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脱炭素化に向けた街づくりで企業が果たす役割とは

2018年11月28日

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 世界的な脱炭素化の流れを受けて、街のあり方も大きく変化しようとしています。ESGの観点から、環境負荷の少ない、効率的なエネルギー活用が求められているのです。それには、多くのエネルギーを使用する企業の協力が欠かせません。さらに、企業がワークライフバランスや生産性の向上に取り組み、そこで生まれた活気を街に還元することも重要になるでしょう。今回は、ESGを軸にした街づくりにおける、企業の役割について考えます。

街づくりに変化を迫る「温暖化」という現実

 都市におけるエネルギー消費量は、減少傾向にあります。東京都を例に出すと、2015年度の総エネルギー消費量は629ペタジュールで、2000年度比で22%も減少しているのです。しかし、温暖化を解決するためには、それでもまだ足りないといいます。

 脱炭素のトレンドは、2015年に、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が採択されるとともに加速しました。そこでは、世界共通の目標(2℃目標)として、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃以内に抑えることが掲げられています。

 日本を含めた締結国は、それにもとづいて温室効果ガス排出量の削減目標を定めています。しかし、すべての国が削減目標を達成できたとしても、2℃目標は実現できないと考えられているのです。

 近年、台風や豪雨による交通網の寸断、建物の利用停止など、企業活動を停滞させる事案が増えています。このまま気温が上昇し、異常気象のリスクがさらに高まれば、経済に大きな損失が生じるでしょう。

 2℃目標の達成、そして脱炭素を推進するために、大量のエネルギーを消費する街のあり方に変化が求められています。その中で、「ESG」という概念を街づくりに取り入れるケースが現れています。

「ESG」という街づくりの新たな視点

 ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)の頭文字を取ったものです。

 企業がESGで示される3つの分野に対応することで、持続的な成長が可能になると考えられています。そのため、投資家は企業の投資価値をはかる際の指標として、ESGを利用しています。ESGへの投資額は、2016年の時点で約2,541兆円に達しており、すでに世界の投資額の約4分の1にあたる額を占めています。

 2017年9月、東京都は「都市づくりのグランドデザイン」を発表しました。そこでは、高度に成熟した街を、ESGの概念を取り込みながら、地球環境と調和を図ることで持続的に発展していくという構想が描かれています。さらに、2018年には、ESG投資の普及を促進するため、金融事業者を表彰する「東京金融賞」を創設しました。こうした動きには、ESGを軸に街のブランド力を高めるとともに、企業の競争力を高め、国際金融都市としてアピールしたいという狙いがあります。

 ESGにもとづいた企業活動が増えれば、都市の脱炭素化も徐々に進んでいくことでしょう。

「ZEB」が街の魅力をアップさせる

 企業がESGの観点から街づくりに貢献するためには、エネルギー消費量の削減が欠かせません。

 特に、オフィスビルにおけるエネルギー消費量は課題です。資源エネルギー庁の調査によると、オフィスビルを含めた「企業・事業所他部門」は、日本の最終エネルギー消費全体の約62%を占めているといいます。

 その課題解決に重要な役割を果たすのが「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」です。ZEBとは、一次エネルギーの消費量を、限りなくゼロに近づけた建物。その普及については、東京都の「都市づくりのグランドデザイン」で主要な取り組みとして取り上げられており、日本政府も政策課題にあげています。

 ZEBでは、日射遮蔽や高断熱化、高効率な設備といった省エネのほか、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用してエネルギーを作り、一次エネルギーの消費量を「正味ゼロ(ネット・ゼロ)」にすることで、脱炭素化を推進します。

 ZEBを実現することは、企業にとってESG投資の面で大きなアドバンテージになります。近年、機関投資家の間では、環境性能が低い不動産から資金を引き上げる「ネガティブ・スクリーニング」、逆に環境に配慮した不動産に投資する「ポジティブ・スクリーニング」という考え方が広がりつつあります。つまり企業は、ZEBを実現することで、リスクを低減し、チャンスをつかむことができるのです。

街づくりに欠かせない「ウェルネス」という視点

 ESG視点で街のあり方を考えると、環境に関する取り組みだけでは充分といえないでしょう。

 ESG投資には、投資判断に財務情報だけでなく、環境・社会・企業統治という非財務情報も織り込んで判断する「統合」という考え方があります。そこでは、「CASBEE」や「LEED」といった建物の環境性能を評価するシステムだけでなく、健康的かつ生産性の高い建築空間を評価する「WELL認証」といった制度も投資判断に用いられているのです。

 そこで重要になるのが、働きがいや活力につながる「ウェルネス」という考え方。業務内容に適したレイアウト・内装・什器、最適に保たれた照明・空調などによって、従業員1人ひとりが快適に過ごせるように、オフィス環境の改善を図るのです。

 ウェルネスオフィスを構築することで、企業の生産性は向上し、そうした取り組みを通して企業が存在感を発揮すれば、投資家の評価も高まるでしょう。それが地域に活力を与えることにもなります。環境と人に優しいまちづくりを進めるために、オフィスビルのZEB化やウェルネスへの対応は欠かせないでしょう。それは街の脱炭素化を前進させ、活気にもつながっていくことでしょう。

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