これからの太陽光発電設備は長期運用が前提になるといいます。前回の記事では、そのためにどのような構築が必要になるのかを考えていきました。今回は、そもそもなぜ太陽光発電設備の長期的な運用が求められているのかを解説。さらに、その中で環境貢献や収益といった成果を最大化する上で役立つO&M(Operation&Maintenance;運用保守)のポイントを紹介します。
FITの買取価格とともに従来の「20年」運用も変化
FIT(固定価格買取制度)では、太陽光発電設備の運用期間を考える際に、「20年」というのが1つの目安になっていました。
太陽光発電設備がFITで認定を受けると、再生可能エネルギーでつくった電気を、一定期間、国が定める固定の金額で買い取ってもらうことができます。その一定期間というのが20年間なのです。
FITの買取価格が高水準だった時には、最初の10年以内に初期投資分を回収し、残りの10年で収益の獲得を目指すという運用方法が一般的でした。しかし、従来の売電型太陽光発電設備を支えてきたFITの買取価格は下がり続けており、それに合わせて初期投資の回収により多くの時間が必要になっています。
このような状況ですが、太陽光のニーズが減っているわけではありません。むしろ世界的には急速に増え続けています。
世界における太陽光発電の年間導入量は、2017年は9800万kwありました。2015年には5070万kwだったといいますから、わずか2年で2倍近く増えたことになります。この数字を見るだけでも、世界で温暖化対策の取り組みが進む中、どれほど太陽光発電に対する期待の高まっているのかが伝わってきます。
そうした期待は、日本も同じです。2018年7月3日に発表となった、「第5次エネルギー基本計画」では、再生可能エネルギーを主力電源とするため、2030年に電源構成比率22~24%まで引き上げるという目標が政府によって示されました。そして、第5次エネルギー基本計画の中心に位置するのが、発電時にほとんどCO2を発生せず、長期にわたって安定的な発電が可能な太陽光発電なのです。
今後日本では、環境貢献を目的に、自家消費型の新しいかたちで太陽光発電設備の導入が進むと考えられています。
これからの運用が20年超を想定すべき理由
環境貢献を目的とした太陽光発電の運用では、温室効果ガスの排出量削減が重要な課題になります。そのためには、太陽光発電設備を長期にわたって使用することで、運用期間の発電量を増やして化石燃料の依存度を削減しなければいけません。
例えば、太陽光モジュールの保証期間は、20年に設定されていることが多いようです。しかし、その期間が過ぎたからといって、設備が使用できなくなるわけではありません。日ごろからメンテナンスをこまめに実施することで、30年、40年と使用し続けることも可能です。現に30年以上使用した太陽光モジュールが、設置当時と比べて発電能力がほとんど落ちていなかったというケースもあります。
また、電力の変換や調整を行う「PCS(パワーコンディショナー)」は、平均耐用年数が10年程と考えられています。しっかりと定期点検を実施することで故障のリスクを低減でき、故障時に発生する損失も回避できます。
設備の長寿命化というのは、これからの売電型の運用を考える際にも必要な視点といえるでしょう。先ほども述べた通り、FITの買取価格が下がる中で、投資回収までの道のりは依然と比べて遠くなっています。そうした状況で収益を確保するためには、太陽光発電設備を長期間にわたって運用していく必要があるのです。
長期運用で成果を最大限にする O&Mのポイントとは
これからは自家消費型においても、売電型においても、可能な限り長期間活用し、成果につなげていくという視点が重要になります。そのためには、O&Mに関わる2つのポイントがあります。
1つは、「年間発電量の最大化」。設備が故障すると、その間発電が停止してしまいますので、不具合を防ぐ適切な維持管理、何か起きてもすぐ対応できるような監視が必要になります。
2つ目が、「稼働年数の最大化」。太陽光発電設備をより長期間稼働させ、その分発電量を増やしていきます。そのためには、故障を防ぐ地道かつ丁寧な維持管理に加えて、維持管理のやりやすさ、災害リスクなどを見越した設計施工も重要になります。
今回紹介したように、太陽光発電設備を長期運用するためには、太陽光モジュールやPCSといった設備・機器をメンテナンスして長寿命化に取り組まなければいけません。そのためには、事後的に対処するのではなく、「年間発電量の最大化」「稼働年数の最大化」を念頭に置いた積極的なO&Mの実施が欠かせないのです。次回は、O&Mのポイントについて紹介します。
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