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専売から自由化へ、「電力システム改革」がもたらす効果とは

2019年11月6日

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 日本で着々と進む電力システム改革。それについては、2016年に実現した電力の小売りの完全自由化がまだ記憶に新しいことでしょう。しかし、電力システム改革は小売り部門だけではありません。それより以前から段階的に取り組みが進められており、2020年には最終段階と呼ばれる送配電の自由化に向けた改革が行われます。電力システム改革は何を目指し、どのような効果があるのでしょうか。今回は、電力システム改革の動向を解説します。

電力システム改革で専売から自由化へ

 日本が進める電力システム改革とは、地域ごとに大手電力会社が専売していた電力供給の仕組みを見直すことで新規参入や競争を促し、電力をより安価かつ安定的に供給しようというものです。

 電気事業は大きく分けると、「発電」「送配電」「小売」という3つの部門に分けることができます。日本では、各地域にある大手電力会社がこの3部門のサービスを一括して提供する「地域専売」という形態がとられていました。さらに、電気料金については、発電や送電のコストに応じて決定する「総括原価方式」が採用されています。

 地域専売と総括原価方式により、これまで大手電力会社は投資した金額を確実に回収することができました。それにより、大手電力会社は経営基盤が安定し、高品質な電力網を全国津々浦々に整備すること可能でした。

 しかし、こうした形態は電力システムを構築する際には効果的だったものの、市場原理が働かず電気料金の低減が進まない、新規参入が難しく電力産業の活性化やイノベーションが進みにくいという課題も抱えていました。こうした局面を打開しようというのが電力システム改革の趣旨になります。

自由化がもたらす影響とは

 電力システム改革によって自由化が進むことで、「電気料金の低減」「市場の活性化」「安定供給の確保」といった効果が期待されています。

 自由化によって「発電」「送配電」「小売」という各部門に様々な企業が参入し、競争が促進されることで、電気料金の低減が進むと考えられています。また、他業種からの参入や需要家のニーズに応える新技術の開発が促されれば、イノベーションが誘発されるのではないかという期待もあります。

 東日本大震災では大規模停電や電力需給のひっ迫が発生し、大規模集中型の電力システムの脆弱性が浮き彫りになりました。そうした経験から、大手電力会社からの供給に頼るだけでなく、各地に存在する太陽光発電や風力発電、バイオマス発電、あるいは非常用発電機などの「分散型電源」で発電した電気を融通し合うことで緊急時のリスクを分散する柔軟な電力システムの必要性が説かれるようになっています。

 自由化によって分散型電源の導入が進むことによって、より自然災害などのトラブルに強い電力システムが構築できると考えられています。また、電気の地産地消が可能になることで、地域の活性化にもつながることでしょう。

発電、小売りと続いた改革。次は…

 日本における電力システム改革は段階的に進んできました。

 最初に自由化されたのは「発電」でした。1995年から数回にわたる制度改革が実施され、大手電力会社に発電した電気を提供する事業者の新規参入が可能になりました。現在では発電部門への参入は原則自由となっています。

 続いて「小売」の自由化がスタート。2000年にまず大規模工場、デパート・オフィスビル向けの電力が自由化され、利用者が自由に電力会社を選択できるようになりました。さらに、2004年に中規模工場、スーパーや中小ビル向け、2016年に家庭向けが自由化。これによって、あらゆる利用者がそれぞれのニーズに応じて使用する電力が選べる「小売の全面自由化」が実現しました。

 小売の全面自由化を受けて、新規参入した電力会社いわゆる「新電力」のシェアが年々拡大しています。そのシェアは販売電力量ベースで全体の約15.5%を占めています(2019年7月時点)。こうした新電力の特徴として、事業者の多くが再生可能エネルギーを取り扱っているということがあげられます。今後、新電力の躍進とともに、再生可能エネルギーの活用もさらに広がりをみせることでしょう。

 このことから電力システム改革は、電気の料金低減は安定的供給という側面だけでなく、再生エネルギーの普及においても非常に重要な施策といえるでしょう。その最終段階にあたるのが「送配電」の自由化です。「送配電」についても段階的に取り組みが進んでおり、2020年にはさらなる改革が実施されるといいます。次回は、その内容と影響について解説します。

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