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環境行動を企業価値につなげる「NEB」とは

2023年5月24日

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 地球温暖化対策をはじめとした環境行動による効果は、エネルギー使用量削減などによるCO₂排出量の減少を数値で評価する「EB(Energy Benefit)」が一般的です。現在、節電や環境に配慮した製品購入など、それ以外の脱炭素に貢献する行動において効果を図る「NEB(Non Energy Benefit)」に注目が集まっています。環境行動を企業価値の向上につなげる手段として期待される「NEB」について解説します。

副次的・間接的・相乗的な効果を評価するNEB

 2050年カーボンニュートラル宣言、2030年度CO₂排出量46%削減目標を実現するために残された時間は多くありません。環境経営を推進している企業では、ESG投資に向けたCO₂排出量削減やサステナビリティの一環として、化石燃料に頼らない再エネ活用や大幅な省エネ対策を積極的に実践しています。また、自社だけでなくサプライチェーン全体の脱炭素化をめざす活動も始まっています。原材料などにおける取引先企業の環境対策やエネルギー使用量削減の施策を確認し、対応を進める企業もあります。

 こういった環境行動による効果は、削減量を数値で管理し評価する「EB(Energy Benefit)」が一般的です。「EB」は、主にエネルギー使用という側面から消費活動における削減行動を評価する指標として運用されています。

 近年、このEBを指標とするに環境行動を実践していく中で、それとは別の副次的・間接的・相乗的な効果が表れており、それらを「NEB(Non Energy Benefit)」として評価することで、さらなる環境行動の推進が期待されています。

 「NEB」は、省エネ活動の推進や環境に配慮した製品の製造・購入などといった低炭素・脱炭素につながる環境行動によって生まれる生活の質の向上や精神面での豊かさなど、これまで図ることができなかった効果を評価する指標となります。また、NEBは「コベネフィット(共便益)」とも呼ばれており、環境行動に伴う一つの活動が様々な利益につながる相乗的な便益を評価するものだと言えます。

 例えば、ある自治体が街の緑化空間を増やした場合、EBは、冷暖房利用の低下によるCO₂排出量削減のほか、NEBとしては、居住・生活における快適性向上や健康増進効果、地域への安心感といった精神的効果などが望めるでしょう。また、それらをきっかけとして街全体の価値が高まり、住民の増加や地価の上昇など、様々な副次的・間接的・相乗的な効果が生まれる可能性があります。このようなことから、環境省では脱炭素型社会の実現に向け、NEBという新たな指標を用いながら、各分野で取り組みを推進しています。

高まるNEBへの期待

 NEBは数値で評価できるEBと比べ、それ自体を目標に設定しにくい面があります。しかし現在、企業や自治体、研究機関等により様々な施策や実施検証が行われ、NEBへの期待が高まっています。

 街や地域、コミュニティに関連する分野では、健康的で低炭素なライフスタイルの実現をめざした評価・検証が行われました。ここでは、屋外空間の緑化による環境整備によって、夏季の熱環境が改善し、利用者の歩行時における平均心拍数が低下、その結果、地域の居住者は相対的に睡眠の質が高まるという報告がされました。

 また、緑化空間へ意識が向くことによって、通勤や買い物などの屋外行動においても徒歩や自転車を選択する人が増加し、エネルギー使用量を削減するEBに加え、地域住民の健康増進による医療費削減や心理面・生活満足度の向上といったNEB評価指標の有効性が示されました。

 住まいや建物に関連する分野では、住宅街区において、パッシブクーリング技術を導入し、熱環境改善効果を明らかにしました。それに加えて、導入技術がライフスタイルに与える影響や変化についても検証し、今後同様の街区を開発する際に活用可能な指標としてまとめました。ここでは、開発中の住宅地を対象に、屋内外の温熱環境調査、エネルギー消費量計測などを行って自然な気流や間歇的冷気の体感が、室温が高い場合でも快適性を保つことを示しました。パッシブクーリングによる光熱費・CO₂削減効果といったEB効果に加え、パッシブクーリング技術の活用による居住者の熱的快適性の改善を評価する指標(熱的快適性指標)といったNEBへ着目することで、住宅の省エネ化とともに住民の快適性や満足度向上へとつながることが期待されています。

NEBが生み出す様々な副次的効果

 今後ますます環境行動を推進していかなければならない企業にとって、設備の改修や新たな設備の導入は、直接的には投資負担の拡大、利益を圧迫する要素として映るかもしれません。しかし“副次的・間接的・相乗的な便益”に目を向けると、費用対効果は低炭素・脱炭素化以上のものになる可能性、つまりNEBを用いることで投資目的ではない副次的な効果が生まれるとも考えられます。

 例えば、環境行動に積極的に取り組んでいる企業は、“環境に配慮した優しい企業”、“カーボンニュートラルにチャレンジしている企業”という良いイメージが生まれ、それにより提供する製品やサービスの売上向上につながることや、人手不足の中で、質の高い人材の採用につながる可能性があります。さらに環境施策に取り組む過程で、働きやすい環境を提供し、社員のエンゲージメントを高めれば、企業価値の向上につながり離職率が低下するというような効果も期待できます。

 また、寒冷地の自治体が、温暖化対策の一環として推進している独自の高断熱・高気密住宅「次世代住宅」を対象に行った検証によると、暖房エネルギー使用量削減のほか、安定した室内環境の確保により、身体への負担軽減につながる効果がみられたと報告されています。今後は、エネルギーや光熱費の削減だけではなく、快適性や災害時の安全性などNEBに関する効果も地域住民に伝えていくことで、普及拡大につなげていく考えだと言います。

 一方で、副次的な効果も期待される中、金融業界や機関投資家の間では「ESG投資」を重視する傾向が高まっています。企業はそうしたESGへの課題に取り組み、新たな投資を得ることで、さらに環境に配慮した製品や技術の開発、サービスの提供といった事業を成長させることにつながり、結果的に企業価値を向上させるという好循環なサイクルが生まれるかもしれません。

 今後も地球温暖化に対する関心への高まりが予想される中、消費者は環境に配慮した製品やサービスを積極的に選択するようになってきています。企業にとっては、「2050年カーボンニュートラル」達成に向け、NEBという新たな評価指標に注目して、企業価値の向上に取り組む必要性があると考えられます。ライフスタイルやビジネストレンドの大きな転換期を迎えている現在、自社の企業価値から副次的効果として何が生まれ、社会へ何をもたらすのか、NEBという観点から環境行動を考えてみてはいかがでしょうか。

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