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平成12年11月21日  

放電深度70%で世界最高クラスのサイクル寿命3,000回のシール鉛蓄電池を開発
- 電気料金削減、高信頼電源、非常用電源の「電力貯蔵システム」として販売開始 -


NTTグループの総合エンジニアリング・サービス企業、株式会社 エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ(代表取締役社長 陰山照男 東京都港区 以下:NTTファシリティーズ)は、通信用電源の停電バックアップ用として実績のあるシール鉛蓄電池(※1)を改良して、放電深度(※2)70%で充放電を繰り返しても3,000回使用できる長寿命なサイクル用シール鉛蓄電池を開発しました。
従来のシール鉛蓄電池では、充放電を繰り返す用途で使用すると約400回の充放電で寿命となるため、電力貯蔵用として使用することは経済的ではありませんでした。そこで、極板格子合金の組成やセパレータ等の改良・最適化により、放電深度70%で世界最高クラスのサイクル寿命3,000回を実現しています。
今回、このサイクル用シール鉛蓄電池と電力変換装置(※3)を組合せた「電力貯蔵システム」を平成12年11月下旬より販売を開始します。販売を開始する「電力貯蔵システム」は、電力のピークカット用として用いることにより電気料金の削減が可能となります。また、商用電源の停電時にはUPS(無停電電源装置)の代替として高信頼な電源の供給、もしくは、非常用設備への電源供給の消防認定を取得していますので、非常用エンジン等の代替として使用することができます。


1.開発のねらい
 IT革命の進展に伴い、電力需要は今後ますます増大することが予測されています。一日の電力需要は昼間に集中しており、電力会社では昼夜の電力需要の平準化を図るため、夜間に割安な料金で電力を供給しています。そこで、昼夜間の電力料金の差を活用し、経済的で電力需要の平準化、ひいては、地球環境保全にも貢献できるシステムが求められています。その一つとして「電力貯蔵システム」が注目されています。
電気を化学的に貯蔵する技術として、ナトリウム硫黄電池(※4)、レドックスフロー電池(※5)等の開発が進められていますが、経済性や運用面で課題を残しています。そこで、通信用電源の停電バックアップ用として実績があり、経済性、安定性、保守性等で優れているシール鉛蓄電池を改良して「電力貯蔵システム」に適用できるサイクル用シール鉛蓄電池を開発しました。
2.サイクル用シール鉛蓄電池の長寿命化
 シール鉛蓄電池のサイクル寿命を延伸するためには、極板の劣化を抑えることが最も重要です。
従来のシール鉛蓄電池の劣化要因を詳細に分析した結果、化学反応により電気を放出・蓄積する活物質粒子の軟化・脱落(※6)や、充電不足による負極板のサルフェーション(※7)であることが判明しました。このことから、サイクル寿命を伸ばすために、極板格子合金の組成やセパレータ等の見直しなど弱点部分を改良し、長寿命化を実現しました。
開発したサイクル用シール鉛蓄電池と従来のシール鉛蓄電池の寿命特性の比較を図1に示します。
放電深度70%において、サイクル寿命は、開発品3,000回、従来品400回と約7.5倍もの長寿命化が達成できました。
3.電力貯蔵システムの概要
  開発したサイクル用シール鉛蓄電池と電力変換装置を組み合わせ、図2に示すように「電力貯蔵システム」を構成することができます。電力貯蔵システムは、割安な夜間電力をサイクル用シール鉛蓄電池に蓄えて、電力消費量の多い昼間に蓄えた電力をピークカット用として負荷に供給します。
電力ピークカットにより、電気料金である基本料金と電力使用量料金の両方を削減します。
電力貯蔵システムの外観(68kWシステム例)を図3に、主要諸元を表1に示します。
4.電力貯蔵システムの商品体系
  お客様のニーズや設備条件等によって、最適で経済的なシステムを選択できるように「UPSタイプ」と「双方向タイプ」の2種類のシステムがあります。
UPSタイプは、電圧の入力変動の影響を受けずに、常に安定した出力電圧が得られ、商用電源が停電した場合においても無瞬断で負荷に供給できるシステムです。
双方向タイプは、夜間充電(整流器動作)と昼間放電(INV動作)を一つのユニットで構成できるため、システムとしてシンプルで小型化することができます。
電力貯蔵システムに適用する蓄電池容量としては、1,000Ahおよび1,500Ahがあります。
また、保守・監視サービスとして、全国約180カ所のサービスセンタにおいて3時間以内の駆けつけサービスや、当社開発の蓄電池管理システム(※8)によるサイクル用シール鉛蓄電池の寿命判定や不良蓄電池検出および電圧監視等の監視サービスを実施しています。
5.電力貯蔵システムの適用例
  日々の通常運転時は、サイクル用シール鉛蓄電池の容量70%までの電力を昼間の時間帯にあわせて、ピークカット用として負荷に供給します。
残りの容量30%は、非常時のバックアップ用電源として非常用設備やコンピュータ等の停電を許されない負荷に電力を供給します。
6.電力貯蔵システムの販売ターゲット等
  官公庁、データセンター、金融機関、商業施設、オフィスビル、病院、ホテル等のユーザをターゲットに電気料金の削減、高信頼電源、非常用電源として適用します。特に、電源信頼性を要求されているIT関連企業の製造工場などに対してシステム提案を展開します。
7.今後の取り組み
  サイクル用シール鉛蓄電池と電力変換装置を組合せた「電力貯蔵システム」を平成12年11月下旬より販売を開始します。
また、小規模な電力貯蔵システム用として単セル電圧12Vのサイクル用シール鉛蓄電池の開発に取り組み、平成14年度の商品化を目指しています。
 本文注
シール鉛蓄電池(※1): 可燃性ガスや酸霧を蓄電池外部に放出することなく、使用中に補水その他の保守をほとんど必要としない蓄電池で、従来の正立設置の他、横設置、積み重ねができるため設置スペースの有効利用が図れる蓄電池。
 放電深度(※2):  蓄電池の性能を表す数値のひとつ。充放電を繰り返すためには、すべてを放電せずに余裕を残し、次の充電を短時間で確実にできるようにしなければなりません。放電深度が高いほど、その電池から放電できる定格容量は大きくなります。 
 電力変換装置(※3): 入力された交流電力を直流電力に変換してシール鉛蓄電池に蓄える「順変換部」と、蓄えた直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する「逆変換部」から構成された装置。
ナトリウム硫黄電池(※4): 電気自動車や電力貯蔵向けに開発研究が行われてきた新型電池のひとつ。310~350℃という高温で作動。
レドックスフロー電池(※5): 長寿命で、活物質が液体で外部タンクに貯蔵されるので大型化が容易であるが、高コストでイオン交換膜やポンプの定期取り替え等保守稼動が必要。
活物質粒子の劣化・脱落(※6): 充放電を繰り返すことにより、正極板の活物質(二酸化鉛)がはがれ落ち、格子の有効作用面積が減って蓄電池の容量が低下し、寿命が短くなります。
サルフェーション(※7): 適正値より低い電圧で充電した場合、負極板の表面に充填された活物質(鉛)が不還元性の硫酸鉛結晶になること。このサルフェーションが起こると、鉛に還元されないため蓄電池の容量が低下し、寿命が短くなります。
蓄電池管理システム(※8): 蓄電池の放電時間、放電終止電圧及び放電容量により寿命を判断し、取り替え時期を監視装置に転送する寿命判定機能及び蓄電池電圧、蓄電池異常値を検出した場合、監視装置に測定値及び警報を転送する電圧監視機能。
【本件に関する報道機関からのお問合せ先】
NTTファシリティーズ 経営企画部広報室
MAIL:pr@ntt-f.co.jp
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