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ビジネスコラム

ゴールの見えない時代に重要視される企業の「アジリティ」

2022年3月30日

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 国際社会における緊張や、いまだ収束しない新型コロナウイルス感染症など、社会情勢における不確実性が高まりつつあります。将来の予測が困難になる中で、企業はどのように成長の芽を育てていけばよいのでしょうか。ひとつのアプローチとして、変化に素早く対応する「アジリティ」に注目が集まっています。ここでは、企業におけるアジリティの重要性について考えます。

アジリティの核心は顧客とのコミュニケーション

「Agility(アジリティ)」は、日本語に訳すと「俊敏性」「機敏さ」「素早さ」といった意味になります。近年、企業経営の分野でも使われるようになっており、その場合は、「環境の変化に素早く対応する力」といった意味で使われています。

 ビジネスシーンでは、「スピード」というアジリティに似た言葉もよく使われています。どちらも企業経営のキーワードですが、示す意味は異なります。スピードは、明確なゴールにどれだけ短い時間でたどりつけるか、また、それを達成できるかになります。一方、アジリティは、明確なゴールが設定できない状況において柔軟に対応することを言います。

 企業経営でも使われるようになったアジリティですが、もともとはソフトウェア開発の現場で生み出された考え方です。ソフトウェア開発では、アジリティを重視した「アジャイル(agile)開発」が普及しています。その開発を担ったエンジニアたちにより、2001年にアジャイル開発のコンセプトをまとめた「アジャイルソフトウェア開発宣言」が発表されました。そこには、「計画に従うことよりも変化への対応を」という考え方が指針の一つとして記され、さまざまな環境変化に対応することが重要であるとされています。

 企業活動を取り巻く環境には、社会情勢やテクノロジー、マーケットなどがあります。なかでも特に重要なのが、顧客やユーザーとの関係性です。企業にとっての「アジリティ」とは、顧客やユーザーとのコミュニケーションを欠かさず、その要望や環境変化に対応することを意味しています。また、それらを継続していくことによって、順応度合いを高め、素早く対応する力を生み出す源にもなるとも言えます。

 このように、現在の企業にとって「アジリティ」は、不確実性の高い未来において着実に事業を継続していくための重要な要素になると考えられています。

小さく、素早く動くことが重要

 現在のビジネスを取り巻く環境は日々変化しており、かつ予測困難な要素が多く、先行きが不透明だと言われています。綿密に市場分析を行い、時間をかけて全体計画・戦略を描いていく事業展開では、その間に顧客やユーザーをはじめとする市場環境が変化してしまうことが考えられます。中長期的な目標が必要であることは変わりませんが、当初想定していたことが途中で変容することは十分想定できます。また、現在継続中の事業でも、環境の変化に合わせた柔軟な対応が必要です。

 そういった大小さまざまな変化に対して有効なのが、「アジリティ」の実践です。仮説をもとに小さなプロジェクトを立ち上げ、トライ&エラーを重ねながら素早く対応していくことで、満足度やユーザビリティを高め、さらにはビジネスの成長を促すことが可能と考えられています。アジリティの実践で事業価値を高めるためには、この「小さく、素早く動く」ことが重要になります。

「小さく、素早く動く」ことのメリットとして、プロジェクトの規模が小さいために事業の優先順位を明確にすることができる点があります。優先順位が明確だと判断が迅速に行えるようになり、ビジネスチャンスを逃しにくくなります。また、顧客の要望や市場の変化に応じた変更もしやすくなるでしょう。

 このようにスピーディーにビジネスを展開し、急な変化や要望に対応することが、顧客満足度を高め、事業の継続を支えることにつながり、結果的には、企業にとっての「成長の芽」を育てることができるのです。

アジリティを高めてさまざまな変化に対応

 こうした社会や市場における環境の変化へ素早い対応力を身に付けるために、多くの企業では、さまざまな取り組みを行っています。

 ある大手機器メーカーでは、自社製品の買い換えサイクルが平均10年以上と長いため、ユーザーとの接点が少ないという課題がありました。そのため、「アジリティ」を高める観点から、ユーザーと直接オンラインでつながる場を設けました。

 それにより、ユーザーのニーズや要望を直接受け取ることができるようになり、それらを活用したマーケティング施策やユーザー参加型の商品開発を実現しています。また、開発方針にも「アジャイル型」を取り入れ、要望や意見を反映しながらの製品開発を試みています。これら一連の流れは、企業が変化に対して迅速に対応する体制を整えることで、アジリティを高めた好例と言えるでしょう。

 また、ある小売り企業では、「教育こそ最大の福利厚生」を掲げて、従業員一人ひとりのキャリアに配慮した育成プログラムを作成し、アジリティを高めています。同プログラムでは、さまざまな職種や職場での体験や経験を重ねてもらうことで、従業員それぞれの個性を生かし、自律的な行動と充足感を持って働ける職場づくりを推進しています。こうした取り組みの積み重ねによって、従業員が来客のニーズや要望の変化に対して迅速に対応できる「アジリティ」を高め、小売業ながらもコロナ禍から受ける影響を最小限に抑え、業績の維持に貢献できているといいます。

 将来の予測がますます困難になる今、変化に対して迅速に判断・対応できるよう、組織のアジリティを高める重要性が増してきています。さまざまな外部環境の変化に対応できるかどうか、いま一度考えてみてはいかがでしょうか。

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