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1.背景とねらい |
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わが国の建設業界における環境への影響は、国内のエネルギー消費の約30%、二酸化炭素(CO2)排出量の約30%、さらに全産業廃棄物の約20%を占めると言われています。循環型社会を目指したわが国の政策動向、省資源・廃棄物対策など環境問題への社会的関心が高まる中、少しでも環境影響を低減するためには、建物の企画設計段階から廃棄に至るライフサイクル全体にわたる取り組みが必須といえます。
NTTグループでは、昨年十月に「建物グリーン設計ガイドライン」を制定し、環境への影響を考慮した環境共生建物の設計(建物グリーン設計)を推進しています。NTTファシリティーズでは、建物のライフサイクル全体にわたる、より一層の環境負荷の低減を目指す建物グリーンサイクルを提案し、建物グリーン設計を実践しています。こうした一連の取り組みの中で建物の建設段階における関わり方がまだ小さいことから、特に建物の建設段階で今まで以上に環境負荷を低減して地球環境に配慮していく必要があります(図表1)。
これまでの仕様書には、騒音対策や振動対策などの周辺住民や居住者に対する配慮は盛り込まれていましたが、地球環境に配慮した仕様書という概念が不足していました。今年四月に国土交通省官房官庁営繕部監修の建築工事共通仕様書の中に、ようやく環境配慮材の使用を促す項目が盛り込まれるようになりましたが、設計・監理者が発注者に提案し、施工業者も一体となって環境対策に積極的に取り組むためには、環境に配慮した仕様書として独立して適用する必要があります。そこで、発注者、設計・監理者、施工業者が協調して環境負荷の低減に努めることをねらいとして本仕様書を策定しました。 |
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2.環境仕様書の概要と特長 |
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(a)概要
今回策定した「環境仕様書」は、工事中の環境負荷の低減を実現させるために、七つの配慮項目ごとに仕様を規定しています(図表2)。例えば法律の遵守を徹底するとともに、工事の現場において、工事中における省資源及び省エネルギーを図ることを求めています。工事に使用する材料の搬入・搬出においても、施工業者にエネルギーの省力化を考慮した搬入ルート、製品工場等を選定することを求めています。また、工事現場から発生する廃棄物の削減を求めるとともに、目標をたて、発生した廃棄物は適切な管理と適切な処理を行うことを求めています。さらに、施工業者からの提案を求めるなど、施工業者と設計・監理者の間にある垣根を越えて、一体となって環境負荷の低減を目指します。
(b)特長
今回策定した「環境仕様書」は、これまでの仕様書とは異なり、周辺環境だけでなく地球環境に配慮した工事を推進するための仕様書となっています。また、環境仕様書を独立して適用することにより、発注者、設計・監理者、施工業者全員の環境に対する意識を高めることができ、関係者全員が協調して環境負荷の低減に努めることをねらいとしています。適用対象工事としては、建築工事、改修工事、電気設備工事、機械設備工事など全ての工事に適用できます。施工業者からの積極的な提案を求め、工事現場において、設計・監理者と施工業者が協力しあって環境負荷を目指すことが特長です。 |
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3.今後の展開 |
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この「環境仕様書」を推進するためには、発注者の理解が必要になります。そこで本仕様書を適用する場合は、環境配慮型の建築を求める企業に積極的に提案し、理解が得られた時に適用することとしています。また同時に施工業者の協力も必要です。この理解と協力があって初めて、発注者、設計・監理者、施工業者が協調して環境負荷の低減を目指すことが可能になります。
近年では、環境配慮型の建築を求める官公庁や企業も多くなってきており、施工業者もISO14001(注1)を取得する企業が増加しているため、今後益々環境仕様書の需要が増えることが見込まれます。
こうした背景から、環境配慮型の建築を求める官公庁や企業を積極的に提案していく予定です。 |
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4.用語の説明 |
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(注1)ISO14001: |
環境マネジメントシステム。これは国際規格であり、全体的なマネジメントシステムの一部で、環境方針を作成し、実施し、達成し、見直し、かつ維持するための、組織の体制、計画活動、責任、慣行、手順、プロセス及び資源を含むものです。 |
※注
環境仕様書という概念は、これまでにも自動車業界において1995年頃から使われておりますが、これは自動車の環境への影響を自動車の性能として示した製品仕様書であるのに対し、建築業界における仕様書は、工事に対する設計者の指示のうち、図面で表すことができない点を文章や数値などで表現するものです。 |
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【本件に関する報道機関からのお問合せ先】 |
NTTファシリティーズ 経営企画部広報室 MAIL:pr@ntt-f.co.jp |
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