世界の潮流に歩を合わせるように、日本でも「再生可能エネルギー」の普及が進んでいます。前回は、そうした背景を50万年前にまでさかのぼって紐解きました。今回は、再生可能エネルギーの実態について明らかにしていきます。ひと口に再生可能エネルギーといっても、多種多様なものがあります。そこで、代表的な「太陽光発電」「水力発電」「風力発電」「バイオマス発電」「熱発電」の今とこれからを掘り下げていきます。
ベストミックス(電源構成)の20%超を再生可能エネルギーに
政府が2015年7月に決定した「長期エネルギー需給見通し」では、日本における2030年に想定されるエネルギーのベストミックス(電源構成)が示されています。
そこでは、エネルギーの自給率向上やCO2排出抑制を目的に、再生可能エネルギーの利用を拡大することを明記。政府の目標では、総発電電力量のうち、2015年は12.2%だった再生可能エネルギーを、2030年には22~24%まで拡大することが掲げられています。
では、再生可能エネルギーの現状と動向はどうなっているのでしょうか、その実態をみていきましょう。
太陽光発電~買取価格の低下により売電から自家消費へ~
太陽光発電は、ここ数年で最も普及が進んだ再生可能エネルギーです。
2012年7月にスタートした固定価格買取制度(FIT)は、電力の買い取り価格を長期間にわたって保証することで、太陽光発電の導入量を飛躍的に増やしました。
FITスタート直後は、発電効率や敷地面積あたりの年間発電量を向上させ、いかに売電量を増やすかを重視した運用がされていました。以前のコラムでも紹介した通り、2017年4月には改正FIT法の施行や、買取価格が低下したことなどから、運用方法も従来の売電から自家消費へと様変わりしようとしています。
風力発電~立地の足かせを解決するカギは「洋上風力」~
風力発電は、風の運動エネルギーによって風車を回し、電気エネルギーに変換します。
その特徴は、高効率で電気エネルギーに変換できる点にあります。一度風車を作ってしまえば長期間発電できるため、最近では急速に導入が進んでいます。
一方で課題もあります。風力発電に適しているのは風力が安定した平地ですが、日本には平地が少ないため出力が不安定になりがちです。さらに、風車が回る時に独特の低い音を発生させるため、周辺地域へ考慮する必要があります。
そうした中で、島国である日本は、強く安定した風が吹く海に四方を囲まれています。今後は、「洋上風力」を活用した風力発電の普及が模索されています。
水力発電~建設の難しいダムから中小規模タイプへ~
水力発電は、高所から低所へ勢いよく水を流し、そこに設置した発電用ポンプ水車の回転で発電機を動かして発電を行います。
水力発電には、いくつかの種類があります。代表的なものには、梅雨や台風などの際にダムへ水を貯め、夏の渇水期に放流することで大規模な発電を行う「貯水池式」。調整池の水量を調整しながら、1日単位で細かく発電量を調整することができる「調整池式」。それに、河川や農業用水路などに発電用水車を設置する「流れ込み式」です。
日本では貯水池式が重要なエネルギー供給源となってきましたが、すでに全国に数多くのダムが建設されていることもあり、今後の建設は難しい状況にあります。したがって、これからは、流れ込み式や調整池式といった中小規模タイプの水力発電に期待がかかっています。
バイオマス発電~調達コストという課題を解決する廃棄物の活用~
バイオマスとは、動植物などから生まれた生物資源の総称で、これを利用した発電をバイオマス発電と呼びます。
バイオマス発電は、エネルギーを作る際に原料を燃やしてもCO2を増やさないという「カーボンニュートラル」な発電方法です。バイオマス発電もC02を 排出しますが、その原料となる植物の成長過程で光合成によって大気中のC02を吸収するので、C02はプラスマイナスでゼロになります。
バイオマスの原料は多岐にわたりますが、一般的には発生源よって、資源作物(さとうきび・とうもろこしなどのでんぷん・糖質、菜種などの油脂)、未利用バイオマス(稲わら、麦わら、もみ殻、間伐材など)、廃棄物系バイオマス(家畜排せつ物、食品廃棄物、建築廃材、製材残材、下水汚泥など)に分類されます。
バイオマス発電には、国内における資源作物や未利用バイオマスの調達コストが高いという課題がありました。その中で、日本では調達しやすい廃棄物系バイオマスの利用が進んでいます。加えて廃棄物系には、環境負荷を軽減するという特長もあります。海外の例になりますが、インドネシアやマレーシアでは、未活用のまま廃棄され、大気汚染などの一因にもなっているパーム油をバイオマス発電に有効活用したという事例もあります。
バイオマス発電は廃棄物系を中心に成長を続けています。2015年のとある調査によると、バイオマス由来の電力市場は、2014年度は1,789億円の見込みでしたが、2020年度には3,567億円まで拡大すると予測されています。
熱発電~家電や自動車の振動を電気に変える技術も登場~
熱発電で有名なのは、地球内部の熱エネルギーを利用した「地熱発電」です。地下1,000~3,000mにある地熱貯留層と呼ばれる場所まで井戸を掘り、熱水や蒸気を汲みだして、その熱エネルギーを活用して発電します。
総発電電力量はまだ少ないものの、枯渇する心配がなく、天候にも左右されません。ただし、建設にはかなりの時間がかかり、採掘しても必ず熱水や温水が出るとは限らないためリスクも伴います。
熱エネルギーの中では、家電製品の熱や自動車走行がもたらす振動などを電気に変換し、モバイル機器などに利用する「エネルギーハーベスティング」が注目を集めています。
このように、再生可能エネルギーの導入はすでに進んでおり、その普及が加速していくことは確実です。そうした潮流に乗り、多種多様にある発電方法それぞれで技術革新や制度改善が起こっていくことでしょう。再生可能エネルギーの時代が今まさに幕を開けようとしているのです。
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