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世界が進む新たなフェーズ「脱炭素化」とは

2018年5月16日

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 地球環境問題が深刻化する中で、世界的に脱炭素化の流れが加速しています。それはどのような影響をもたらすのでしょうか。脱炭素化についての基礎知識を解説するとともに、各国の政策や市場の動向、今後の企業経営を左右するトレンドなどについて紹介します。

パリ協定で流れは「低炭素化」から「脱炭素化」へ

 脱炭素とはその名の通り、地球温暖化の原因となっている炭素の排出を防ぐために、化石燃料からの脱却を目指すことです。

 地球温暖化は、温室効果ガスの排出が原因となって起こります。その中でも大きな割合を占めるのが二酸化炭素(CO2)です。石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やすと、大量の二酸化炭素が大気中に放出されます。

 そのため、再生可能エネルギーの活用を進めることで、将来的に化石燃料に頼らない社会を実現しようという考え方が近年各国で広がっています。

 脱炭素化の動きが加速するきっかけとなったのは、2015年12月に開かれた気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)です。そこでは、地球温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」が採択されました。

 パリ協定は、産業革命前からの平均気温の上昇を1.5~2℃未満に抑制することを目標にしています。その目標達成のために、今世紀後半には世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることがうたわれているのです。

 それ以前にも、地球温暖化の防止に向けた国際的な取り決めとして、1997年に定められた「京都議定書」がありました。京都議定書は、先進国だけに温室効果ガスの排出削減の義務を負わせていたため、期待できる効果も限定的なものにとどまっていました。

 一方、パリ協定には、途上国も含む190以上の国と地域が参加。世界各国は温暖化対策の目標を5年ごとに策定・提出し、目標達成に向けた対策に取り組むことになっています。

 かつては温室効果ガスの排出量を低いレベルに抑える「低炭素化」が主流でしたが、もはやそれでは、“1.5~2℃未満目標”を達成することはできません。それに替わって、現在では温室効果ガスの排出量ゼロを目指す「脱炭素化」が世界的な潮流となっています。

日本26%、EU40%、世界各国の削減目標とは

 パリ協定の目標を達成するために、すでに多くの国が削減目標を定め、それに向けた取り組みを始めています。

 日本では、中期目標として、2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度の水準から26%削減する目標が定められました。そして、新たに作成された「地球温暖化対策計画」のもとで、具体的な取り組みが進められています。

 世界最大のCO2排出国である中国は、2030年頃にCO2排出量を減少に転じさせ、GDP当たりのCO2排出量を2005年より60%~65%削減する目標を掲げました。こうした目標達成に向けて、石炭に依存する産業構造を転換し、深刻な大気汚染の解消や再生可能エネルギーの普及に取り組んでいます。

 ヨーロッパに目を転じればEUが、2030年までに、1990年比で少なくとも40%の温室効果ガス排出量を削減する目標を設定しています。一方で、アメリカは、2025年までに、2005年比で温室効果ガス排出量を26~28%削減する目標を設定しておきながら、2017年にパリ協定からの離脱を表明しました。

 しかし、世界的に進む脱炭素化の潮流が変わることはないでしょう。なぜなら生産者や消費者の意識はすでに大きく変わり、脱炭素化へ向けた様々な取り組みが官民を問わずに熱心に進められているからです。

 そこでは、企業含めた社会全体が一丸となった対応が求められています。特に、パリ協定の削減目標を達成するためには、一般家庭よりもCO2を多く排出している企業の積極的な参加が欠かせません。

官民で進む脱炭素化への道

 日本では、国や地方自治体、産業界と様々なレベルで、脱炭素化に向けた取り組みがはじまっている。

 国レベルでは、再生可能エネルギーを今後の主力電源の1つとして位置づけています。日本で作られているエネルギーの内、再生可能エネルギーが締める割合は2010年度で約10%でしたが、政府はこれを2030年度には22%~24%程度まで引き上げる意向です。

 官民が一体となって脱炭素化を目指すモデルとしては、近年エネルギーの地産地消を目指す「地域新電力」に注目が集まっています。

 地域新電力とは、地方自治体と企業などが連携した新しい電力供給サービスです。ここでは、再生可能エネルギーなどによる電力を、発電した地域の中で消費することで、脱炭素化を図るとともに、地域経済の活性化を図ります。

 山形県や静岡県浜松市、群馬県中之条町、鳥取市、大阪府泉佐野市など、既に多くの地方自治体が参画しており、20を超える地域新電力が存在します。今後も、ますます地域新電力の数は増えていくことでしょう。

 世界のエネルギー市場を見ると、脱炭素化のトレンドを受け、太陽光発電や風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの市場が年々拡大しています。これまで日本はヨーロッパ諸国と比べ、再生可能エネルギーの導入が遅れていましたが、今後は「主力電源」と位置付けて導入拡大を進めていく計画です。

 こうして脱炭素化の動きは、国や市場の意識や価値観を大きく変えようとしています。これによって起こるゲームチェンジに遅れをとるまいと、企業も様々な取り組みを開始。次回は、そうした企業の具体的な取り組みを紹介します。

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