1.開発の背景 |
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従来、携帯型エンジン発電機は、騒音が大きく、有害なガスを排出することから、防災ネットワーク、仮設電話等の非常災害時の電源や一般家庭、事務所等における情報通信用端末機器の予備電源、住宅周辺での停電作業用電源としての使用が困難でした。
NTT入出力システム研究所では、可搬形の小規模通信装置のバックアップ電源として、水素と酸素の化学反応で発電する燃料電池を利用した携帯型の発電システムを平成7年10月に開発しましたが、NTTの電力設備などの開発、設計・保守を実施している当社では、その成果を受け、より一層の操作性・信頼性の向上や経済化を図るため、リン酸型燃料電池システムの試作並びにフィールドテストによる評価を実施し、あわせて機能改善の検討を進めてきました。
この度、その評価結果、機能改善の検討に基づき、小型・軽量化、低コスト化を実現した固体高分子型燃料電池を採用したポータブル燃料電池システムを開発しました。 |
2.装置特徴 |
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(1) |
固体高分子型燃料電池の採用による小型・軽量化、低コスト化の実現
小型化:約40%減 軽量化:約39%減 低コスト化:約60%減
(従来のリン酸型燃料電池1kWシステム比)
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(2) |
クリーン&静音を実現
燃料として水素と空気中の酸素を電気化学反応により発電するため、反応生成物は水のみ。
排気は水分を含んだ温風だけなので、クリーンです。運転時の騒音も40dB以下です。
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(3) |
水素ボンベの交換で長時間連続運転を実現
搭載の水素ボンベ(2本並列接続)で、1kWで約3時間の発電が可能です。
また、運転しながら水素ボンベの交換が可能なため、さらに長時間連続運転が可能です。
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(4) |
起動時間を短縮
固体高分子型燃料電池の動作温度が約80℃と低いため(従来のリン酸型燃料電池は約120℃で動作)、従来のリン酸型燃料電池では約5~10分程度必要であった起動時間を1分程度に短短縮しました。
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(5) |
安全性向上の実現
本体には、水素漏洩センサ、地震等による衝撃センサを搭載しているため、不慮の水素漏れ、衝撃、振動、換気FANが停止した場合など、万一の時、それらのセンサにより自動的に水素を遮断して運転停止します。
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>>主要諸元
>>システムの構成
>>(参考)停電時等使用例
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3. 今後の予定 |
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当社は、太陽光発電システムや風力発電システムなどを利用したクリーンエネルギー施策の積極的な展開に取り組んでいます。
このポータブル燃料電池システムについても、クリーンな電源として、非常災害時の電源、予備用電源や停電作業時の電源としての活用を積極的に推進し、クリーンエネルギーシステムに関するコンサルティングから開発、設計・施工、保守、維持管理にいたるまでのトータルエンジニアリングを推進しています。
今後は、システム容量の拡大およびUPS(無停電源装置)と連系し、情報通信システムの信頼性をさらに高めるバックアップ電源システムの検討を進めていく予定です。
なお、本ポータブル燃料電池システムの発売は10月上旬を予定しています。
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固体高分子型燃料電池の特徴
出力密度が高く小型・軽量化に有利であり、電解質が固体であることから逸失がない。また、差圧に強く加圧制御が容易で、構造が簡単で電解質の腐食がないため、耐久性の面で有利です。さらに、動作温度が低く、部品材質選択や起動停止特性の面で有利などの特徴があります。
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