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多くの企業が賛同する「GXリーグ」とは

2022年12月14日

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 日本政府は、2021年6月に改正地球温暖化対策推進法(温対法)を成立させ、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」の実現を掲げています。これを受けて、2022年2月に経済産業省は「GXリーグ基本構想」を発表しました。「GXリーグ」とは、一体どのようなものなのでしょうか。その狙いやビジネスに与える影響などを解説します。

GXリーグは社会の変革や市場創造を目指す「議論の場」

 海面の上昇や集中豪雨による洪水、干ばつによる食糧や水の不足、陸海上の生態系の損失など、地球温暖化による気候変動が原因と考えられる環境問題が世界中で発生しています。

 こうした問題に取り組むため、環境保護に関する取り組みは世界中で進められています。最近では、2022年11月にエジプトで気候変動について話し合う国際会議「COP27」が開催され、そこでは、気候変動の被害を受けた国のための基金を作ることが新たに決定されました。

 日本でも、気候変動を防ぐための取り組みが進められています。2020年、日本政府は2050年までに、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を宣言。その中間目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減することも掲げています。

 そのような中、2022年経済産業省はこのカーボンニュートラルの達成のために、新たな取り組みを発表しました。

 それが、「GXリーグ基本構想」です。

 「GXリーグ基本構想」の「GX」とは、グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)の略語で、温室効果ガスの発生源となる化石燃料をできるだけ使わず、太陽光や風力など再生可能なエネルギーを用いて、産業構造の変革と経済成長の両立を実現するというものです。

 そして「GXリーグ」とは、それらの実現に向けて産(産業界)・官(行政)・学(大学など学界)・金(金融)が連携して議論を行い、自主的な排出量取引を実施するリーグ(連盟)のことです。「グリーントランスフォーメーションに積極的な企業が、経済社会システム全体の変革のための議論を行う場であり、新たな市場創造のための実践の場でもある」と定義されています。すでに賛同企業の募集が行われており、金融業、不動産業、運輸業、製造業、サービス業など、551社が賛同を表明しています(賛同社数は2022年10月31日現在、追加募集含む)。経済産業省では今後、「賛同企業とともに、GXの実現に向けた詳細設計の議論と取り組みの実証を進めていく」としています。

なぜ多くの企業が賛同するのか

 GXリーグの基本構想は2022年2月に公表され、4月1日の時点で440社が賛同。10月末時点では、550社以上が賛同を表明しています。それだけ、グリーントランスフォーメーションへの注目度が高まっていると言えるでしょう。

  この流れを受けて内閣府は、2022年6月に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を発表しました。この中で、GXが重点投資分野の1つとして位置づけられており、政府と企業が取り組むべき方向について、具体的な内容が記されています。

  政府が取り組むべき政策としては、今後10年間における促進のための支援資金を調達する「GX経済移行債(仮称)の創設」、民間投資を効果的に引き出すための「規制・支援一体型の投資促進策」、GXリーグをさらに広めていく「GXリーグの段階的発展・活用」、世界のESG資金を呼び込む「新たな金融手法の活用」、アジア諸国の脱炭素化を進めるための協力体制を強化し、先進国ともクリーンエネルギー分野のイノベーション協力を求める「アジア・ゼロエミッション共同体構想など国際展開戦略」の5点が挙げられています。

  具体的な取り組み例としては、新しいエネルギー源としての水素・アンモニアのサプライチェーン構築・拠点整備支援や、洋上風力をはじめとする再生可能エネルギーの最大限の導入、自動車産業における電動車シフト(ハイブリッド車を含む)の実現支援などがあります。さらに、2030年度以降新築される住宅・建築物の省エネ性能確保や、省電力性能に優れた半導体の開発、産業部門の脱炭素化、地域・暮らしの脱炭素化など、取り組みの範囲は多岐にわたります。

  こうしたさまざまな取り組みを推進するためには、一企業だけの活動ではカバーできません。企業の壁、業種の壁を越えて連携する必要があります。そのため、GXリーグには賛同企業同士がプレゼンテーションやディスカッションなどで交流を行う場として「GXスタジオ」が用意されています。同スタジオを利用して企業や業種の垣根を超えたコラボレーションを生むことが、GXの実現には必要なのです。

GXリーグが企業に求める条件

 GXリーグに参画するためには、企業はいくつかの条件をクリアしなければなりません。

 まず挙げられるのが、温室効果ガスの排出量の削減です。

 2030年までに実現可能な温室効果ガス削減目標を設定・挑戦し、もし未達だった場合には、排出量取引の実施状況を公表することが求められています。

 また、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、自社だけでなく、サプライチェーン全体における2030年までの中間目標を掲げ、目標達成に向けた戦略を描くことも必要となります。現在「グリーン購入法」によって、オフィス用品や電子機器、LED照明、間伐材利用、太陽光発電システムや蓄電池など22分野282品目がグリーン製品として指定されています。こういった製品を優先的・積極的に購入することで、環境配慮型商品の流通を喚起し、市場をリードすることも求められています。

 GXリーグに賛同した企業の多くは、こういった取り組みをすでに進めています。あるエネルギー事業者では、水素・アンモニアの混焼によって、CO2を発生せずに発電する「ゼロエミッション」な火力発電の実証実験を行っており、2020年代のうちに商用運転を開始する見通しとなっています。同じくGXリーグに賛同しているある航空会社では、燃費性能の高い航空機への更改や、古着を燃料としたSAF(持続可能な航空燃料)の製造を進めています。

 2050年カーボンニュートラルを実現するには、「大変換」を成し遂げ、これまでのビジネスのあり方を大きく転換していく必要があります。先に挙げた「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」でも「経済社会全体の大変革に取り組む」と記載されており、目標を達成するためには、GXリーグなどの場を活用し一企業だけの取り組みではなく、企業間・業種間での連携が今後ますます重要になると考えています。

 2022年度はGXリーグの準備期間となっており、本格稼働は2023年4月からとなります。2022年12月現在では、GXリーグ基本構想の募集は行われていませんが、追加募集がある場合は、GXリーグのホームページにて告知される予定となっています。今後、多くの企業がGXリーグ基本構想に賛同することで、持続可能な社会の実現がより現実的なものになっていくことでしょう。

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