2009年6月17日
データセンター、サーバルームの空調用エネルギーを40%削減する
IT装置用床置型空調機FMACS-Ⅴのラインナップを追加
低外気温時の運転効率を飛躍的に向上させる「冷媒コントロールエコノマイザ」を標準搭載
株式会社NTTファシリティーズ(代表取締役社長 森 勇、以下、NTTファシリティーズ)は、データセンター向け空調ソリューション「ACORDIS(アコーディス)」*1(2006年日本建築学会賞技術賞受賞)のフラッグシップソリューションとして、空調エネルギーの大幅な省電力を実現する冷媒コントロールエコノマイザ機能を標準搭載した、IT装置用床置型空調機「FMACS(エフマックス)」*2
のラインナップを追加し、2009年7月1日より販売を致します。
NTTファシリティーズでは、IT装置用床置型空調機FMACSの開発を継続し、2005年より第5世代となるFMACS-Vシリーズの販売を開始しました。この度、大規模データセンター用電源設備室等のような二重床を敷設しない設備機械室の空調に適したFMACS-Ⅴ(L)上吹型(冷房能力45kW)、並びに小規模サーバルームや小型モジュール設計の空調に適したFMACS-Ⅴ(S)上吹型(冷房能力9kW)を開発しました。これにより、大規模データセンターのマシンルーム、電源設備室から小規模サーバルームまでの用途に対応し、IT設備を保有する全てのお客様に卓越した省エネルギー性能と高い信頼性を備えた空調システムをご提供致します。
当社の独創性は、データセンターファシリティの中でも多くの電力を消費している空調システムの運転効率改善に取り組み、空調機そのものの高性能化、気流設計・気流制御手法の高度化による省エネルギーの推進を図ってきた技術開発にあります。なかでも、空調機の高性能化については、通年での外気気象条件に対する運転効率を大幅に高めるため、FMACS-Ⅴシリーズ全機種に冷媒コントロールエコノマイザ機能を搭載しました。この機能により、卓越した運転効率と優れた省エネルギー性能を確保できるため、エアサイドエコノマイザやウォーターサイドエコノマイザのような空調システムを新たに構築し厳密に運用管理することなく、FMACS-Ⅴの採用または既存電算用空調機をFMACS-Ⅴにリプレースするだけで空調システムの省電力化を容易に実現することができます。
経済産業省のグリーンITイニシアティブの予測では、社会インフラで扱われる情報量は2025年には約200倍(2006年比)となり、IT機器およびそのファシリティが消費する電力は2009年現在の4~5倍になると予測しています。これは、ITのグリーン化が一企業の経営課題ではなく、社会全体が抱える共通の課題となることを示唆しています。
本製品のラインナップ
現在のIT技術が社会インフラとして欠かせない状況においては、大量な情報処理を要求されるデータセンターだけでなく、業務・情報集約型オフィスや、SOHO、生産システムを支援するための比較的小規模なサーバルームにおいても高い信頼性と、省電力化が求められます。
FMACS-Ⅴシリーズは、冷房能力としては56kW(20HP)~9kW(3.2HP)の4タイプを、放熱方式は、高信頼でメンテナンス性に優れた「空冷」と、建物屋上等の設備スペース集約化を可能にする「冷却塔放熱(水冷)」を用意しました。さらに室内機は、最適な気流方式が選択できるよう、二重床空調方式用の「下吹型」、直吹出空調方式用の「上吹型」を用意しました。今回販売を開始する2機種を加えた全7機種のラインナップにより、お客様の要求に最適なソリューションで応えます。
タイプ | 冷房 能力 |
放熱方式 | 吹き出し | 主な用途・気流方式 | 備考 |
LL | 56kW (20HP) |
空冷 | 下吹き | 大規模DC・二重床空調方式 | 販売中 |
冷却塔放熱 (水冷) |
下吹き | 大規模DC・二重床空調方式 | 販売中 | ||
L | 45kW (16HP) |
空冷 | 下吹き | 中規模DC・二重床空調方式 | 販売中 |
上吹き | 電力室・中規模DC・直吹出空調方式 | 2009年7月発売 | |||
M | 20kW (7.1HP) |
空冷 | 下吹き | サーバルーム・二重床空調方式 | 販売中 |
上吹き | サーバルーム・直吹出空調方式 | 販売中 | |||
S | 9kW (3.2HP) |
空冷 | 上吹き | 小規模サーバルーム・直吹出空調方式 | 2009年7月発売 |
本製品の特徴
- (1)冷媒コントロールエコノマイザによる卓越した省エネルギー性能
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データセンターでは、収容するブレードサーバやネットワーク機器等から発生する発熱が非常に大きいことから、年間を通じて冷却(冷房)を行う必要があります。一方で、年間での外気温度は四季のある日本では大きく変化し、中間期から冬期の低外気温度の状態を上手に利用することが望まれます。
そこで、FMACS-Ⅴ全機種に、外気温度が低下する中間期および冬期に圧縮機の圧力比(冷媒を圧縮する比率)を低下させ、無駄な動力を抑制する「冷媒コントロールエコノマイザ」を標準で搭載しました。空調システムの省電力化が期待できる外気冷房*3システムには、エアサイドエコノマイザやウォーターサイドエコノマイザがありますが、これらのシステムを新たに構築し、気象条件を考慮しながら厳密な運用することなく、FMACS-Ⅴを採用すれば卓越した運転効率による優れた省エネルギー性能を確保することができます。冷媒コントロールエコノマイザの搭載効果はウォーターサイドエコノマイザよりも優れ、年間総合効率は4.4を発揮します。例えば床面積500m2、発熱負荷1kW/m2、東京近郊のデータセンターの場合、一般電算機用空調機に比べて電力量は689,000kWh/年、電気料金は8,900,000円/年、Co2排出量は293トン/年といずれも約40%削減することが可能です。 - (2)全機種に確保した高い信頼性・可用性
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データセンターのサービス信頼度を担保するためには、IT装置を冷却する空調システムの信頼度を電源設備と同じ水準まで高めることが必要です。一般的に、空調システムの信頼度設計は、空調機の故障を想定した予備機配置による冗長構成がとられますが、過度な冗長構成はイニシャルコストを増大させるだけでなく、空調機の稼動率低下によるランニングコストの増大となり、TCO (Total Cost of Ownership)として経営を圧迫することにもなります。
FMACS-Ⅴシリーズは過度な冗長構成を不要とするため、空調機単体の運転信頼度を高める技術*4を豊富に搭載しています。冷凍サイクルを構成する冷媒の状態値を予測したり、運転状態の学習機能により、異常状態を未然に回避する高度な制御機能等です。また、Lタイプ以上の中大型機については、冷凍サイクルを2系統に分離することで、1系統の異常時にも他系統で運転を継続する片サイクル運転により、空調機の完全停止を防いで室温上昇の被害拡大を回避します。さらに、全機種とも震度6強の震災時にも運転継続が可能な耐震性能を備えるとともに、電磁ノイズについては出さない、受けても誤動作しない耐力を情報処理装置に準拠した基準で担保するなど、空調機の信頼度を高い基準で確保しています。
本製品の事業目標
NTTファシリティーズが技術開発したFMACS-Ⅴシリーズは、データセンター空調市場の約20%に採用されてきました。今回のラインナップ追加で、更なる市場拡大・事業拡大を図り、シェア40%の獲得を目標に取り組みます。
総合ソリューションの提供
NTTファシリティーズでは、FMACS-Ⅴシリーズの他、局所空調用のラック型空調機FTASCL-RS/C*5、天吊型空調機FTASCL-CM/C、気流制御技術製品のアイルキャッピング*6を提供しています。NTTファシリティーズは、これらの空調総合ソリューションによりお客様のデータセンターやサーバルームに最適な空調システムを提供し、事業課題、環境目標をお持ちの全てのお客様の事業と環境経営に貢献いたします。
【参考資料-2】冷媒コントロールエコノマイザとは
FMACS-Ⅴの冷媒コントロールエコノマイザは、中間期から冬期の外気冷熱を有効に活用するため、圧縮機の低圧力運転を可能とすることで消費電力を抑制する技術です。冷媒コントロールエコノマイザは間接的な外気冷房方式に位置づけられます。
空調機の省エネルギーを図るには、冷凍サイクルの中で最も電力を消費する圧縮機を効率的に動かすことが重要です。図2-1は冷凍サイクルの状態を模式的に示したものです。冷凍サイクルの状態は、ポンプに例えることができます。室内機で集めた熱をポンプで吸い上げて室外機で放熱します。このポンプの役割をなすのが圧縮機です。
データセンターやサーバルームでは年間を通じて冷房運転となります。本来、外気温度が低いときは小さなポンプ動力で放熱することができるため、外気温度が高いときより運転効率が高くなります。しかし、一般電算機用空調機は年間で最も冷却能力が求められる夏期の外気条件に合わせて機器を設計しているため、冬期でも夏期と同じ大きなポンプ動力で放熱しており、運転効率は向上しません。一方、FMACS-Ⅴは外気温度が低くなると、それに応じて圧縮機の圧力を下げて運転できるようにしました。これにより、中間期及び冬期の圧縮機の消費電力を抑制し、高い運転効率を発揮します。
図2-2は運転効率と外気温度との関係、および東京の標準気象データによる外気温度の発生時間を示したものです。外気温度の発生時間は、1年すなわち8,760時間のうち、10~25℃の中間期が約6,500時間と実に74%を占めており、年間冷房運転では中間期の運転効率を高めることが極めて重要であることが分かります。そこでFMACS-Ⅴは、冷媒コントロールエコノマイザの搭載により、中間期及び冬期の運転効率を高めました。この外気温度の発生時間を使って一年間の平均運転効率を算出すると、一般電算機用空調機が2.6程度に留まるのに対し、FMACS-Ⅴは4.4となり、年間消費電力を約40%も低減させることができます。
冷媒コンロールエコノマイザは、エアサイドエコノマイザやウォーターサイドエコノマイザといった他の外気冷房方式よりも省エネルギー性が高い方式です。図2-3にモデルデータセンターを使った年間消費電力量の試算結果を示します。この結果から、中央熱源方式と併用するエアサイドエコノマイザ、ウォーターサイドエコノマイザに比べ、冷媒コントロールエコノマイザのFMACS-Ⅴが最も消費電力が小さいシステムであることがわかります。その主たる理由は、冷媒コントロールエコノマイザは冷媒潜熱を利用するため、水顕熱を利用するウォーターサイドエコノマイザと比べても搬送動力が非常に小さいためです。さらに、冷媒コントロールエコノマイザは空調機自体に組み込まれているため、ウォーターサイドエコノマイザに必要な配管の切替機構やビル監視装置による複雑な監視制御等の付帯機能・付帯設備が不要なため、イニシャルコスト、ランニングコスト共に他の外気冷房方式よりも優位性が高い方式です。
用語説明
- *1 ACORDIS
- 「ACORDIS(アコーディス)」はNTTファシリティーズの登録商標です。
- *2 FMACS
- 「FMACS(エフマックス)」はNTTファシリティーズの登録商標です。
- *3 外気冷房
- 事務所空調などの保健空調の分野では、冷房運用時の省エネルギー技術として外気冷房(エアサイドエコノマイザ)が一般的ですが、データセンターの場合は処理熱量が大きいことから大量の外気を導入しなければならず、大きな送風動力や外壁開口、ダクトスペースが必要なほか、さらに、IT機器の環境要求環境条件を満たすための、空気ろ過や湿度調節エネルギーの負担が大きいため、大きな省電力効果を得ることができません。
一方で、低温外気を直接取り込むのではなく、冷水と熱交換させてデータセンターの外気冷房を実現するウォーターサイドエコノマイザがありますが、温暖湿潤な日本の気象条件では外気の湿球温度が高いため、適用可能な期間が限られるため、その効果が小さく、導入事例も少ない状況です。 - *4 高信頼性技術
- 冷凍サイクルの予測・学習機能では、夏期高温時に外気温度の過渡的な変化等で空調機が故障停止してしまうことを未然に回避することを実現しています。
そのほかの高信頼性確保技術として、「2系統サイクルでの片サイクル運転の実現」、「震度6強震災での運転を可能にする耐震性能」、「VCCI、SISPR24に準拠したEMC耐性」、「送風機のダイレクトドライブによる駆動ベルトの排除」、「圧縮機、送風機、制御基板等の長寿命設計」、「きめ細かな運転管理を支援する外部インタフェースと日本語表示液晶操作パネル」、等があります。 - *5 FTASCL
- 「FTASCL(エフタスクル)」はNTTファシリティーズの登録商標です。
- *6 アイルキャッピング
- 「AISLE CAPPING(アイルキャッピング)」はNTTファシリティーズの登録商標です。
- 本件に関するお問い合わせ先
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- (株)NTTファシリティーズ 総務人事部 広報室 TEL:03-5444-5112
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