|
開発背景 |
|
1. |
最近のオフィス空調の特徴 |
|
最近のマルチメディア社会におけるオフィスでは、オフィス機器発熱が大きくなり、照明、人体の発熱と合算され、インテリアゾーン(*1)では通年の冷房運転が必要です。冬期においては、窓面や外壁の近傍で暖房要求が発生するので、ペリメータゾーン(*1)では暖房運転が必要です。 |
2. |
従来技術の概要 |
|
通年の冷房運転に対応するため、冬期において、暖房用熱源機だけでなく、冷房用熱源機も運転できるように、熱源、配管、ポンプ、制御等の各設備を設けていました。この様な方式では、熱源機と空調機を接続する配管を、冷水の往復用及び温水の往復用として、合計4本設けることが必要となるために、4管式空調システム(*2)と呼ばれています。 |
3. |
従来技術での課題 |
|
(1) |
システム構成の複雑化、コストアップ |
|
熱源、配管、ポンプ、制御等の各設備を冷房運転時と暖房運転時で兼用できない4管式空調システムは建設費が高く、運用方法も複雑化しているので、これらを解決することが求められます。 |
(2) |
年間冷房エネルギー量の増大化 |
|
防災・衛生などへの配慮からオフィスは外界から隔離されているので、自然換気が難しく、通年の冷房要求に対して、電気、ガス又は灯油等の冷房用エネルギーを大量に消費していました。 |
(3) |
ペリメータゾーンの快適性確保 |
|
従来の空調システム設計では、冬期において、インテリアゾーンでは冷房運転を、ペリメータゾーンでは暖房運転を行うように、空調機、ダクト、吹き出し口、吸い込み口等を計画していました。しかし、ペリメータゾーンでは、寒暖や日射などの外部気象条件、オフィス機器や照明の発熱等により、必ずしも暖房が必要とは限らず、場合によっては冷房が必要なことがあります。
このため、ペリメータゾーンの一部には、冬期において、冷房運転と暖房運転を選択して空調できる機能が要求されます。 |
(4) |
外気取り入れ量の確保 |
|
冷房運転、暖房運転と連動して、換気目的で入居者数見合いの新鮮外気量を取り入れていました。しかし、運用面では、外気は空調負荷の増加につながるので、省エネルギーの観点から外気取り入れ量を少なくする傾向にありました。
入居者の健康に必要な新鮮外気を、省エネルギーに反せず積極的に導入することのできる機構の空調システムが必要です。 |
|
|
|
本システムの概要 |
|
当社では、冷暖房要求の日変動、及び年変動を考慮した高い精度の空調システム設計を行うことを目的として、年間冷房型オフィス用の高効率外気冷房空調システムを開発しました。
本システムは、空調機内部に、外気とオフィス室内からの戻り空気を冷房用と暖房用に使い分け、低温の外気をオフィス冷房に利用することを目的とした新しい気流切替機構を組込むことにより、省エネルギーと建設費低減を実現します。
図1に、本システムの概要を示します。本システムでは、空調システムの運用を次の通り行います。 |
|
(1) |
夏期のシステム運転 |
|
従来の空調システムと同様に、冷熱源設備で生成した冷熱により冷房運転を行います。 |
(2) |
中間期のシステム運転 |
|
外気温が低下した時期、時間帯において、外気導入による冷房運転を積極的に行いますので、高い省エネルギー効果
が得られます。 |
(3) |
冬期のシステム運転 |
|
冷房要求に対しては、全面的に外気導入による冷房運転を行います。この運転では、冷熱を全く使用しないので、大きな省エネルギー効果が得られます。外気温度が低すぎる場合には、室内からの戻り空気と混合して、適温とした後に居室内へ送風します。
暖房要求に対しては、熱源設備で生成した温水等を用いて暖房運転を行います。室内からの戻り空気を温水等により暖め、窓面近傍の天井又は床面に設けられた吹き出し口より効率的かつ快適に居室内へ送風します。 |
|
|
|
本システムの導入効果 |
|
|
(1) |
省エネルギー、地球環境保護 |
|
冬期、中間期の外気冷房により、冷熱を使用しないため、省エネルギーを図ることが可能となります。室内での発熱量によって幅がありますが試算結果によれば、冷水消費量を20~30%削減することが可能です。 |
(2) |
建設費の低減 |
|
従来の空調システムでは、通年の冷房要求に対応するため、熱源、配管、ポンプ、制御等の各設備を冷暖同時運転可能な4管式空調システムとして計画していました。これに対して本システムでは、夏期は冷熱のみ必要、中間期は冷熱も温熱も不要、冬場は温熱のみ必要となり、冷熱と温熱を同時に使用する必要がありません。このため、熱源、配管、ポンプ、制御等の各設備をシンプルな2管式空調システムとして計画でき、建設費を削減することが可能です。また、シンプルなシステム構成による省スペース効果も得られます。 |
(3) |
取り入れ外気量の確保 |
|
中間期、冬期には外気冷房により、新鮮外気を大量に導入するので、室内空気質(IAQ)(*3)の向上が図れます。 |
(4) |
メンテナンス性、長寿命化 |
|
夏期は冷熱のみ必要、中間期は冷熱も温熱も不要、冬場は温熱のみ必要となり、中間期において熱源設備を休止させることができます。熱源設備の休止と休止期間における適切なメンテナンス実施により、熱源設備の長寿命化を図ることができます。 |
|
|
|
今後の予定 |
|
現在、当社で設計する建設プロジェクトで新しい空調システムとして採用を予定しています。
本システムは、熱源設備運転の簡素化、メンテナンス期間の確保、2管式化による省スペース効果などにより、新築時だけではなく空調設備のリニューアルにも容易に対応できると考えられます。今後設計する新築オフィスビルで採用を検討するほか、リニューアル市場・商業用建物等へも積極的に導入していく方針です。 |
*1. |
インテリアゾーン、ペリメータゾーン:
オフィスビルの空調システムを設計する場合には、空調要求の変動などが同様のスペース毎にゾーニングを行い、その空調ゾーン単位で空調制御します。最も一般的には、建築の外周部(ペリメータゾーン)と内部(インテリアゾーン)とを分けてゾーニングします。ペリメータゾーンとインテリアゾーンでは空調負荷特性が著しく異なるためです。 ペリメータゾーンでは、外部よりの日射や外気温湿度の影響を強く受けます。負荷変動も大きく冷暖房共に大きなピーク負荷が見込まれます。
インテリアゾーンでは、照明,OA機器,人体などの発熱負荷が主な対象で、年間を通じて冷房を主体とします。負荷変動も比較的小さく安定した負荷が見込まれます。 |
*2. |
2管式空調システム、4管式空調システム:
一般に、大規模なオフィスビルの空調システムでは、熱源機より配管を経由して、空調機へ冷水又は温水が供給されます。空調技術の分野では、熱源機と空調機を接続する配管の設置方法によって、2管式空調システム、4管式空調システムと分類します。
熱源機と空調機との間を合計2本の配管で接続し、冷温水兼用の給水及び還水配管を設置する方式を、2管式空調システムと呼びます。季節により冷水と温水を切り替えて使用するため、冷水を用いた冷房運転と温水を用いた暖房運転を同時に行う事は出来ません。
熱源機と空調機との間を合計4本の配管で接続し、冷水用及び温水用について、各々の給水及び還水配管を設置する方式を、4管式空調システムと呼びます。通年に渡って冷水と温水が使用できるため、冷水を用いた冷房運転と温水を用いた暖房運転を同時に行う事が出来ます。 |
*3. |
室内空気質(IAQ):
最近、シックハウス、シックビルディングの問題がマスコミなどで話題になっており、住設用内装材などから発生する空気汚染物質が、居住者の健康に悪影響を及ぼすことが専門家の間で指摘され、欧米を中心に盛んに研究が行われています。これら空気汚染物質を考慮に入れた居室内空気の質のことを、室内空気質(Indoor
Air Quality)と一般には呼んでいます。また、欧米では、換気量の基準値を見直そうとする動きもみられ、今後は新鮮外気量を確実に居室へ供給する技術が要求されると考えられます。 |
|