2012年11月20日
日本初!IPv6対応『920MHz帯無線マルチホップネットワーク技術』を用いたエネルギーマネジメントシステムの試験運用を開始
~ 有線センサを容易に無線化、構築コスト・配線管理を大幅に削減 ~
株式会社NTTファシリティーズ
沖電気工業株式会社
株式会社NTTファシリティーズ(代表取締役社長 筒井 清志、本社:東京都港区、以下NTTファシリティーズ)と沖電気工業株式会社(代表取締役社長 川崎 秀一、本社:東京都港区、以下OKI)は共同で、日本で初めてIPv6対応「920MHz帯*1無線マルチホップネットワーク*2技術」に対応したエネルギーマネジメントシステムの試験運用を2012年11月末よりNTTファシリティーズ本社(東京都港区)にて開始します。
1. 背景と概要
エネルギーマネジメントシステムは、多数のセンサ等の機器と通信しデータを管理する必要があるため、機器間ネットワークを構築する必要があります。従来、無線対応センサの使用や信号変換器による無線化を行っていましたが、建物構造や障害物による電波到達距離の低下やベンダ毎に接続される機器が限定されることが課題でした。
本試験運用では、OKIのIPv6対応「920MHz帯無線マルチホップネットワーク技術」とNTTファシリティーズの「エネルギーマネジメント技術」を用いて、電波到達性が高いエネルギーマネジメントシステムをマルチベンダで実現します。(図1)
本システムにより、従来センサの容易な無線化、無線中継機器の削減および取付け工事の期間と費用の削減を行い、より安価でスピーディなサービス提供を可能にします。
経済産業省の平成23年度「エネルギー管理システム導入促進事業費補助金(BEMS)」*3の補助対象であるNTTファシリティーズのエネルギーマネジメントシステム『節電Remoni®』*4の機器間ネットワークをOKIの『920MHz帯無線ユニット』を用いて構築し、試験運用を行います。回りこみ特性に優れた920MHz帯無線および自動的に通信経路選択ができるマルチホップネットワーク技術を活用し、電気設備室のような障害物が多い空間での安定した無線通信および複数メーカ機器の接続性を検証します。
試験運用ビルでの効果として工事費を40~50%程度削減が可能なことを確認しています。(図2)
試験運用ビル
- 規模:
- 地上S造・RC造、地下RC造
- 用途:
- オフィス
- 対象フロア:
- NTTファシリティーズ入居8フロア
効果
- 電波到達状況:
- 同一フロア内:約30m以上(最遠設備室間)、上下フロア間:2フロア以上
(第1実証段階において確認) - 導入費用:
- ▲約40~50%
(対象ビルでの有線取付けと比較、無線機器を含む)
2. OKIの「920MHz帯無線ユニット」を用いたネットワークシステムの特長
- 電波到達性に優れた「920MHz帯無線」を採用
2012年7月25日から全チャネルが利用可能になった920MHz帯無線に対応しています。920MHz帯は、無線LANなどの2.4GHz帯無線と比較して電波の到達距離が長く、障害物を回り込んで届くことから、ビル、工場等に広く配置される機器間のネットワークの無線化に適した最適な無線周波数帯です。従来の2.4GHz帯無線では電波が届かない問題があったケースにおいても920MHz帯無線を利用することにより、無線化が実現可能となります。
- RS485*5のModbus*6プロトコルなど業界標準に対応し、多様なセンサを容易に無線化
RS485で有線接続される各機器に『920MHz帯無線ユニット』を接続することで、簡単に通信の無線化を実現できます。RS485のプロトコルで送受信されるデータを無線上では完全に透過的に扱うことにより、従来から取り扱っているRS485対応機器をそのままご利用いただけます。業界標準のModbusプロトコルに対応している他、各ベンダ独自プロトコルにも順次、対応することにより、多様な機器、センサの収容が可能です。(図3)
- 国際標準に対応したIPv6対応の無線マルチホップネットワーク機能に対応
無線マルチホップネットワーク機能により、無線ユニット子機間をメッシュ状に中継してデータを無線ユニット親機に届けるため、ビルや工場内に広く配置された機器間の通信を無線化することができます。また、無線ユニット子機は品質のよい経路を動的に選択し、通信の信頼性を保ちます。無線マルチホップネットワーク機能は、IETF*7で標準化された6LowPAN、IPv6/RPL*8に対応し、今後はZigBee IP*8にも対応予定です。国際的に利用されている業界標準のため、多種の機器・センサとの相互接続性を確保し、多様なサービスを創出することが可能となります。
3. 今後の予定
今後もNTTファシリティーズとOKIは、試験運用の結果を元に無線によるスマートサービスを積極的に市場展開します。また、製品改良や大規模システム等の技術開発を進め、M2M*9やエネルギーマネジメントシステムの迅速な導入と、周辺機器との相互接続性の向上をサポートし、スマートコミュニティの実現や地球環境に貢献してまいります。
展開・導入想定
- ビル内の様々な機器のモニタリング統合(水、CO2、照度、温度、湿度、重量 等)(図4)
- 業務を妨げない既存ビルへの施工、テナントビルへの導入(図4)
- 工場、大学のキャンパスなどの多棟の一括統合管理(図5)
項目 | 仕様 | |
---|---|---|
無線インターフェース | 周波数 | 920MHz帯 (ARIB STD-T108準拠:922.3~928.1MHz) |
PHY/MAC規格 | PHY:IEEE802.15.4g / MAC:IEEE802.15.4 | |
最大送信出力 | 20mW | |
伝送レート | 最大100kbps(環境により異なります) | |
伝送距離 | 見通し 約1km(環境により異なります) | |
変調方式 | GFSK | |
外部インターフェース | 物理インターフェース | RS485端子台 x 1 マイクロUSB x 1 SMA x 2(ダイバーシティ) |
接続方式 | 上位接続:RS485 または マイクロUSB 下位接続:RS485 |
|
RS485対応プロトコル | Modbus RTU、他 | |
ネットワーク規格 | 6LoWPAN、IPv6/RPL等に対応 | |
電源 | DC5V:マイクロUSB、専用給電コネクタ AC100V:ACアダプタを接続 |
|
環境条件 | 本体:-20~+60℃ | |
最大消費電力 | 1W以下 | |
外形寸法 | 115 x 56 x 24mm (突起物、取付プレート、アンテナ含まず) |
- ※筐体イメージ、主要諸元は今後、変更となる場合があります
- ※無線ユニットは、親機と子機の形状は同じです
商品紹介URL:http://www.oki.com/jp/920M/
用語説明
- *1 920MHz帯
- 日本では915.9~929.7MHzを使用する周波数帯であり、無線LAN等で主に使われている2.4GHz帯と比較して電波到達性が高いことから、海外でも同様の周波数帯がスマートメーターなどに広く利用されています。遠くまで届くだけでなく、障害物があっても回り込んで届くため、工場や病院など障害物の多い場所や、屋外での利用に向いています。日本では、2008年に制度化された950MHz帯が利用されてきましたが、920MHz帯への周波数移行で、米国やアジアと同じ周波数帯を利用できることになり、国際協調による市場の活性化が期待できます。920MHz帯は2011年12月14日に制度が改正され一部のチャネルが利用可能となり、2012年7月25日に全てのチャネルが利用可能となりました。今回の制度改正では送信出力も見直され、従来の10mWから、20mW(免許不要の特定小電力無線局)や250mW(簡易無線局)の利用が可能となります。
- *2 無線マルチホップネットワーク
- 複数の無線通信装置を経由して、バケツリレーのようにデータを伝送する方法で構築したネットワークで、センサーネットワークなどに広く使われています。
- *3 平成23年度「エネルギー管理システム導入促進事業費補助金(BEMS)」
- 下記サイトをご参照ください。
http://sii.or.jp/bems/ - *4 節電Remoni®
- 下記商品・サービスページをご参照ください。
http://www.ntt-f.co.jp/service/aggregate/ - *5 RS485
- RS485はシリアル通信の物理層の規格の一つです。複数機器間を通信線でバス型にマルチポイント接続することができます。
- *6 Modbus
- ModbusはModicon社が策定したシリアル通信用のオープンなプロトコルです。産業用電子機器を接続する最も一般的手段の一つとして広く利用されています。
- *7 IETF
- Internet Engineering Task Forceの略称であり、インターネット技術に関するプロトコルなどの技術標準を作成する国際的な標準化組織です。
- *8 6LoWPAN、IPv6/RPL、ZigBee IP
- IETF(Internet Engineering Task Force:インターネット関連の標準化機関)では、IEEE802.15.4上でIPv6ネットワークを実現するために必要な技術を標準化しています。6LoWPAN(IPv6 over Low power Wireless Personal Area Networks)はヘッダ圧縮やパケット分割などを行う技術であり、RPL(Routing Protocol for Low power and Lossy Networks)はIPv6でマルチホップルーティングを実現する技術です。
ZigBee Alliance(米国カルフォルニア州に所在する非営利団体)では、これらの技術を組合せて、ZigBee IPと呼ばれる無線マルチホップIPv6ネットワークの標準化を推進しています。日本の920MHz帯無線に対応した「920MHz ZigBee IP」はHEMS/BEMS等のスマートコミュニティ市場での普及が期待されています。 - *9 M2M(マシン・トゥ・マシン)
- 機械(マシン)と機械(マシン)の間で人手を介さずに行なうコミュニケーションを主体としたICTシステムの総称です。スマートグリッド、電子医療、交通などの分野で、センサーや通信機能を持ったマシンが自動的に情報をやりとりして自律的な動作を行なう事などが想定されています。通信手順や情報の標準化が必要となるため、ITU-TやETSI等の標準化機関で検討が始まっています。
- ※沖電気工業株式会社は通称をOKIとします。
- ※ZigBeeはZigBee Allianceの登録商標です。
- ※その他、本文に記載されている会社名、商品名は一般に各社の商標または登録商標です。
- 【本件に関する報道機関からのお問合せ先】
- NTTファシリティーズ 経営企画部広報室 MAIL:pr@ntt-f.co.jp
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