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勢いを増す大雨がもたらす大規模水害のリスク

2018年9月12日

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 大雨を伝えるニュースの中で、あまり使われるはずのない“記録的”“史上最大”といった表現が、近年よく使われるようになりました。これまでに我々が経験したことのないような大雨が頻発する中で、企業の事業継続を脅かす大規模な水害のリスクも高まっているといえます。今回は、急増する大雨の現状を探るとともに、大規模水害のリスクについて考えます。

温暖化で増える降雨量と高まる洪水発生確率

 日本では大雨が増えているといわれていますが、実際にはどうなのでしょうか。

 降雨量が1時間に50mmを超えると雨は滝のように降り続け、傘を差していても役に立たないほどの勢いになるといいます。日本では50mm以上の雨が最近10年間(2008~2017年)で約238回発生していると気象庁から発表されています。1976~1985年の10年間は約174回しか発生していなかったといいますから、約1.4倍増えたことになります。大雨の増加傾向は、80mmを超える猛烈な雨になるとさらに顕著で、およそ30年間で約1.7倍も増えています。

 大雨が増えている要因としては、地球温暖化との関係が疑われています。

 空気中の水蒸気は冷やされると水になり、これが雨となって地上に降ります。気温が上昇すると気圧が高まるとともに空気中に含まれる水蒸気の量も増えるので、それが大雨増加の一因と考えられているのです。

 温暖化の研究機関であるIPCCは「第5次評価報告書」の中で、世界の降水量は 21世紀末にかけてゆっくりと増加すると予測。その中では、21世紀末までに気温が2.6度~4.8度まで上昇するとした最悪の場合のシナリオも紹介しています。このシナリオをもとにした国土交通省の試算では、降雨量変化倍率は約1.3倍に、洪水発生確率の変化倍率は約4倍になるという結果が出ています。今後、温暖化の進行とともに、ますます大雨に悩まされそうです。

記録的短時間大雨の危険性とは

 近年は雨の中でも、短時間に局所で記録的な降雨量をもたらす大雨の発生回数が増えています。

 数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨が観測されると、気象庁から「記録的短時間大雨情報」が発表されます。その発表回数は年によってばらつきはありますが、直近の3年間だけをみると2015年は38件、2016年は58件、2017年は109件と急増。さらに、今年2018年の発表回数は、8月末の時点ですでに83件を記録しています。

 局地的な大雨の発生は、積乱雲が関係しています。地表付近に温かい空気が集まり、上空に冷たい空気が流れ込むと、温かい空気は上へと昇ろうとして上昇気流が生まれます。空気が上昇気流によって押し上げられると積乱雲となり、それが発達を続けると狭い範囲に短時間で強い雨を降らせるのです。積乱雲は発生してから消えるまで数十分ほどしかありませんが、同じ地域で積乱雲が次々と発生し続けて、記録的な降雨量になることもあります。

 短時間に局地的な大雨が降ると、土砂災害や河川の氾濫、低地や道路の冠水といった水害につながる危険があります。特に、中小河川は急に増水する可能性があり、注意が必要です。このように危険性の高い局地的な大雨ですが、予測が難しいことから「ゲリラ豪雨」とも呼ばれています。予測しづらい上に、30分~60分という非常に短い時間で危険な状態になるため、余裕を持って避難することが難しいという特徴を持っています。

水害を受けやすい日本の地理的条件

 局地的な大雨が頻発する以前から、日本は何度も大きな水害の被害を受けています。その理由は地理的な条件にあります。

 日本の国土は、その7割を山地や丘陵地が占めています。傾斜が急な地形に大雨が降ると、雨の一部は地面に吸収されますが、浸透しなかった分は川に流れ出します。すると、わずかな時間で川の水かさが増し、洪水が起こりやすくなります。また、地面に吸収された水分が原因で土砂崩れが発生し、それが川へ一気にながされると土石流になります。

 洪水などによって大量の土砂が運ばれると、それが低地に積もっていきます。長い時間かけて川からの土砂が堆積してつくられた地形を「沖積平野(ちゅうせきへいや)」と呼びます。日本では、沖積平野に、東京や大阪、名古屋といった大都市のほとんどが位置し、国内における人口の約1/2、総資産の約 3/4が集中しているといいます。しかし、この沖積平野は、洪水によってできたという特性上、川の水があふれやすく水害のリスクが常につきまとう土地でもあります。

 沖積平野では、過去に何度も大規模な水害が発生しています。古くは、1947年のカスリーン台風で利根川本川の堤防が決壊し、葛飾区、江戸川区の大半が水没。1959年には、伊勢湾台風によって伊勢湾周辺の海岸、河川堤防が決壊し、名古屋市南部などが長期間浸水するなど、大きな被害を受けてきました。そうした水害を何度も経験しながら、日本では一級河川を中心に治水対策が進み、被害の軽減が図られてきたのです。

大規模水害が増えても進まない企業の対策

 戦後、日本では治水対策が目覚ましい勢いで進展してきました。しかし、ここ20年で水害による被害額は飛躍的に増加しています。

 国土交通省によると、1995年に約1,622億円だった全国の水害被害額は、2016年には約4,660億円まで拡大。これは記録的な大雨によって、大規模な水害が発生したことが一因にあります。2016年は、台風10号によって岩手県で記録的な集中豪雨が発生し、浸水などの被害が発生しました。

 こうした記録的な大雨は、2016年に限らず毎年発生しています。そして、治水対策のキャパシティを超えた雨量によって、各地に大きな傷跡を残しています。今後、想定外の大雨がどの地域を襲うかを予測することはできません。それは、どの地域にも大規模水害が起こりうるということを意味しています。

 首都圏をみてみると、前述したカスリーン台風以降、治水対策が進んだこともあり大規模な水害の被害にあっていません。中央防災会議のシミュレーションでは、3日で約550mmという記録的大雨が荒川に降り、北区付近の堤防が決壊した場合、浸水面積は約110km2にのぼり、最大で約86万人が孤立すると予測。地下鉄へも浸水し、17路線の97駅、約147kmの区間が影響を受ける可能性があるとしています。さらに、電力やガス、水道、通信といったライフラインも途絶し、多くの人が影響を受けることが予想されます。

 そうなれば、企業活動にも支障が生じるでしょう。しかし、大雨が増加傾向にあり、大規模水害の危険も高まっていますが、企業の対策はあまり進んでいないのが実情です。内閣府の調査では、洪水の対策に取り組んでいる企業はいまだ30%程度にとどまっています。記録的大雨が頻発する今、企業が社員や事業を守るためには、想定外の事態すらも想定しながら水害対策に取り組むことが務めといえるでしょう。

 では、どのように取り組めばいいのでしょうか、次回は対策の方法について詳しく紹介します。

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