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ますます重要性が高まる「カーボンニュートラル」への取り組みと現状

2023年1月18日

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 2020年の「カーボンニュートラル2050」宣言から約2年。「2050年までに温室効果ガス排出量を全体としてゼロにする」という目標は、どの程度達成できているのでしょうか。ここでは、現在のカーボンニュートラル進捗と、企業の取り組みや現状について解説します。

日本・世界におけるカーボンニュートラル実現への歩み

 地球温暖化対策を世界全体で取り組むため、1992年5月に「国連気候変動枠組条約」が採択されました。それに基づき1995年から毎年「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」が開催されています。2015年にフランスのパリで開催されたCOP21では、2020年以降の温暖化対策について話し合われ、取り組みを実効性のあるものにするために「産業革命以前と比べて平均気温の上昇を1.5度以内に抑えること」を掲げる「パリ協定」が採択されました。同協定は、条約締結国196カ国すべてが参加する史上初の枠組となりました。

 日本政府は、パリ協定を受けて温室効果ガスの排出量削減目標を2013年比で「2050年に80%削減、2030年に26%削減」と目標を設定します。しかし、加速する地球温暖化に伴う災害の発生や新たな経済潮流への対策などを背景に急務となった脱炭素社会の実現に向け「2050年までにカーボンニュートラルをめざす」宣言を2020年に行いましたこの宣言では、中間目標も「2030年に46%以上削減、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と引き上げられました。世界に目を向けると、125カ国・1地域が日本と同じく2050年までのカーボンニュートラルの実現を表明しています。

 カーボンニュートラルとは、地球温暖化の原因となる温室効果ガス(二酸化炭素やメタンなど)の排出量を「実質ゼロ」にすることです。人々の生活や企業活動に伴って、少なからず温室効果ガスは発生しています。カーボンニュートラルは、発生した温室効果ガスの量から、植林や森林管理などで吸収できる量を差し引いて、正味ゼロにするという考え方です。温室効果ガスの排出量削減だけではなく、吸収も含めているのが従来の温暖化対策とは異なる点です。

 環境省によると、温室効果ガス総排出量から吸収量を差し引いた量は2020年度で11億600万トン。2013年度比で21.5%削減、2019年度比で5.1%の削減に成功しています。一定の成果は出ているといえますが、「2030年に46%以上削減」を達成するためには、2021年度から2030年度までの10年間でさらに24.5%削減しなければならず、これまで以上の努力が必要と考えられています。

カーボンニュートラル実現に必要な企業の取り組み

 カーボンニュートラルを実現する上で欠かせないのが、企業の取り組みです。その理由としては2019年度における日本国内の温室効果ガス排出量のうち、企業活動に由来する排出が全体の77%を占めているからです。

 カーボンニュートラル実現に向けた対策としては、「温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーを利用する」「省エネルギー化の推進」「植林や森林管理などに取り組む」などがあります。こうした対策を実践するに当たって参考となるのが、気候変動対策に関連する国際イニシアチブとそれらに加盟している企業の取り組みです。

 気候変動対策に関連する国際イニシアチブとしては、主にRE100、SBT、CDPなどが挙げられます。

 RE100は、「企業の使用電力を100%再生可能エネルギーでまかなう」ことをコミットした企業が参加するイニシアチブです。RE100を主催するグループは、ほかに事業活動での移動を100%電気自動車で行うEV100や、エネルギー効率向上をめざすEP100などのイニシアチブも主催しています。

 SBTはScience Based Targetsの略で「科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標」のことです。SBTの目標は、「2030年までに少なくとも年2.5%削減」というように具体的に設定しなければなりません。この点については、RE100より基準が厳しいともいえるでしょう。

 そして、企業の経営面に関する情報開示についてのイニシアチブがCDPです。RE100とSBTがそれぞれ「再エネを利用する」「温室効果ガスを削減する」という、具体的な取り組みについてのイニシアチブなのに対して、CDPは投資家向けに企業の環境情報の提供を行う非営利団体です。気候変動にかかわる事業リスクに対して企業に質問を行い、その回答を評価して公表する活動を行っています。

 近年、環境や社会に配慮して、適切なガバナンス(企業統治)がなされている企業に投資する「ESG投資」が拡大しています。とくに気候変動に関わる事業リスクは、従来開示されてきた財務諸表から読み取ることは困難なため、投資家からは情報開示によるリスクの「見える化」が期待されています。企業が、開示された情報を元に「積極的にカーボンニュートラルへ取り組むことでビジネスリスクを抑え、長期の事業継続が見込める」と判断されれば、投資に好影響を与え、結果的に経営に寄与し発展する効果が期待できます。

 これらのイニシアチブへの参加・賛同している企業の取り組みは、自社の取り組みを進める上での参考となるでしょう。日本では、カーボンニュートラル2050宣言の前からこれらの国際イニシアチブに加盟する企業が多く、その数は世界トップクラスとなっています。

カーボンニュートラル対策は企業活動存続に必須

 温室効果ガスによる地球温暖化の影響として、世界各所で気候変動による災害や、海水面上昇による被害などが発生している現在、カーボンニュートラル実現は喫緊の課題です。

 カーボンニュートラル実現に向けた姿勢は、企業の社会的な信用度に影響するようになっています。ESG投資の対象になるのは主に上場企業ですが、今後は金融機関による融資先の評価にも「カーボンニュートラルへの取り組み」という項目が入る可能性があります。

 そのほか、カーボンニュートラル実現のための取り組みを活性化するために、企業間で温室効果ガスの排出枠を売買できる「排出量取引」制度の導入が検討されています。これと並行して、温室効果ガス排出量に応じて課税する「炭素税」を設ける動きもあります。また、温室効果ガスを排出しないEV(電動車)の普及啓発も、この一連の流れに含まれるでしょう。

「カーボンニュートラルを実現して、地球温暖化を防ぐ」という世界共通の目標が定まっているいま、今後の企業経営に気候変動対策や脱炭素化が占める割合はますます多くなっていくでしょう。再エネの活用や省エネ対策の実施、植林や森林管理などの活動は、地球環境の保護と持続可能な社会の実現にもつながるだけでなく、企業の存続および事業の安定的な継続にもつながる問題になっているのです。

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