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「エネルギー白書2019」から読み解く日本の課題

2019年10月16日

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 エネルギー政策基本法に基づく年次報告「エネルギー白書」。そこには、日本のエネルギーに関する取り組みや今後の方針がまとめられています。さらに、世界各国の動向も掲載されており、これからのエネルギー動向を読み解く上で参考になる情報といえます。今回は、最新の「エネルギー白書2019」をもとに、各国の動向と日本の状況や課題について考えます。

「エネルギー白書2019」のポイントとは

 「エネルギー白書」とは、政府のエネルギーに関する取り組みや方針をまとめた報告書です。資源エネルギー庁が国会に提出する年次報告をもとにつくられており、2004年から毎年発行されています。

 2019年6月に発行された「エネルギー白書2019」では、2015年にCOP21で採択された地球温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」をふまえ、GHG(温室効果ガス)削減に向けた日本の動向が取り上げられています。

 それと並び、「福島の復興・再生に向けた最近の取り組み」「電力・ガス・燃料供給のレジリエンス対策の重要性」についても、主要なトピックスとして紹介されています。

 また日本だけでなく、主要先進国の施策や動向も掲載。「エネルギー白書2019」を読めば、各国のエネルギー事情も分かるようになっています。

パリ協定の目標達成ができる国、できない国

 世界の各国がパリ協定にもとづいてGHG排出量の削減・抑制目標を策定し、その達成に向けた取り組みを進めています。「エネルギー白書2019」は、そうした各国の進捗状況を掲載しています。

 主要国の中で現状においては目標達成が厳しそうなのが、ドイツと米国です。

 ドイツは、2030年にGHG排出量を1990年比で55%削減するという目標を立てていますが、2016年時点で27%の削減実績にとどまっています。再生可能エネルギー比率が2010年比で約2倍の30%に増加している一方で、かつては進んでいたエネルギー消費の削減が横ばいとなるなど課題が残ります。

 米国は、再エネ比率の増加、シェールガス革命により石炭から天然ガスへの転換といったポジティブなトピックスはあるものの、2025年にGHG排出量を26~28%削減(2005年比)するという目標を実現するには、さらなる取り組みが必要な状況です。

 一方、英国は目標達成に向け順調に取り組みを進めています。英国は、2030年にGHG排出量57%削減(1990年比)という目標に対し、2016年時点で41%の削減実績となっています。再エネ比率の伸長、天然ガスへの転換、エネルギー消費削減とバランスよく改善が進んでいます。

 そして、気になる日本の進捗ですが、2030年度にGHG排出量を26%削減(2013年度比)するという目標に対し、2016年度時点で7%の削減実績となっています。7%という数値は非常に小さく思えるかもしれません。しかし、日本も現在の水準で削減し続ければ、目標に届くと予想されています。

 しかし、喜んではいられません。日本は、エネルギー使用時に発生するCO2排出量が年間で一人当たり9トンもあり、これはOECD(経済協力開発機構)35ヶ国中で27位と世界的に見ても多い状態にあります。こうした課題を解決していかなければ、現在の順調な歩みにブレキーがかかる可能性もあるでしょう。それには、非化石電源比率のさらなる拡大が1つのキーとなりそうです。

非化石化とレジリエンスが課題に

 日本がパリ協定の目標を達成するためには、取り組むべきこともまだまだあります。

 日本で排出されるGHGのうち、エネルギー起因のCO2が92%を占めています。さらに、そのうちの50%は発電時に排出されています。加えて、他の主要国と比べると、電源の非化石化で後れを取っています。例えば、フランスは非化石電源比率が91%にまで高まっていますが、日本はわずか16%にとどまっているのです。

 日本は、電源の非化石化を進めていくことが課題といえるでしょう。それには、官民挙げての再生可能エネルギーの導入拡大が欠かせません。特にエネルギー消費量の多い企業の協力が重要な鍵を握っています。

 加えて、災害に対する強靭さ(レジリエンス)も求められるようになっています。自然災害の甚大化とともに、大規模停電などエネルギー供給に対するリスクが高まっている状態です。GHG排出量の削減とともに、電力などのレジリエンス対策は、エネルギー政策で重要性を増していくことでしょう。

 このように、日本はパリ協定の目標達成に向けて取り組みを進めていますが、まだまだ課題も多く存在します。そうした課題にどう取り組んでいくのでしょうか。次回は、日本のエネルギー政策と動向について迫ります。

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