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CSR報告書 2019

第三者意見

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法政大学大学院 人間社会研究科
教授

土肥 将敦

一橋大学経済学部、一橋大学大学院商学研究科博士後期課程を経て、2009年に高崎経済大学地域政策学部准教授。2014年より法政大学に移り、2016年より現職。商学博士。著書に「CSR経営−企業の社会的責任とステイクホルダー」(共著、中央経済社)、「ソーシャル・イノベーションの創出と普及」(共著、NTT出版)などがある。

NTTファシリティーズ(以下、同社)は、今年度のハイライト版CSR報告書を「価値創造ハイライト版」と位置づけた。同報告書に対し、第三者としての評価と期待、課題の提示を行いたい。

新たな街づくり事業への期待

トップメッセージに記載がある通り、2019年7月にNTTグループの「街づくり事業」の窓口となるNTTアーバンソリューションズが設立され、同社はその主要子会社としてNTT都市開発との連携が強化されることとなった。地域創生・地域開発を注力分野に定めたNTTグループが、従来に増してグループの多様な経営資源やノウハウ、ソリューションを組み合わせて地域の社会的課題の解決に関わろうとする意思表明と読み取れる。人々の価値観が多様化する中で、いかに持続的で魅力ある都市空間を創出させるかという難度の高い課題へと、社会の期待が日々高まっている。これに伴い、4つのマテリアリティに即した同社のCSRには、「戦略性」と「個性」の両立を今まで以上に期待したい。上記グループ戦略への貢献が求められる一方、同社固有の活動や地域課題の解決への貢献も一層重みを増すからである。それぞれ、さらなる挑戦と成果が、次回からの報告書に反映されることを期待したい。

4つのマテリアリティにおける取り組みの進展と課題

まず「チームNTTのコミュニケーション」で、個別課題への取り組みが着実に現れていることを評価したい。女性活躍の理解促進に向けた研修制度の拡充や多様な取り組みの結果、女性社員の比率が高まり、育児休職取得者や短時間勤務制度利用者数などの定量・定性情報も示されている。ダイバーシティ推進の成果や、健康重視経営への継続的な取り組みが各方面からも評価されており今後も注目したい。
「人と社会のコミュニケーション」では、同社のノウハウを活用した機能性と防災性を具備する新しい教育研究機関の創造事例が掲載されており、これからの街づくり事業の可能性を示唆するものである。こうした事業を着実に展開する上で、自治体、企業、医療機関、教育・文化機関など、様々な専門性を有するステークホルダーとの協働・パートナーシップの重要度は増しており、この視点での報告も今後期待したい。
「人と地球のコミュニケーション」では、グループ全体で気候変動問題や脱炭素社会の実現に向けて先進的に取り組んできた成果が現れている。一方で、同報告書は表題の通り価値創造に力点を移したため、より詳細で定量的な進捗開示の役割は詳細版(web)に委ねられた。両媒体を適切に使い分け明快さと網羅性の模索を続けることで、多様なステークホルダーからのさらなる信頼獲得につなげてほしい。
「安心・安全なコミュニケーション」では、グローバルに関心が高まる「インフラのサイバー犯罪対策」を取り上げた点を評価したい。自然災害の頻発に備える「災害リスク対策」や、人権侵害につながる可能性のある「プライバシー保護」などの観点と併せ、さらなる発信を期待したい。

次なるフェーズへ

最後にSDGsに関して記載しておきたい。今年度の価値創造ハイライト版は、SDGsの各ゴール(例:「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」)を全面に出し、CSRテーマごとの貢献方法のひも解きを心掛けた点が印象的であるが、引き続き自社のアプローチとその成果の説明を深めてほしい。「ゴールへの理念的な賛同から各ターゲットへの具体的な貢献へ」という国連の期待も踏まえつつ、一般読者に向けた価値創造ハイライト版、専門家や関心の高い読者に向けた詳細版、それぞれでのさらなる報告の充実に期待したい。

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