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ビジネスコラム

タケ小山氏に聞く②「セルフマネジメントの極意」

2020年2月5日

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 前回は、アメリカでツアープロとしてデビューしたタケ小山氏のユニークなキャリアについて伺いました。マニアックな情報と軽妙洒脱な語り口で、解説者としても活躍中のタケ小山氏。今回は、解説者としての矜持、そしてゴルフと仕事で役立つセルフマネジメントについて語っていただきました。

【プロフィール】
タケ小山(本名:小山武明)
1964年7月7日生まれ。大学卒業後、1989年スポーツ振興フロリダのグレンリーフリゾート所属プロとして渡米し、米ミニツアーで37勝を記録した。1996年フロリダ・オーランドのゴルフチャンネルで解説を始める。2007年に帰国し、日本オープンなど国内競技に参戦。現在は、日本シニアオープンなどに参加しながら、ゴルフネットワークでの解説などテレビ出演やメディアで活躍。「屋根裏のプロゴルファー」の異名も持つ。

カラーコメンテーターとして選手の生きざまを伝える

――解説者のキャリアをアメリカでスタートさせましたが、日本との違いはありますか。

 アメリカと日本とで、解説者の役割はかなり違いますね。アメリカでは、アナウンサーは「プレイ・バイ・プレイコメンテーター」、解説者は「カラーコメンテーター」と呼ばれています。

 プレイ・バイ・プレイコメンテーターは、プレー中のショットの良し悪しといった試合内容を正確に伝えるのが仕事。一方、カラーコメンテーターは、試合内容に加え、過去の戦績やプライベートといった情報を交え、エンターテイメントとして楽しんでもらいます。解説に自分にしかできない色を付けることから、カラーコメンテーターと呼ばれているんです。

 選手のショットが良かったのか悪かったのか、ボールがどこに飛んで行ったか、そうした情報はテレビを見ていれば誰でも分かります。私は、映像を見ていても分からない選手の情報などを多く伝えた方が、視聴者に楽しんでもらえると思うんです。

 その分、解説者は、多くの選手について勉強しなければいけませんし、楽しく伝える話術も求められるため、簡単な仕事ではありません。私も、現在は日本のゴルフチャンネルなどで解説をさせてもらっていますが、試合前には膨大な資料をあたります。選手一人ひとりの細かい情報を積み重ねることで、視聴者の方に選手の生きざまが浮かぶような内容を目指しています。

 米国の解説者はプロゴルファー出身の人も多く、選手同士のつながりや裏情報も交えたりして、長い放送時間を飽きさせないように工夫しています。ツアープロとして活躍したゲーリー・マッコードとピーター・ジェイコブセンが解説した時は、選手のマニアックな情報の連続で本当に面白かったです。

 ちなみに、ピーター・ジェイコブセンは、解説者として活躍した後にツアーに戻ったところ、勝てるようになったと語っています。やはり、多くのプレイヤーを観察したことで得た知見を、自身のセルフマネジメントに活かしているんでしょうね。

セルフマネジメントの極意は自分の「道具」を知ること

――ゴルフでは「コースマネジメント」が重要だと話をよく聞きますが、小山さんはそれよりも「セルフマネジメント」の重要性を説いていらっしゃいますね。

 ゴルフコースには「設計者の罠」と呼ばれる、プレイヤーのミスを誘う仕掛けが隠されています。その罠を回避するために、コースのどの部分を狙うのかといったコースマネジメントはもちろん必要です。

 しかし、どれほど素晴らしいプランを立てても、自分の飛距離やショットの成功する確率を把握していなければ実現することはできません。まず、自分の実力を把握し、その上で最善の打ち手を考えるセルフマネジメントが必要なんです。

 セルフマネジメントの重要性が分かる良い例があります。2019年10月に、日本で初めてPGAツアートーナメントが開催されたましたよね。通常は370ヤードでパー4の10番ホールが、2日目には、豪雨によって池の水があふれた影響で、パー4のままコースの距離が140ヤードに短縮されるなど大変な大会になりました。

 最終日、この大会で優勝することになるタイガー・ウッズは、10番のティーショットを4番アイアン(以下、4I)で打ちました。飛距離は220ヤード。タイガーにしては控えめな飛距離です。

 10番はコースの右手にバンカー、左手には池がありました。長いクラブに持ち変えて飛距離を優先させるとまんまと「設計者の罠」にはまる可能性もあったのです。4Iを手にしたのは、それを避けるための選択でした。

 アベレージゴルファーの中には、「タイガーが4Iなら、俺も」と思う人がいるかもしれません。それで220ヤード飛ばせる人ならいいのでしょうが、一般の方の多くはドライバーやスプーンでもバンカーには届かないはずです。

 アベレージゴルファーの場合、「ドライバーなら220ヤード飛ばせる」と言っていても、それが一番調子の良い時の数値ということがよくあります。さらに、キャリーを把握していない人も少なくありません。運良く下り傾斜に落ちてランが出れば250ヤード稼げても、キャリーは200ヤードしかない。これでは、コースマネジメントをしようとしても、思うようにゲームを進めることは不可能です。

 「まず自分ができることを思い出してください」と、私はアドバイスしたいですね。タイガーのように飛ばすことを考えるのではなく、タイガーのように最適な選択をすることが大事なのです。これは仕事でも同じだと思います。新しいことを始めるときには、自分の実力をベースに段取りをするでしょう。

 自分の実力や技術のことを、私はしばしば「道具」と表現しますが、その「道具」をどう生かし切れるかが大切なんです。スコアアップの近道は、自分の実力を知り、それに合わせて最少スコアで上がることができるのかを考えることにあります。

一定のリズムがミスを減らす

――100切りや90切りを目指すアベレージゴルファーにアドバイスをいただけますか。

 100切りとか90切りという目標は、あまりにも漠然としていると感じます。18ホールを全部ボギーで回ればスコアは90。そこで1ホールでもパーがあれば、89になります。100切りしたいという場合も、90に対して9ホールはダブルボギーが許されます。

 このように考えると、「1ホールごとにどうすればボギーで上がればいいのか」と課題も具体的になっていきます。それがセルフマネジメントなんです。

 アベレージをボギーで回るために、ミスショットを減らさなければいけません。解説中に数多くの失敗を見ていて、気づいたことがあります。失敗する時というのは、プレースピードが変わった時、つまりそれまで一定だったリズムが乱れたときに発生することが多いようなのです。

 例えば、焦ってショットが早くなった時に失敗する経験は、誰でもあると思います。反対に待ち時間が長い時も、ミスを犯しがちです。淡々と同じペースでラウンドすることを心がけるだけで、ミスは減らせるはずです。

 自分ができることをまず頭に入れ、なるべく一定のリズムでプリショットルーティーンからアドレスに入りショットする。これを心がければ、かなりミスを減らすことができると思いますよ。普段の仕事でもこうしたルーティンは有効かもしれませんね。ぜひセルフマネジメントを活用してみてください。

ビジネスコラム 伊藤佳子プロに聞く<全3回>

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