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ビルのエネルギー消費を可視化するBEMSとは

2018年3月7日

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 地球温暖化の進行とともに省エネ意識が高まる中で、限られたエネルギーを最適に管理するツールとして「エネルギーマネジメントシステム(EMS;Energy Management System)」に注目が集まっています。すでに、企業や家庭、地域など様々な分野で利用が広がっており、オフィスビルや商業ビルにおいてもBEMS(Building Energy Management System)という名で導入が進んでいます。今回は、BEMSを中心に、その具体的メリットや導入に役立つ情報、最新のトレンドなどを紹介します。

政府のエネルギー戦略にも欠かせない「EMS」とは

 EMSという言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは「エネルギーマネジメントシステム」の略称で、ICTの活用などによりエネルギー消費量を見える化し、効率よく管理・運用するものです。

 地球温暖化などを背景にした省エネ意識の高まりとともに、EMSの注目度が高まっています。日本では、政府が環境負荷の軽減、エネルギー資源の有効活用といった観点から、新たなエネルギーシステムの構築に着手。そこでは、再生可能エネルギーの有効活用やエネルギーの供給状況に応じて消費パターンを変化させることによって、地域で賢く電力を使う「スマートコミュニティ」の実現が目標の1つとして掲げられています。EMSはそれに大きく貢献するシステムでもあります。

 EMSはすでに多くの分野で活用され、その用途に応じてさまざまな種類があります。代表的なEMSには、一般ビルや商業ビルなどを対象としたBEMS、工場のエネルギー管理システムであるFEMS(Factory Energy Management System)、家庭を対象としたHEMS(Home Energy Management System)などがあります。さらに、地域のエネルギー管理システムのものとしてCEMS(Community Energy Management System)という技術もあります。こうした分野別の具体的な商品やソリューションを総称してxEMS(xEnergy Management System)と呼びます。

「BEMS」でさらに一歩先に進んだエネルギー管理が可能に

 事務所やビル、店舗などはエネルギー消費割合が大きいことで知られています。そのため、一般ビルや商業ビルなどを対象としたBAS(Building Automation System)やBEMSが持つ省エネルギー効果への期待が高まっています。

 従来、多くのビルでは、BASというシステムを利用して、空調、電気、防災や防犯に関わる設備などを制御してきました。BASは監視システムで、設備の運転状況やエネルギー消費に関するデータを収集。それをもとに、設備の自動制御や故障検知を行い、ビルの省エネ化や運用面での効率化を促進します。

 中央監視システムとも呼ばれるBASは、建物の設備からエネルギーまでを全てをカバーする大規模なシステムです。そのため、イニシャルコストも高くなりがちで、その導入は大規模なビルを中心に進みました。

 一方、BEMSは、エネルギーの見える化に特化したシステムと定義することができます。建物内に取り付けられたセンサーから、電気やガス、熱量などのデータを収集。それを記録・保存するとともに、統計的な管理や分析がしやすいようにグラフ化します。BASと比べると機能が特化されているため、導入に関わる費用も抑えることができます。

“見える化”がビルのエネルギー管理を変える

 BEMSの最大の特徴は、収集したデータを日・月・年単位で集計してグラフ形式し、解析するといった“見える化”にあります。

 それによって、空調機、照明、エレベーターなどの設備が、いつ、どれぐらい電気を使っているのかが明らかになり、ビル管理者は、データにもとづいたエネルギーの予算管理が行えます。さらに、エネルギー管理に対する計画、実行、評価、改善というPDCAサイクルも効果的に回せるようになります。

 例えば、人の少ない時間帯は点灯している照明の台数を減らすといった調整もやりやすくなりますし、エネルギーの削減目標を社員全員で共有して取り組むといったこともできるようになります。

 その点、BEMSは単にエネルギー消費を見える化するだけでなく、オフィスに設置されたセンサーなどを通して得た情報から、適切な室温の設定や点灯・消灯のタイミングを考えることで、快適性を確保しながら効果的な省エネを実現することもできます。

 BEMSのメリットはまだあります。ビル内の設備のライフサイクルコスト(LCC)の低減は、ビルの運用・保守にあたって重要なテーマになります。BEMSでは設備などに関するデータを評価・分析することで、設備の現状を正確に把握できるため、エネルギー効率の落ちた老朽化した設備を見つけ出し、最適な更新が可能になります。それによって、LCCの削減が実現します。

BEMSからスマートコミュニティへと続く道

 BEMSの導入は着実に広がっています。

 2017年度に実施された「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」のように、BEMS導入促進に向けた補助金制度などもあり、導入しやすい環境がますます整いつつあるようです。

 導入に向けた地ならしの進むBEMSですが、2030年に向けて国の後押しもあり着実に普及していきそうです。というのも、日本政府は、2030年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル=年間の1次エネルギー消費量がネットでゼロとなる建築物)を実現する政策目標を掲げています。そのZEBを実現するためにもBEMSの導入が欠かせないのです。

 BEMSの導入が進むことで、デマンドレスポンス(需給応答)も可能になります。ビルのエネルギーが見える化されることにより、その時々の使用状況を瞬時に把握して、需要に応じた最適なエネルギー供給が実現するわけです。こうした効果をCEMSによって地域全体に拡大していくことで、スマートコミュニティが実現します。

 今回見てきたように、EMSによってビルのエネルギー事情は大きく変わりつつあります。EMSは、コスト削減といった導入企業への恩恵だけではなく、脱炭素といった社会への貢献をもたらす存在です。

 次回は、EMSが社会に与える影響について解説します。

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