも、照明や空調など積極的な省エネ技術の導入やエネルギー使用効率を高めた機器や装置への更新などで「ZEB Ready」クラスの省エネに取り組み、屋上や敷地内の空きスペースに太陽光発電を設置するなどして「Nearly ZEB」クラスのエネルギー使用の削減を狙う企業も出てきています。

 このように各企業が中長期的に、CO₂排出量の削減を推進し、2050年にカーボンニュートラルを実現するためには、次世代の経営に委ねるだけではなく、今から段階的に省エネや創エネに投資することが必要になります。そのような取り組みを通じて企業ブランドや価値の向上にもつながっていくのではないでしょうか。

関連する記事

最新のコラムや導入事例を
メールマガジンで配信いたします。
えふ・マガの購読はこちら

お問い合わせ・資料請求

PAGE TOP