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平成13年2月15日  

建物総合地震リスク診断システムを開発
- 耐震対策の投資対効果を損失コストの低減として定量的に評価 -


株式会社 エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ(代表取締役社長 陰山照男、以下NTT ファシリティーズ)は、建物と収容設備機器類のトータルな耐震信頼性確保を目的として、より効果的な耐震対策を推進するため、建物の地震リスクを総合的に診断するシステムを開発しました。
本システムは、耐震理論に確率理論を応用させることで、地震被害の発生確率や損失コストを算定し、地震リスクを定量的に評価します。NTT ファシリティーズは、建物・収容設備の耐震補強計画において、この地震リスク診断結果を活用することにより、補強費用に対する投資対効果を適切に評価し、中長期事業計画も考慮した最適な耐震補強計画の立案を実現しました。


1.背景
 東日本電信電話株式会社(代表取締役社長 井上秀一、以下NTT 東日本)、西日本電信電話株式会社(代表取締役社長 浅田和男、以下NTT 西日本)、及び、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(代表取締役社長 鈴木正誠、以下NTT コミュニケーションズ)は、災害対策基本法による指定公共機関(注1 )であり、情報通信というインフラサービスを提供している業務の公共性、公益性から、地震等の自然災害に対する防災の責務があります。地震災害対策の基本は、通信ビルや通信装置等の通信施設自体の耐震強化であり、従来より耐震対策を重要施策として継続して実施してきました。
NTT ファシリティーズは、1992 年12 月に分社・独立する以前から、継続してNTT 施設の災害対策施策を実施しており、建物・鉄塔の地震観測、既存建物の耐震診断・耐震補強提案、高性能3 次元振動試験システムによる収容装置等の耐震評価等の業務を通して、耐震対策をより最適化、効率化するための情報・ノウハウを蓄積しています。
2.開発のねらい
 このような背景から、NTT ファシリティーズは、NTT 各社が従来より進めてきた耐震対策をより効果的に推進するため、収容設備機器の物的損失や収入損失等を含めた建物の総合的な地震リスクを算定し、耐震対策の投資対効果を定量的に評価できる「建物総合地震リスク診断システム」をNTT 東日本、NTT 西日本及び、NTT コミュニケーションズの技術協力を得て開発しました。
3.建物総合地震リスク診断システムの概要と特長
 
(a) 概要
  今回開発した「建物総合地震リスク診断システム」の概要を図1に示します。この診断システムは、建設地の最大地震動やその発生確率、建物・収容設備機器等の地震動に対する脆弱度と、現地調査等による耐震対策状況等を入力データとして、地震リスク解析システムで診断を行います。
本解析システムは、地震発生時における、営業停止の原因となる建物・収容装置の被害形態をイベントツリー(ET)・フォールトツリー(FT)解析手法(注2)を用いてモデル化をしました。その事により、高度情報化ビルの特性に適応したリスクの算出を実現しました。 また、建物の保有リスクを多面的に捉えるために、以下についても算出します。(図2)
 
地震の発生確率と建物・収容設備機器等の物的損失・収入損失に関わる年間地震リスク
建設地で予想される最大地震動が発生した場合の最大予想損失額(PML)
建物の供用年数内の地震リスクを確率理論によって評価した累積トータルコスト
その他、地震ファクターの分析
  耐 震対策効果の定量的評価は、最大予想損失額(PML)と累積トータルコストに基づいて行います。建物の耐震診断結果である構造耐震指標(注3) (Is 値)をパラメータとして算定した例を図3に示します。これにより、建物の耐震補強レベルに対する損失コストの低減効果を定量的に把握できますので、個々の建物の耐震対策目標を設定するための判断根拠となります。
例えば、耐震対策を行った場合は、未対策時に比べて初期コストがかかりますが、損失コストが小さくなりますので、建物を長期間使用する場合は、耐震対策を実施した方が有利となる場合があります。累積トータルコストを比較することは、建物の将来の供用年数に応じて耐震対策の適否を判断するのに非常に効果的です。(図4)また、これらの診断結果は、耐震対策を実施すべき施設の優先度を判断するための根拠としても利用できます。
(b) 特長
  今回開発したシステムは、既成の地震リスク診断システムとは異り、データセンターやコンピュータセンター等の高度情報設備を収容した建物を含めて、様々な用途の建物に適用できるという特長をもっています。
高度情報化ビルは、各種サービス対応のIT 装置をはじめとして、情報機械室の温湿度条件を維持するための空調システム、高信頼電源システム、停電に備えた非常用発電装置や蓄電池等、信頼性の高いサービスを提供するための様々な機器が収容されています。これらの地震時の被害形態は、一般の事務所ビルに比べて非常に複雑であることから、より詳細で汎用性の高いET ・FT 解析モデルを開発し、地震リスク解析システムに適応しました。また、NTT ファシリティーズが保有する、建物や収容設備機器の耐震性能に関するノウハウを用いて、阪神・淡路大震災での建物被害分析結果等をもとに、精度の高い建物脆弱度の算出システムを開発しました。また、当社の持つ高性能3 次元振動試験システムによる耐震性能試験により、IT 装置等の設備機器も高精度な脆弱度算出を実現しています。
4.今後の展開
  高度情報化ビル、とくにサービスの公共性・公益性が求められるNTT 情報通信ビルではサービス停止による社会的影響が大きく、また、地震被害を受けたときの収容設備機器等の再建費や収入損失が高額となることから、企業としての地震リスクも一般の事務所ビルに比べて非常に大きくなります。
NTT ファシリティーズは、NTT 各社の通信信頼性の確保と投資の削減を実現するため、「建物総合地震リスク診断システム」を活用して通信施設の耐震対策施策をより効果的に推進するとともに、データセンター環境構築ビジネス等をはじめとした耐震コンサルティング業務領域での積極的活用を検討していく予定です。
5.用語の説明
 
(注1) 指定公共機関:災害対策基本法によって内閣総理大臣より、業務の公共性、公益性から業務を通じて防災に寄与する責務を指定された機関
(注2) ET ・FT 解析:地震による被害形態を抽出し、その被害形態を構成する被害要因を樹形列的に分析し、モデル化すること。
(注3) 構造耐震指標:耐震診断により得られる、建物の耐震安全性を評価する指標
【本件に関する報道機関からのお問合せ先】
NTTファシリティーズ 経営企画部広報室
MAIL:pr@ntt-f.co.jp
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予告なしに変更する場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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