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これからの災害に備えるために、過去から何を学ぶべきか

2020年3月4日

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 2011年3月11日の東日本大震災から、来年で10年。その間にも、地震や台風などの自然災害が日本を襲い、企業活動に大きな被害を与えてきました。企業が自然災害に備えるために、過去から何を学べばいいのでしょうか。今回は、国の動向などをもとに、これからの防災を考えるためのヒントを探ります。

「民」主導の取り組みが重要に

 東日本大震災以降、大小含めて多くの地震が発生しています。

 その中で特に大きなものとしては熊本地震があげられます。熊本地震は、2016年4月14日と16日に震度7を記録し、大きな被害をもたらしました。また、国内の直下型地震で初めて「長周期パルス」が観測され、専門家を驚かせました。長周期パルスは長い周期の揺れ。この揺れに超高層ビルは弱く、変形や損傷の原因になる危険性が指摘されています。

 2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震も、震度7を記録した地震です。人や建物などに被害が出ただけでなく、北海道という地域全域の停電、いわゆる「ブラックアウト」が日本で初めて発生。国内に大きな衝撃がはしりました。

 また、台風や集中豪雨も毎年のように日本各地に大きな被害を残しています。昨年だけ見ても、台風第15号では千葉県を中心に約2,000本の電柱が損傷し、大規模停電が発生。台風第19号は、伊豆半島から東北地方に大雨を降らし、浸水によって北陸新幹線の一部区間が一時運休するなど経済的にも大きな被害が発生しました。

 日本政府は、こうした災害の状況を考慮しながら、防災に関する戦略などをまとめた「国土強靱化基本計画」の見直しを定期的に行っています。その中で、「民」主導の取り組みが特に配慮すべき事項として挙げられています。防災について、企業が自社の事業を守るために主体的に取り組むことはもちろん、さらに、国や自治体と連携して地域の一員として貢献することも求められるようになっているのです。

ビッグデータを集約した災害情報プラットフォームがある

 国のより具体的な方針は、中央防災会議によって「防災基本計画」としてまとめられています。2019年5月に発表された最新のものでは、前年7月に発生した豪雨による水害・土砂災害の被害を教訓に、避難対策についていくつか修正が行われました。

 その1つが、「自らの命は自らが守る」という意識の徹底です。そのために、住民に対して「平時より、災害リスクや避難行動等について把握する」「地域の防災リーダーのもと、避難計画の作成や避難訓練等を行い地域の防災力を高める」「災害時には自らの判断で適切な避難行動をとる」という行動を推奨しています。

 内閣府は災害に関する情報を効率的に共有するため、2017年度から中央防災会議のワーキンググループのもとに、「国と地方・民間の『災害情報ハブ』推進チーム」を設置。そこでは、国・自治体・企業による災害時における情報共有、ビッグデータを使った被災者の避難動向把握や、衛星データの災害対応への活用などについて検討が行われています。そうした活動を推進するために、国はICTの活用にも力を入れています。

 2019年から運用を開始したのが災害時の情報収集・整理のプラットフォーム「SIP4D(府省庁連携防災情報共有システム)」です。これは、防災科学技術研究所が民間企業と開発したもので、災害情報をデジタル地図上に集約し、国や自治体、企業に現場に適した形で必要な情報を提供します。災害情報の共有を目的したチーム「ISUT(Information Support Team)」は、「SIP4D」を活用して都道府県の災害対本部などに情報提供を行っています。

10年で大幅に進んだ企業のBCP策定

 国の取り組みを受けて、企業も防災に力を入れるようになってきています。

 内閣府の調査によると、BCPを策定済みあるいは策定中の大企業は、2007年度は35%にとどまっていましたが、2017年度には75%と増加しています。中堅企業においても、2007年度は16%でしたが、2017年度に42%となっています。

 同調査では、BCPを策定したきっかけについても質問をしています。回答として最も多かったのは「近年多発する自然災害への備え」で、全体で44.2%に上ります。次いで、「過去の被災経験から」(全体で17.2%)という回答が続いています。

 BCPを策定する際には、過去の経験あるいは事例から学ぶことが大切です。近年の自然災害では、先述した通り大規模なインフラの断絶が何度も生じています。従業員の安全確保や災害時の体制を検討するといったBCPの基本的な対策に加え、非常用の電源、安否確認サービスや無線設備などの通信手段を準備する企業も多いようです。

災害の備え方は過去が教えてくれる

 防災については、過去から学ぶという考え方は全国に広がりをみせています。

 東日本大震災では、海岸部を中心に大きな被害を出ました。例えば、宮城県のある自治体は、津波による被害を教訓に、住宅地を災害リスクの低い高台に集団移転させました。その一方で、運河近くに産業施設や公園・緑地などを設置し、賑わいも両立させた復興に取り組んでいます。また、大規模かつ長期間にわたる停電の経験から、電力不足を補えるように太陽光発電設備、蓄電池などの整備を進めている自治体もあります。

 水害による被害は、全国各地の沿岸部や河川周辺部で懸念されています。2020年2月7日には、被災リスクが大きいと考えられる場所に住宅や店舗の建設を原則禁止するため、街づくり関連法の改正案が閣議決定されました。企業も過去の事例や災害の危険度を示すハザードマップなどを参考に、激甚する災害に備える必要があるでしょう。

 この10年がそうであったように、地震や台風など自然災害のリスクは、この先の10年、20年も企業の活動を脅かし続ける可能性があります。そうしたリスクを低減するためには、過去から学び、備えることが大切です。過去の事例や政府のデータベースなどを活用しながら、これから災害にどう備えるのかを検討してみてはいかがでしょうか。

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