1.背景 |
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本格的なマルチメディア時代を迎えようとする今日、企業や一般家庭においてインターネットをはじめとするマルチメディア用の各種端末機器はますます普及しつつあります。
こうした企業活動や社会生活の中で、端末への安定的な電源の供給はもはや必要不可欠なものとなり、停電への対応は勿論のこと、雷サージまたはノイズといった電源のトラブルからの防護が求められています。
また現在、机上およびその周辺の省スペース化を図ることが望まれ、端末のモニターや本体は小形(薄形)・軽量化が進み、UPS等の周辺機器についても同様のニーズがあり、NTTファシリティーズでは、これまで様々な方法でUPSの小形・軽量化について研究開発を進めてきました。
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2.製品の特徴 |
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(1) |
ニッケル水素蓄電池の適用により小形・軽量化を実現
ニッケル水素蓄電池は、鉛蓄電池と比べ体積・質量比ともに 2.5倍以上のエネルギー密度を有しており、UPS「FU-03N」のバックアップ電池に採用することにより従来の鉛蓄電池を使用した同クラスのUPSと比較し、体積、質量を約60%低減しました。
外形寸法:W 60mm×D 220mm×H 180mm、質量: 2.1 kg
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(2) |
蓄電池寿命 約7年(25℃の環境温度で使用した場合)
従来の鉛蓄電池の寿命約5年よりさらに長寿命化を実現しました。
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(3) |
雷サージプロテクタ機能
電源線、通信線から雷サージが侵入した場合、電位差を抑制し大切な端末機器を守ります。
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(4) |
蓄電池寿命判定機能
電池電圧および電池温度の監視によって、蓄電池の寿命を判定します。
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(5) |
オートシャットダウン機能
停電などの電源トラブル時に、動作中のパソコンを自動的に終了させ電源を切るオートシャットダウン機能を有しています。
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>>参考:「FU-03N」の定格及び質量・寸法
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3.開発技術のポイント |
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(1) |
ニッケル水素蓄電池の適用
現在使用されているニッケル水素蓄電池は、蓄電池の構造上繰り返し充放電とするサイクル仕様※1ですが、UPSへの適用にあたっては、突発の停電等に対して必要な時間のバックアップ対応ができるように、満充電後も継続して充電を行うトリクル使様※2とする必要があります。
しかし、常時充電状態にしておくと過充電となって寿命が1~2年と短くなることから、UPSへの適用は困難でした。
そこで、長寿命対策として、負極の水素吸蔵合金組成の適正化による表面酸化速度の抑制、および自己放電量に相当するエネルギー分だけ充電効率を加味して充電することを特徴とする間欠充電方法を考案しました。
具体的には、自己放電により容量が80%に低下した時には充電を開始し、容量が100%に回復した時に充電を終了させ、これを繰り返す方法です。
これらにより、蓄電池本来の実力である約7年の長寿命(25℃で使用した場合)を実現し、UPSへの適用を可能としました。
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(2) |
雷サージプロテクタ機能
電源線と通信線の対アース間にそれぞれ雷サージ防護素子を接続させ、さらに両方のアースを共通化することにより電源線および通信線の両方から雷サージが侵入した場合であっても、機器破壊の最大要因である電位差を抑制します。
また、電源線と通信線にはノイズフィルタを付加しており、パソコン等をはじめとするマルチメディア用端末の誤動作要因である伝導ノイズ対策も充実させて、システム信頼性の向上を図りました。
なお、通信線においてはLAN回線(10BASE-T)にも適応できます。
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(3) |
蓄電池寿命判定機能
蓄電池寿命判定は、充電時間と蓄電池電圧および蓄電池温度の監視によりその判定を行っています。
間欠充電の際に蓄電池容量の回復に伴う蓄電池電圧を監視し、規定時間内に良否基準電圧値まで上昇しない場合は不良と判断し警報を出力します。
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(4) |
オートシャットダウン機能
停電などの電源トラブル時に、動作中のパソコンを自動的に終了させて電源を切るオートシャットダウン機能を有しています。
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(5) |
スルーコンセント装備
バックアップコンセント2個のほかに、UPS電源スイッチに連動したスルーコンセントを2個装備しています。
多機種にわたるマルチメディア用端末機器において、パソコン本体とCRTのみをバックアップするといった、システムに最適な給電形態を可能としています。
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4.今後の予定 |
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本製品の発売は8月下旬を予定しています。<販売予定価格 29,800円(税別)>
今後は、パソコンをはじめとするマルチメディア機器のバックアップ用として、さらに適用範囲の拡大を図るため、大容量化に向けて研究開発を行っていく予定です。
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※1 |
サイクル仕様(サイクル充電)
蓄電池容量が100%まで回復した時点で充電を終了させ、負荷に蓄電池エネルギーを供給(放電)した後、再度容量を100%まで回復させる充電を繰り返す方式です。
身近な機器としては、携帯電話をはじめコードレスハンディ掃除機等がこの方式によるバックアップ蓄電池の用途となります。
この方式では、蓄電池を回復充電する間は負荷に供給する電源がなくなり、無瞬断電源を要求される情報通信への適応は給電信頼度上困難となります。
その対策として、2組の蓄電池により充放電を互いに繰り返す方式が考えられますが、大きさ、コスト、回路の複雑化が懸念されます。
なお、ニッケル水素蓄電池は電池の構造上、従来よりサイクル仕様による用途でした。
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※2 |
トリクル仕様(トリクル充電)
充電により蓄電池容量を100%回復させた後も継続して充電を行い、停電や充電器故障となった場合は蓄電池より蓄えられたエネルギーを負荷に供給(放電)する方式です。
この充電方式は、蓄電池、充電池、および負荷を接続したままの回路構成であり、蓄電池を充電しながら負荷へ給電するため、充電器が故障した場合であっても供給を途絶すことなく蓄電池に蓄えられたエネルギーが負荷へ供給されます。従って、瞬断が許されないUPS等情報通信電源のバックアップ用蓄電池はトリクル仕様として運用しています。
なお、満充電後の継続した充電は過充電状態であり、従来のニッケル水素蓄電池では必要以上の化学反応により蓄電池の劣化を著しく促進するといった欠点があることから、今回、ニッケル水素蓄電池の過充電特性を向上させるなどの改良と、過充電量の低減を目的とした間欠充電方式の採用によりトリクル仕様に適用させました。
なお、ニッケル水素蓄電池は電池の構造上、従来よりサイクル仕様による用途でした。
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