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「エネルギー基本計画」から読み解く、カーボンニュートラル実現への戦略

2022年1月5日

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 日本のエネルギー政策の指針や計画をまとめた「エネルギー基本計画」。2021年10月22日に閣議決定された第6次の計画では、基本方針として気候変動への対応とエネルギー需給構造に関する課題の克服が掲げられています。今回の第6次エネルギー基本計画の内容をもとに、日本が示すエネルギー戦略・計画について、再生可能エネルギーを中心に解説します。

カーボンニュートラル実現と、温室効果ガス排出量削減への取り組み

 「エネルギー基本計画」は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すために、エネルギー政策基本法に基づいて政府が策定するものです。2003年に初めて策定され、世界のエネルギー情勢、環境保護機運、国内世論などを視野に入れながら、3~4年ごとに改定されてきました。

 具体的には、温室効果ガス削減目標をどうするのか、発電に使うエネルギー源の組み合わせである「エネルギーミックス」をどうするのか、そのために何をするのかなどが示されています。

 今回の「第6次エネルギー基本計画」では、「2050年カーボンニュートラル」と、「温室効果ガスの46%削減」(2030年度目標、2013年度比)の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すことが、大きなテーマに掲げられています。

 この背景には、2018年の「第5次エネルギー基本計画」策定時との情勢の変化、とくに気候変動問題への関心の高まりが挙げられます。先ごろイギリス・スコットランドのグラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に象徴されるように、各国の政府や民間が気候変動への強い危機感を共有し、対策を急ぐようになっています。

 日本政府もこうした動きの中で、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を表明しました。世界的な脱炭素化に向けた動きの中で、国際的なルール形成を主導することや、これまで培ってきた技術、新たなイノベーションにより国際的な競争力を高めることも求められています。

 また、それに伴って日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服も、大きなテーマになりつつあります。気候変動対策を進める中でも、エネルギーの安定的な供給体制の確保や、エネルギーコストの低減に向けた取り組みを進めなければなりません。

2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題

 2050年カーボンニュートラル実現のために重要なのは、温室効果ガス排出量の8割以上を占めるエネルギー分野の取り組みです。これについては、産業界、消費者、政府などが総力を挙げて取り組む必要があります。

 電力部門では、再生可能エネルギーなどの脱炭素電源の活用と、水素・アンモニア発電やCCUS/カーボンリサイクルによる炭素貯蔵・再利用を前提とした火力発電などのイノベーションを追求することが重要だとしています。

 ただし、これには課題も多くあります。水素・アンモニアを燃料として利用する技術の研究開発に、日本は多額の補助を行っています。初めは石炭やガスとの混焼によって、ゆくゆくは水素・アンモニアだけを燃やしてCO2排出の削減を目指す計画です。しかし、水素・アンモニアのほとんどは、東南アジアや北米、ロシア、オーストラリアなどで天然ガスや石炭から製造されるため、どの程度CO2削減に貢献するのか疑問視する見方もあります。

 CCUSとはCO2を回収・有効利用・貯留する取り組みのことで、カーボンリサイクルとは文字通りCO2をリサイクルする取り組みのことです。こうした方法によって炭素を貯蔵・再利用し、CO2排出量を削減しようという狙いですが、技術やコストの面で課題は多く、実現の見通しは不透明です。

 こうした中で、第6次エネルギー基本計画では、2030年におけるエネルギー需給の見通しとして、再エネ比率を36%~38%(第5次比で18~20ポイント増)にするという目標が掲げられています。それによって、温室効果ガスの46%削減が可能になるとしています。

2050年カーボンニュートラル実現に向けてますます重要になる再生可能エネルギー

 2050年カーボンニュートラル実現に向けて大きな期待がかかるのが、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどといった再生可能エネルギーです。温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギーの安定的な供給体制確保にも寄与できる重要な国産のエネルギー源です。

 第6次エネルギー基本計画の中でも、再生可能エネルギーについては、「主力電源化を徹底し、最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す」とうたわれています。

 とくに太陽光発電への期待は大きいものがあります。第6次エネルギー基本計画では、太陽光発電の目標については、従来想定していた「電源比率7%・設備容量64GW」からほぼ2倍に引き上げられ、「14~16%・103.5G~117.6GW」に上積みされました。現時点の導入量である約60GWから、ほぼ倍増となる目標が掲げられました。

 一方、導入拡大に向けては「地域と共生可能な形での適地確保」が課題になります。荒廃農地の活用など地域共生型で適地を確保しなければいけません。また、さらなる「コスト低減に向けた取り組み」も重要です。

 近年では、陸上ではなく海上に発電用の風車を設置する「洋上風力発電」にも注目が集まっています。導入が進んでいるヨーロッパと日本では気象や地形といった自然条件が異なることから、事例をそのまま適用することは難しく、実用化に向けての課題は少なくありませんが、海に囲まれた日本で発電用地を確保する手段として期待されています。

 今回改訂された新しいエネルギー基本計画は、「2050年カーボンニュートラル」の影響を強く受けた内容となっています。今回の発表により、脱炭素の取り組みがいっそう推進されることでしょう。

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