ICTと生活の密接さが増す中で、「デジタルトランスフォーメーション」の時代が幕を開けようとしています。しかし、その到来はICTインフラの進化がなければありえないといいます。ICTの普及とともに、データの流通量が増大し、それらを管理するデータセンターのキャパシティが限界を迎えようとしているのです。デジタルトランスフォーメーションとそれを支えるデータセンターの現状を探ります。
デジタルトランスフォーメーションが生活やビジネスを変えた
デジタルトランスフォーメーションは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が提唱したとされています。
振り返ってみると、ここ数十年の間に私たちの生活は驚くべきスピードで ICT化が進行しました。
引き金となったのはインターネットで、その登場によって情報を入手するコストが著しく下がりました。さらに、スマートフォンをはじめとするモバイル端末の普及によって、インターネットはいつでもどこでも利用できるようになっています。
それによって、新しい行動パターンが生まれるようになりました。例えば、お店で買い物をする時にその場で他店の価格を調べる、外食する前に評価サイトで好みのお店を探すといったように、まずはインターネットで情報を検索・収集してから行動に移すという行動パターンが可能になったのです。
情報収集という点では、SNSも大きな影響力を持つようになっています。SNSのユーザーが増えてくると、そこでの口コミが消費行動を左右するようになりました。
企業側からすると、インターネットやモバイル、SNSといった新たな接点が生まれたことになります。こうした接点から得た膨大なデータ、いわゆるビッグデータをマーケティング領域で活用しながら、デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業も少なくありません。
データ量は約40兆ギガバイトを超えて
ICTが身近になる中で、IoTやAIといった技術の登場も重なり、デジタルデータの流通量は飛躍的に増え続けています。
2013年末の時点で、既に日本のインターネット利用者数は1億44万人で、人口普及率は82.8%に達していました。世界を見渡すと、特に新興国でインターネットの普及が進んでおり、その利用者数は2007年から2012年までの5年間で、アフリカでは317%、中東は294%も増加。ある調査では、2011年には約1.8兆ギガバイトだったデータ量は、2020年には約40兆ギガバイトにまで達すると予想しています。
さらに、データを収集するためのセンサーが低価格化や低消費電力化、小型化しており、その普及が進んでいます。そうしたセンサーを使うことで、家や自動車といったインターネットの外の世界にあったものがつながるようになり、今後さらに大量のデータが生成されることが予想されます。
高性能化が生んだ思わぬ悩みとは
ICTの進展やデータ量の増大は、それを管理するデータセンターに大きな影響を及ぼしています。
データセンターは、膨張するデータ量に対応するため、一部では巨大化する傾向にあります。アメリカでは、建物の床面積が約9万平方メートル以上もある超巨大なデータセンターも登場。こうした大型のデータセンターは、メガデータセンターと呼ばれています。
巨大化と合わせて、コンピューターの高性能化も進んでいます。データセンターでは、増え続けるデータに対して、CPUの性能を高め、処理速度を向上させることで対処してきました。さらに近年では、コンピュータグラフィックスの処理に使われてきたGPU(Graphics Processing Unit)をサーバに搭載することで、さらにデータの処理を早めようという動きも出ています。
この高性能化がデータセンターに思わぬ問題を生み出しているのです。
データセンターのキャパシティに限界が!?
高性能化がもたらした課題、それはデータセンターのキャパシティにあります。
サーバは性能を向上させるとともに、その発熱量も増やしてきました。さらにサーバの小型化も進んでいるため、現在のデータセンターは、高発熱の機器が、非常に密度の高い状況で設置された状態になっているのです。
サーバは過度に熱を持つと故障や誤作動の原因にもなりかねませんので、空調機で冷却することが欠かせません。サーバの高発熱化には、空調機の増設で対処することができますが、データセンターのスペースには限度があります。さらに、空調機を増設していくことで、消費電力がさらに膨らむという問題も発生しており、データセンターを運営する上での課題となっています。
このようにデータセンターのキャパシティが限界を迎えようとしている今、それを解決してデジタルトランスフォーメーションを実現するためには、どのような方法があるのでしょうか。次回から、データセンターの課題を見ていきます。
関連する記事
関連する商品・サービス
メールマガジンで配信いたします。