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1.開発のねらい |
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鉄筋コンクリートは、経済的で耐久性のよい構造材料として、建築物・土木構造物に広く用いられていますが、トンネル内でのコンクリート塊落下事件以来、再び一般社会のコンクリート品質に対する信頼感が大きく低下しています。再びというのは、昭和50年代にも鉄筋の腐食やコンクリートの剥落、異常ひびわれの発生など、種々の劣化現象が目立つようになり、コンクリートの早期劣化、海砂の塩分およびかぶり厚さ(※1)不足による鉄筋腐食が問題になっていました。
当時、旧建設省が鉄筋コンクリート造建築物の耐久性向上技術を取りまとめたことに対応し、当社でも、これらの問題に早くから着目して、独自の既存建物構造体の実態調査や実験を積み重ね、構造体保全技術・手法を開発、運用してきました。
1990年代になりバブル経済が破綻すると、建築物の資産価値の維持・向上が重要視され、前述のコンクリート塊の落下や、実際のコンクリート強度が設計強度よりも低い建物事例が表面化してきたこと、さらに老朽建物の増加傾向の中で、建物の長寿命化、いわゆる地球環境保護問題・廃棄物問題に対しての認識が向上してきたことなどの社会的背景から、建築物の耐久性に対する考え方や要求が大きく変化してきています。現在は、社会が耐久性という性能の重要性を認識し、その維持および向上を強く要求しています。当社は、そのような社会的要求に速やかに対応できる高度な技術として、既存建物構造体の耐久性を総合的に診断、評価し、リニューアル工法立案までを一貫して行う「建物構造体耐久性診断システム」を開発し、お客さまの資産価値向上をサポートします。 |
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2.システムの概要 |
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本システムは、これまでに既存の鉄筋コンクリート造における建物構造体の実態調査や実験を積み重ねて独自に開発、運用してきた構造体保全技術・手法に基づき、(1)劣化度分類、(2)劣化進行予測、(3)耐久性能判定、(4)補修工法選定を行う「建物構造体耐久性診断システム」として開発したものです。
本システムの特長は、鉄筋コンクリート構造体の仕上げ種類、部屋の用途等に応じて設定した調査単位別にひび割れ、中性化、鉄筋腐食等の劣化現象のデータ(構造調査データ)を入力することにより、以下の4項目のデータ作成および診断が効率的に実施できることです。 |
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(1) |
構造調査データを調査単位別に整理し、劣化現象ごとに劣化の程度が把握でき、同時に屋内・屋外別に集計して建物全体を軽度、中度、重度の3段階に分類・評価する劣化度分類を行います。 |
(2) |
構造調査データをもとに、一般地域についてはコンクリートの中性化分布状況と鉄筋のかぶり厚さ分布状況から中性化の進行を予測し、臨海地域については中性化に加え、コンクリートに浸透する塩分の浸透速度、浸透深さの分布と鉄筋かぶり厚さ分布状況から塩分の浸透を予測することにより、その地域における一定割合の鉄筋が腐食する時期を推定する劣化進行予測ができます。 |
(3) |
劣化度分類と劣化進行予測の2つの結果を総合的に評価する耐久性能判定(耐久性能級別)が可能です。 |
(4) |
耐久性能判定の結果、補修を必要とする場合に、RC構造体の劣化現象ごとに、補修材料の必要性能と劣化程度に応じた補修工法の選定を行えます。 |
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以上、(1)~(4)の結果を診断報告書作成のための図表として出力することが可能です。 |
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3.今後の取り組み |
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NTTファシリティーズでは、IT・ブロードバンド時代に対応した情報環境を構築するためのサービス「eリニューアル」を展開しています。すでに約160ビルの構造調査・耐久性診断に本システムを活用している実績をベースに、今後もNTTグループはもとより多数の施設を保有する他の組織・企業へ積極的なeリニューアル提案を行い、より的確な建物構造体の耐久性診断を提供していきます。 |
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(※1)かぶり厚さ:コンクリート表面から鉄筋面までのコンクリートの厚さ。
>>図 システム概要 |
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【本件に関する報道機関からのお問合せ先】 |
NTTファシリティーズ 経営企画部広報室 MAIL:pr@ntt-f.co.jp |
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