2016年8月24日
業界最高年間PUEのデータセンター実現を目指し、スウェーデンMunters社と事業提携
~日本市場向けにカスタマイズされた間接蒸発冷却式空調システムと当社独自の設計・運用手法の融合による、大規模新築データセンター向けトータルソリューションを提供開始~
株式会社NTTファシリティーズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:一法師 淳 以下、NTTファシリティーズ)は、Munters Group Business Area Data Centers(President Neil Yule)およびその日本現地法人ムンタース株式会社(代表取締役 染谷 恵子)(以下、Munters)と事業提携します。これによりMuntersのデータセンター用間接蒸発冷却式空調システムOasisTM*1の競争力を日本市場向けに更に強化した「Oasisバルコニータイプ」の日本国内における独占販売権を取得し、8月24日より、Oasisバルコニータイプと当社独自の設計・運用手法を融合させたトータルソリューションの提供を開始します。
1.背景と目的
近年、飛躍的に増加するクラウド技術や、IoT、ビッグデータを活用したサービスの継続的提供のために、今後もこれまで以上に大規模なICT設備と空調・電気・建物等のファシリティ設備を有するデータセンターが建設されていくものと予想されます。一方で、ICT設備の冷却を行う空調システムの消費電力は依然としてデータセンター全体の4割を占め、今後も空調の省エネルギー化需要は一層拡大していくものと考えられます。実際、ITジャイアントともいうべきグローバルベンダーは、欧米の寒冷地を中心に、世界各国でPUE 1.1を切る高効率な大規模データセンターを次々に建設しています。そうして建設されたデータセンターのトレンドの一つに、「間接蒸発冷却式空調システム」の採用があります。
NTTファシリティーズは、この世界的トレンドをとらえ、データセンター用間接蒸発冷却式空調システムのトップシェア、スウェーデンMuntersと事業提携しました。同社の間接蒸発冷却式空調システムOasisは、腐食や目詰まり、難溶性物質付着を防止するポリマー熱交換器を採用しており世界的に高く評価されています。この事業提携を通じ、両社の技術力・ノウハウを結集して開発したOasisバルコニータイプと、当社独自の建築・構造・設備設計手法および空調自動制御システム「Smart DASH®*2」を融合させた大規模データセンター向けトータルソリューションの提供を開始し、データセンター事業の拡大を図ります。
2.間接蒸発冷却式空調システム
間接蒸発冷却式空調システムは、水の気化熱を活用した革新的な冷却システムです。室内機と室外機とで構成される一般的な空調機とは異なり、間接蒸発冷却式空調システムは室外に設置する単一の筐体からなり、室内の高温空気をダクトで室外の筐体に搬送し、熱交換器に通風させて冷却を行い、再び室内に空気を戻します(図1)。この冷却モードには外気の条件に応じて下記3つがあります。(図2)。
- 冬季:熱交換器表面に低温の外気を送風することで、空気対空気の熱交換により冷却(ドライモード)
- 中間期:熱交換器表面に外気送風と水噴霧を行うことで気化熱により冷却(ウェットモード)
- 夏季:ウェットモードの冷却だけでは取り切れなかった熱量のみを圧縮機などの補助熱源を利用し冷却(ウェット+補助熱源モード)
上記のように、間接蒸発冷却式空調システムは、冬期や中間期にしか運転ができない従来の直接外気冷房やクーリングタワーを活用したフリークーリングとは異なり、冬季から夏季のいずれの条件においても、外気や水の気化熱を活用した冷却が実現できるので、省エネルギー性能が飛躍的に高まります。また、夏季においても空調消費電力を低減できるので空調機用の電源設備容量を削減でき、データセンター全体の設備構築コストの低減も可能です。
3.Oasisバルコニータイプの特徴
既に間接蒸発冷却式空調システムが一般になりつつある欧米では、平屋あるいは2階建てデータセンターを郊外に建設するケースが主流です。一方、日本における主流は、都市部の限られた敷地に建設される3階建て以上の多層型データセンターです。したがって、限られた建築(屋上)面積であっても高発熱で高密度に設置されたICT装置を冷却し、かつ隣地境界における騒音値の低減が求められます。更に、欧米と比較して高温多湿な首都圏や関西圏においてもグローバルに競争力あるpPUEを実現すべく、両社の技術力・ノウハウを結集し、以下のカスタマイズ(図3)によって製品自体の対応性・柔軟性を強化した、Oasisバルコニータイプを日本市場に投入します。
5.Oasisバルコニータイプと当社独自の設計手法の融合
Oasisバルコニータイプに、省エネ性能の担保および建設コストの競争力向上を実現する当社独自の設計手法を融合させることで(表1)、東京においてベストプラクティス※を実践した最新のデータセンター(pPUE 1.22)と比較しても、空調用エネルギーコスト(電気料金+水道料金)を27%削減、15年間ライフサイクルコスト(建設コスト(建築本体+電気・機械設備)+15年間の空調用エネルギーコスト)を10%低減でき、データセンター事業者様の事業性向上に貢献します(図4)。
さらに実環境において、間接蒸発冷却式空調システムの省エネ性能を十分に享受するためには、空調システムの給気温度と還気温度との温度差を適切にマネジメントすることが不可欠です。そこで、当社では独自のソリューションであるデータセンター用空調自動制御システム「Smart DASH®」やホットアイルキャッピング等をOasisに統合することで、設計通りの空調温度差でシステムを運用し、省エネ性能を確保します。
6.製品保守について
当社は、日本におけるMuntersの戦略的パートナーとして、Oasis(バルコニー、屋上両タイプ含む)および同システムを採用したデータセンターのファシリティ全体の保守サービスも提供します。24時間365日対応の故障受付はもちろん、定期点検・故障駆付け・修理といった一連の保守メニューを、Muntersと連携しながら高い品質で提供します。
7.今後の展開
今後は、ラック発熱量4kWを超す新築データセンターで、かつOasisの省エネルギー性能を最大限に発揮できる空調温度条件(吹出温度22℃以上、吸込温度34℃以上)をメインターゲットに(図5左図参照)、以下を通じて、2020年度までに累計受注額200億円(うちOasisバルコニータイプ物販累計受注額60億円)を目指します。
- バルコニータイプを中心としたOasis+当社商材のソリューション販売・機器保守受注
- Oasisを採用する新築データセンターの機械設備工事・保守受注
- Oasisバルコニータイプと当社独自の設計手法との融合を通じた競争優位性の最大化による、建築・電気・機械設備全体の工事・保守受注
なお、上述のOasisのメインターゲット以外の、特に、既存建物への設備増設、更改あるいは空調吹出運用条件が22℃よりも低い運用環境においては、よりメリットを引き出しやすい、当社既存ソリューション(FMACS®、STULZ® CyberAir®3)も合わせてご提案いたします(図5右図参照)。
8.Munters AB社およびムンタース株式会社について
Munters AB社は、Munters Group Business Area Data Centersおよび日本現地法人ムンタース株式会社の親会社です。1955年に創業し、スウェーデン・ストックホルム市に本社を構え、さまざまな分野が求める空調管理ソリューションにおけるリーディングカンパニーの一社です。高エネルギー効率の空気処理を提供し、ヨーロッパはもちろん、アメリカ合衆国、アジア等世界30カ国に独自の技術をもって、食品、製薬、データセンター、化学分野等、さまざまな分野において採用されています。
事業内容は多岐に渡り、乾式除湿機、デシカント空調機、ガスタービン用気化冷却器、アフターサービス、農事用空調設備、ミストエリミネーターの製造販売等を行い、顧客の環境・ニーズにあったソリューションを提供し続けています。
注釈・用語説明
- *1 間接蒸発冷却式空調システムOasisTM
- Oasisは、①エネルギーコストの低減、②データセンター建設コストの低減、③ポリマー熱交換器の高いロバスト性、④高い保守性を強みとする、Muntersの間接蒸発冷却式空調システムです。
- *2 Smart DASH®
- AIエンジンにより時々刻々と変化するサーバルーム内の環境を絶えず学習しながら、サーバルーム内の温度情報を元に空調機をダイナミックに自動制御することで、空調消費電力の削減とサーバルーム内の温度分布改善を両立します。今回、独占販売権を取得するOasisはもちろん、空冷空調機FMACS®*3、水冷空調機CyberAir®3*4と連携することで、空調システムが有する省エネ性能を最大限に発揮させることができます。2011年よりNTTファシリティーズが日本市場における独占販売権を米国Vigilent Corporationより取得しています。「Smart DASH」はVigilent Corporationの登録商標です。
- *3 FMACS®
- 「FMACS(エフマックス)」は、株式会社NTTファシリティーズの登録商標です。
- *4 CyberAir®3
- 世界トップクラスの省エネ性・省スペース性を誇るデータセンター専用水冷空調機であり、ドイツSTULZ社独自のECファン技術でファン消費電力を約50%削減、更にファンユニットを床下に配置することで、省スペース化と高発熱密度化に対応可能です。2015年よりNTTファシリティーズが日本市場における独占販売権をSTULZより取得しています。「CyberAir」は、STULZの登録商標です。
- *5 PUE、pPUE
- データセンターの消費電力効率指標であり、下記により定義され、値が小さいほど省エネルギー性能が高いことを示す。
- PUE(Power Usage Effectiveness):データセンター全体の消費電力効率指標。以下の式で与えられる。
PUE=データセンター全体の消費電力/データセンター内の全ICT装置の消費電力 - pPUE(partial PUE):PUEがデータセンター全体の効率指標であるのに対して、pPUEはモジュールや部屋単位など、特定の部分の効率を示す。本稿においては、部屋単位の指標とし、以下の式で定義している。
pPUE=サーバールーム内の消費電力/サーバールーム内の全ICT装置の消費電力
- PUE(Power Usage Effectiveness):データセンター全体の消費電力効率指標。以下の式で与えられる。
- 【本件に関する報道機関からのお問合せ先】
- NTTファシリティーズ 経営企画部広報室 MAIL:pr@ntt-f.co.jp
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