お問い合わせ

NTTファシリティーズ

メールのアイコン

ビジネスコラム

ビジネスに変容をもたらすAI活用の可能性

2023年10月25日

Tweet
Facebook

 2022年後半に話題となった生成AIが登場して以来、世界では大手IT企業を中心にビジネス分野などへ、AIの取り込みを加速させています。日本においても、AI活用に多くの産業分野が注目し、イノベーションを起こす可能性への期待が高まっています。ここでは、AIの浸透が社会や私たちに及ぼす影響や、今後の展望などについて解説します。

ビッグデータ活用の浸透によるAIの進化

 AI(Artificial Intelligence)は日本語で “人工知能”と訳され、一般的には人間の知的行動をコンピューターに行わせる技術のことを言います。以前よりSFなどの世界では、知性を備えた人型ロボットが登場したり、高性能コンピューターが自ら知性を育み、抵抗する人間を攻撃したりするといったシーンがたびたび描かれてきました。

 1990年代以降、コンピューターが高性能化したことでAIの研究開発が飛躍的に進みました。特に2010年代以降は、ソーシャルメディアデータやマルチメディアデータをはじめとするビッグデータの解析・活用が進み、AI分析の判断材料となる膨大な情報が容易に入手できるようになったことで、幅広い分野へAIが導入されています。過去の膨大なデータと共にSNSの情報などを取り込んだ需要予測や生産現場における製造機器からの取得データを基にした故障予測など、定型化されたパターンのデータから事象を判別する用途を中心に開発実用化が進んでいます。

 AIは「AI」「機械学習」「ディープラーニング」に分類され、AIの一部が機械学習、そして機械学習の一部がディープラーニングという概念になります。

 それらは、問題を解決するために専用開発された計算方法や手順である「アルゴリズム」を用いて、より進化し、人間の能力を超えた分析などを可能にしました。機械学習では、人間が定義したデータを学習させ、それを基にAIが処理します。商品の形や規格などのデータを学習させておけば、それに合致しないものは不良品とみなす仕組みもそれに当てはまります。つまり人間が設定したアルゴリズムに基づき“適正な”データを学習させれば、賢いAIになりますが、間違って“不正な”データを学習させればその逆になってしまうわけです。

 機械学習を発展させて登場したのがディープラーニングです。ディープラーニングは、深層学習とも言われ、人間が定義したデータだけではなく、人間の神経細胞の仕組みを再現したニューラルネットワークを用いるのが特徴です。学習させるデータは膨大になりますが、多層構造のニューラルネットワークにより自動的に学習しながら進化していきます。インターネットの普及により膨大なデータが存在していますので、それを生かすことで機械学習よりも高い認識精度、分析力を発揮できるようになり、現在では画像認識や音声認識、翻訳といった幅広い用途で活用されています。

 日本でもAIを活用したビジネス市場が急速に拡大し、既に大きな変化が生まれています。その一つが創薬の分野です。新薬創出時には、長い時間と膨大なコストが必要となりますが、医薬品候補分子探索・薬物動態予測・病理画像解析による、薬効・安全性の評価・論文検索にAIを活用することで創薬プロセスの一部を大幅に短縮すると同時に、医薬品開発の成功確率の大幅改善が見込まれています。

生成AIがもたらす技術革新への期待と懸念

 AI活用が普及する中で、ここにきて注目されているのが生成AIです。生成AIは「ジェネレーティブAI」とも呼ばれ、画像や音声、文章などのデータから新たな動画や画像、音声、文章、プログラムなどを自動的に「生成できる」AIのことを言います。もちろんAIなので学習させることは必要になりますが、学習させるデータが構造化された過去のデータだけではなく、リアルタイムな情報など構造化されていないデータも取り込み高精度に分析処理することが可能です。

 例を挙げると、あるテーマを与えて文章を作成する際には、膨大に存在するテキストデータを活用して、全く新しくそれもごく自然に生成します。また、「印象派風の絵」をAIに描かせようとすれば、数多ある印象派の絵画に加えて、インターネット上にある膨大なコンテンツの中から「印象派風」を導き出し、目的とする絵を描くことができます。さらには、コンピューターのプログラムまでも生成AIで創り出すことができるようになっています。

 昨今、この生成AIを活用したサービスが続々と登場し、日本でも一部の企業が導入に舵を切っています。大手飲料メーカーでは、社内イントラに生成AIを活用した情報検索システムを構築しました。そこでは社内資料を学習させた生成AIに情報の要約を行ってもらうことで、検索した社員が瞬時に資料概要を理解できる仕組みを作り、業務の効率化を図っています。また、老舗製菓企業では、バックオフィス業務における効率化の一環としてAIチャットボットの導入に加え、生成AIを活用した需要予測によるマーケティングの強化などに取り組んでいます。今後、急速に業務の効率化やビジネスの企画・開発といった知的労働に関わる分野に、AIのみならず生成AIが浸透してくることが予想されます。

 このように生成AIによる業務の効率化や創作活動の自動化が期待される一方、その普及により著作権侵害となる事象やフェイクとは気づきにくいコンテンツが広まるなどといった社会的な問題が生まれています。そのためEUは、2023年6月に生成AIを含む包括的なAIの規制案である「AI規則案」を可決しました。本規則では、リスク度合いによりAIを「許容できないリスク」「ハイリスク」「限定リスク」「最小リスク」に分類し、「許容できないリスク」では使用禁止にするなどとしています。米国でも議会が生成AIの開発元を含める大手IT企業のトップを集め、AIを規制する法整備に向けた協議を開始しています。また、日本政府も国際会議の場などを通じて、世界に向けてAI開発者の行動規範やAI規制についても訴えていく方針としています。

AIを積極的に活用するためにはICTインフラの整備が急務

 2020年後半から2023年前半まで、新型コロナウイルス感染症やロシアのウクライナ侵攻などの影響を受け、半導体や電子部品の不足によりサーバー供給が一時的に停滞していました。現在ではようやく解消が進み、遅延していたIT業界への納入がここにきて順次回復してきている状況です。今後さらなる普及と需要が見込まれるAIですが、AIサービスにはデータ収集や分析を高速化する膨大なコンピューターリソースが必要となります。つまりサービス普及を加速させるためには、それらを支えるバックボーンとなるコンピューターリソースの拡大が重要になるということです。そのカギを握るのが、GPU(Graphics Processing Unit)と呼ばれる演算装置の存在です。

 GPUはもともと画像処理演算用に開発され、パソコンをはじめコンピューターのグラフィックボードに搭載されてきましたが、非常に高い並列演算処理能力を備えているため、近年ではAI開発で用いられるようになりました。コンピューターの演算処理装置にはCPU(Central Processing Unit)が一般的ですが、ディープラーニングのようにニューラルネットワークを用いるAIでは、膨大なデータを超高速で演算することが求められるためGPUサーバーが多く採用されています。今後、AIサービスの普及推進に向けては、これらコンピューターリソースの確保も急務となりますが、その一方で大量のGPUサーバーをフル稼働させ、高速演算処理を滞りなく行うための環境整備も急ぐ必要があると言われています。

 日本政府は、2024年度概算要求段階でAI関連予算を2023年度比44%増の1,640億円とし、ここにきてAI活用を国策として成長基盤に育成する方針を打ち出しています。具体的には、AI開発の主体となる総務省・経産産業省・文部科学省の3省が「生成AI等の開発力・リスク対応力強化に向けた取り組みの推進」「デジタル社会実現・生成AIへの対応」「生成AIをはじめとするAI開発力の強化」などの政策に取り組むとしています。

 このように現在、様々な取り組みが始まっているAI活用ですが、これらを実現するためには、情報通信ネットワークの拡充や大容量の情報処理に対応できるハイパースケールなデータセンターの設置に加え、AI開発の人材育成などといったAIビジネスをとりまく様々な環境整備が急務かつ不可欠となっています。企業の成長・発展を考える上でAIの積極的な活用へとシフトしつつある今、こういった試みが事業の活性化につながっていくと言えるでしょう。

関連する記事

最新のコラムや導入事例を
メールマガジンで配信いたします。
えふ・マガの購読はこちら

お問い合わせ・資料請求

PAGE TOP