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2022年度スタート、電力の安定供給を支える「配電事業制度」とは

2021年10月6日

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 2022年度からスタートする「配電事業制度」は、電力供給の安定性を支えるだけでなく、街づくりなど幅広い分野に影響を与えると考えられています。その影響は、企業の災害対策や脱炭素化といった活動にも及びます。今回は配電事業制度の動向とそのインパクトについて解説します。

配電事業への新規参入を認める制度が2022年度スタート

 配電事業制度とは「配電事業」への新規参入を認める制度です。2020年6月19日に「エネルギー供給強靭化法」が閣議決定されたことを受け、2022年度から実施される予定となっています。

 日本の電力システムは、電力をつくる「発電」、それを消費者へと送る「送配電」、消費者へ販売する「小売」という部門から構成されています。以前は、3つの部門すべてを地域ごとにある電力会社が運用する方式をとってきました。

 この方式では、全国各地に電力を安定供給するという目的を達成しましたが、競争力が働かず、コストの削減が進みにくいという課題を抱えていました。そのため、電力システムの自由化を進める改革が行われてきました。

 1995年から続く電力システム自由化の結果、発電部門は原則参入自由となり、小売部門も2016年に全面自由化が実現しています。2020年には、発電事業者が送配電事業者や小売事業を営むことを原則禁止する「発送電分離」が実施されました。この原則に基づいて、大手電力会社は送配電事業を営む部門を別会社化し、事業の中立化を図っています。

 配電事業制度は、発送電分離よりもさらに一歩進み、大手電力会社が大部分を運営する送配電網のうち、「配電網」の運用ライセンスを新規参入事業者に与えるというものです。

 送配電網は、電力を発電所から変電所に送るための「送電網」と、変電所から企業や家庭に送るための「配電網」から構成されています。このうち、大手電力会社が保有する配電網を新規参入事業者が借りたり、購入できるようにすることで、電力のコスト低減や安定的な供給を図るのが制度の狙いです。

きっかけは自然災害による大型停電への対策

 日本の電力システムは安定性の面で、世界でも高い評価を受けています。にもかかわらず配電事業制度を導入し、さらなる安定的な電力供給に取り組む背景には、近年多発するようになった自然災害による停電被害の存在があります。

 配電事業制度の議論がはじまった直接的なきっかけは、自然災害による停電被害です。2018年に発生した北海道胆振東部地震では、地震の影響によって北海道全域にわたる大規模停電、いわゆる「ブラックアウト」が日本で初めて発生。2019年には、大型の台風15号が上陸し、関東広域で約93万戸の停電が発生。被害の大きかった千葉県内では送配電設備の損傷によって停電が長期化しました。

 自然災害による停電への対策として注目されているのが、分散型電源を活用した事例です。2019年の台風15号の際には、地域内全体が停電に陥ったある自治体が、再生可能エネルギーやコージェネレーションシステムを活用し、早期復旧に貢献しました。

 こうした状況を踏まえ、資源エネルギー庁の「持続可能な電力システム構築小委員会」で電力ネットワークの強靭化について議論が行われるようになり、委員会では、地域コミュニティで小規模の発電設備を設置して独立運用を行う「マイクログリッド」という仕組みが注目されました。

 大型発電所で発電された電力を長距離の送電を行って供給する仕組みでは、北海道でのブラックアウトのように、自然災害によって広範囲が停電してしまうリスクがありますが、マイクログリッドを導入し、地域ごとに分散型電源を設置すると、このリスクを低減することが可能です。加えて、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電といった再生可能エネルギーをマイクログリッドと組み合わせた「エネルギーの地産地消」のニーズが高まっていることから、それぞれの地域コミュニティで配電網を活用できる配電事業制度の導入が決定されたのです。

配電事業制度が街づくりも変える

 配電事業制度は電力業界の変革にとどまらず、街づくりといった幅広い分野に影響を与えると考えられています。

 配電事業制度で最も期待されているのは、前述の災害対策です。大規模災害の時に大手電力会社が運営する送電網でトラブルが発生して停電が長期化する場合、地域内の電力供給を止めないよう、配電網を切り離してマイクログリッドとして運用します。先に触れた台風15号の例では、停電の復旧までに2週間以上要した地域もありました。もしその期間、地域の企業活動が停止してしまえば、被害は計り知れません。

 また、配電網事業制度で電力分野への新規参入が活発になれば、企業や家庭がさまざまな電源の選択肢から方針や環境に合った電源を選択できるようになります。さらに今後、需要と供給のマッチングが課題となるものの、高度な配電網管理が技術の進展によって最適化されれば、天候や時間帯に発電量が左右される太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを導入しやすくなるでしょう。

 そして、配電事業制度を活用した地域の新電力会社がエネルギーの地産地消の取り組みを加速させることも考えられます。地域新電力によって再生可能エネルギーで発電した「クリーンな電力」が提供することにより、地元企業のカーボンニュートラル実現や地域への環境貢献にもつながります。エネルギーの地産地消を地域の産業育成と雇用創出につなげる、新しいかたちの街づくりが全国で進むかもしれません。

 配電事業制度は、マイクログリッドを軸にした電力の安定供給という面だけではなく、地域の自然災害対策をはじめ、幅広い分野に影響を与える可能性があり、これまで特定の事業者が行っていた分野に他業種が参入することで、配電網管理に新たなイノベーションが創出されることも期待されています。2022年度の実施に向け、現在も制度設計について議論が続いているところですので、その動向に注目してみてはいかがでしょうか。

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