お問い合わせ

NTTファシリティーズ

メールのアイコン

ビジネスコラム

日本を変える可能性を秘めた「Govtech」とは

2020年7月8日

Tweet
Facebook

 デジタルの力によって行政での手続効率化や内部の改革、快適なサービス提供などのイノベーションをもたらす「Govtech」の取り組みが、世界各国で進んでいます。日本でも長年注目をされてきましたが、同時に対応の遅れも指摘されてきました。しかし、その潮目が変わろうとしています。そして今、日本で動き出したGovtechは、行政だけでなくスマートシティの実現にも大きな影響を及ぼすと考えられています。今回は、Govtechの動向を追うとともに、スマートシティとの関係性をひも解きます。

Govtechが行政にデジタライゼーションをもたらす

 Govtechとは、「Government(政府)」と「Technology(技術)」を組み合わせた言葉で、デジタルテクノロジーにより行政にイノベーションをもたらすという意味があります。

 行政のデジタル化と聞いても、あまり新鮮味を感じない方もいらっしゃるかもしれません。実際にそうした取り組みは、日本でも以前から行われてきました。約20前の2001年に発表された「IT基本戦略」で、既に「電子政府」の実現が重要課題として取り上げられていました。しかし、それとGovtechでは少し意味合いが異なります。

 従来の電子政府は、主な目的は紙をデジタルに置き換え、行政手続きを効率化しようというものでした。それに対し、Govtechは行政のデジタライゼーションを目的としています。手続の効率化にとどまらず、組織や人材といった行政内部の改革や、国民や企業により快適なサービスを提供することを目指すのです。

デジタル化を前提とした2030年の行政サービスのあり方

 Govtechは私たちの暮らしにどのような影響をあたえるのでしょうか、海外や日本の動向から考察していきます。

 Govtechの先進国として有名なのがエストニアです。エストニアでは、2002年に電子申請や電子取引の際の認証基盤となるIDカードを発行し、現在ではさまざまな行政手続きがオンラインで行えるようになっています。例えば、住民登録、会社や土地の登記などの手続きもオンライン対応となってており、わざわざ役所を訪ねて行う必要がありません。選挙もデジタル化されており、インターネットで投票できるようになっているのです。さらに、デジタル署名が法制化され、自筆の証明と同じ効果を持つことが担保されています。

 日本では、平成から令和と時代が移り変わる中で、Govtechが大きく進展する出来事がありました。

 2019年5月に、「デジタル手続法」が成立し、行政のあらゆる手続をデジタル化する方針が示されました。今後、行政のサービスや手続きをデジタルで完結させる「デジタルファースト」一度提出した情報は、二度提出することを不要とする「ワンスオンリー」民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現する「コネクテッド・ワンストップ」という原則のもとでデジタル化が進められています。

 2020年3月には、「デジタル・ガバメント実現のためのグランドデザイン」が発表されました。これは、2030年の行政サービスのあり方と、それを支える政府情報システム・データ整備の方向性をまとめたものです。2030年の行政サービスのあり方として、国民や企業に快適なサービスを提供するほか、行政サービスの効率化、その担い手の多様化、あるいは、人材育成や官民コラボレーションの推進、デジタルサポートによる多様な人を包み込む社会の実現が上げられています。

 さらに、新型感染症の流行をきっかけにオンラインで完結するサービスの必要性が高まっており、Govtechはさらなる進展が期待されています。

都市のスマート化を加速させるベース・レジストリ

  政府はデジタル手続法を制定し、データ活用に力を入れていくことを示しています。そのため、行政の保有する個人、法人、地理空間、不動産、インフラ、証明・資格といった「社会基盤データ(ベース・レジストリ)」を整備していくものと考えられます。

 そして、ベース・レジストリとIoTやAIなどを連携し、都市の交通網やエネルギー最適化を行う取り組みが日本でも着々と進んでいます。スマートシティにおいては、交通やエネルギーのインフラに関するデータ、地図や地理情報などのデータは欠かせないものです。ベース・レジストリが整備されることで、都市のスマート化が加速することでしょう。

 日本でもGovtechとスマートシティという両面から、地方創生に取り組んでいる自治体もあります。

 例えば、福島県のある都市では、スマートメーターからのデータをもとにしたエネルギーマネジメントや、住民情報などを地図上に表示するGIS(地理情報システム)を空き家対策やバス路線の最適化に役立てるなど、「まちの見える化」に取り組んでいます。さらに、その中でデータ分析を行うアナリティクス⼈材を育成し、データ分析にもとづいた地⽅創⽣を推進しようという試みも進められているのです。

 このように、Govtechによって行政のデータが整備され、民間からのアクセスが可能になることで、スマートシティの実現も大きく前進します。それは、同時に観光や交通、不動産、教育、エネルギーなどのさまざまなビジネスに変革とチャンスをもたらすはずです。これからもGovtechの進展に注目してみてはいかがでしょうか。

関連する記事

最新のコラムや導入事例を
メールマガジンで配信いたします。
えふ・マガの購読はこちら

お問い合わせ・資料請求

PAGE TOP