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改正FIT法で変わる、太陽光発電の新たな運用法とは

2017年7月3日

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 再生可能エネルギーの普及を目指して設けられた「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」が、今年4月に改正されました。これまでの売電制度が変更されることにより、太陽光発電の市場は、どのように変わっていくのでしょうか?

 今回は、これからの太陽光発電をうらなう上で重要な鍵を握る「自家消費」「ZEB」「蓄電池」「EV・PHV」というキーワードをもとに、ビジネスにおいて太陽光発電をどのように運用していくべきかを考察します。

改正FIT法で太陽光発電市場はどうなるのか!?

 FIT制度は2012(平成24)年7月に、再生可能エネルギーの普及を目指して、スタートしました。この制度は再生可能エネルギーを用いて発電された電気を、一定期間、一定価格で電気事業者が買い取ることを義務付けたものです。簡単にいえば、太陽光発電の売電価格を高く設定し、太陽光発電を導入する際の大きなモチベーションとするための制度です。

 このFIT制度ですが、2017(平成29)年4月から「改正FIT法」が施行され、従来から多くの変更が加えられました。

 変更点は大きく2点あり、1つ目が太陽光発電の建設に必要な認定の厳格化、2つ目が点検・保守の強化です。前者は建設の認定を受けながらも、実際には未稼働の案件が多かったこと、後者は景観や安全上のトラブルが各地で発生したことから、強化されました。

 こうした改正に対応するためには、改正FIT法の内容に加えて、今後の動静についてしっかりと把握しておく必要があります。

新たな運用スタイルとして注目を集める『自家消費』

 このFIT制度の改正により、今後注目を集めそうな太陽光発電の用途が「自家消費」です。

 もともと日本の太陽光発電は、売電目的の導入が主流でした。2009年以降に住宅・家庭用で比較的高い売電料金が設定され、2012年のFIT制度導入によって産業・事業用の売電価格も優遇されました。

 こうしたFIT制度に支えられ、太陽光発電市場は活況を迎えます。市場への参入が相次いだことで技術革新が促進されたことや、量産効果が見込めるようになったため、太陽光発電システムの構築価格は年々低減していきました。これにより、自家消費でも、太陽光発電システムの構築に掛かった費用を回収しやすい環境ができつつあるため、新たな運用スタイルとして注目を集めるようになりました。

 政府も太陽光発電の「自家消費モデルの確立」を目指しています。昨年10月に出された経済産業省の「太陽光発電競争力強化研究会」の報告書では、自家消費モデルを拡大するために、適切な環境整備やFIT制度以外のインセンティブ設定が必要だと指摘。今後も、さまざまな支援策が設けられることが予想されます。

 すでに自家消費の先進的な事例も登場しています。静岡県浜松市は、「浜松版スマートシティ」の実現を目標に掲げており、NTTファシリティーズなど民間8社と共同で出資し、2015(平成27)年10月に新電力「株式会社浜松新電力」を設立。浜松新電力は、太陽光発電と廃棄物発電により、顧客に販売する電力を、卸電力市場などから調達することなく、自社の太陽光発電所と清掃工場での廃棄物発電から調達する「地産エネルギー比率100%」をほぼ達成しています。

自家消費を推進する『自然と共生する建物』とは

 現在、こうした太陽光発電の自家消費を促進する新技術が、次々と生まれてます。その1つが、自然と共生する建物「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」です。

 ZEBは、建築・設備の省エネ性能向上や自然エネルギーの活用などにより、年間一次エネルギー消費量がゼロ以下となる環境に優しい建築物のこと。ZEBを実現することで、企業は光熱費の削減や、エネルギーの自立化によるBCP性能の向上、CSR視点での企業価値の向上といった効果が見込めます。

 そのポイントは2つあり、1つは、高断熱化、日射遮蔽、照明や空調設備の最適化、ICTの活用などさまざまな手法によって省エネルギーを実現すること。そして、もう1つのポイントは、太陽光発電などによって再生可能エネルギーを生み出し、その分で消費エネルギーを相殺することです。

 ZEBの導入を推進するために、現在国によるさまざまな支援策が進められています。その中の1つに「ZEBプランナー」登録制度があります。これは、ZEBに関する知見を持つ「ZEBプランナー」が、ZEBの実現に向け、「設計」「設計施工」「コンサル」といった支援を行うもの。ZEBの導入を希望する企業にとって、これは心強い制度になります。

 こうした支援策にも支えられ、ZEBの市場規模は、2030 年度に7,059 億円まで拡大すると予測されています*。自然と共生するZEBの進展とともに、太陽光発電の普及拡大も期待されています。
*出典:矢野経済研究所『ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)市場に関する調査結果 2014』

改正FIT法で生活の身近なところにも影響が?

 ZEBが普及するためには、太陽光発電と「蓄電池」を組み合わせることも重要です。蓄電池があれば、太陽光発電で発電した電気を貯められるため、たとえば昼間に電気を貯めて、その電気を夜間に使用することが可能です。また、緊急時や停電時にも使用できるので、災害などのリスクに備えられるメリットもあります。

 蓄電池の整備が進むことで、普及に弾みがつきそうなのが「EV・PHV」です。EVは、ガソリンを使わずに電動モーターで駆動する「電気自動車」、PHVは、外部電源から充電できる「ハイブリッド自動車」のことで、いずれも蓄電池を搭載しています。

 EV・PHVの蓄電池にも、専用の充電設備を使うことで、太陽光発電で作った電気が蓄えられます。EV・PHVに貯めておいた電気は、自家消費の電源としても、災害時の電源としても使用可能です。

 このように、FIT制度の改正は、太陽光発電が「自家消費型」へと変化することによって、「ZEB」や「蓄電池」の普及を促進するだけでなく、私たちにとって身近になるであろう「EV」「PHV」にも影響を及ぼします。

今後の太陽光発電の運用の鍵を握るものとは?

 太陽光発電市場はいま、転換期を迎えています。今年4月の改正FIT法については序盤で触れた通りですが、今から2年後の2019年には、2009年にスタートした10kW未満の住宅用の買取期間が終了します。買取期間が終了すると、電力会社は決まった価格での買取義務がなくなるので、売電価格が低下する可能性があります。

 今後の太陽光発電を考える上で、注目を集めている「自家消費」を軸に考えてみると、今回取り上げたEV・PHVやZEBといった技術を活用することで、太陽光発電を経済的かつ長期的に運用していくことは十分に可能です。市場はまたまだ成長を続ける余地があります。

 ただし、そのためには必要なことがあります。

 それは太陽光発電システムの保守・管理を見直すことです。改正FIT法でも太陽光発電のメンテナンスが義務化されており、保守・管理の重要性がこれまで以上に高まっています。

 また、FIT制度の終了に備え、経済性を考慮した効率的な保守・管理も欠かせません。さらに信頼性も加えた運用を実現するためには、太陽光発電に関する豊富なノウハウと実績を持つ業者のサポートを受けることも重要になるでしょう。

 FIT制度の改正とともに新たなステージへと入った日本の太陽光発電。その輝かしい明日を築くための鍵の1つを、効率性と信用性を伴った保守・管理が握っているといえるのです。

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