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ビジネスコラム

歴史的建造物の活用で、地域の記憶を未来へ引き継ぐ

2020年9月30日

 近年、歴史的建造物をリノベーションし、活用する事例が増えてきました。特に2018~2019年には全国で歴史的建造物を再利用した大規模な商業施設が開業し、話題を集めました。その背景の1つには、歴史的建造物を観光資源として有効活用しようとする国や企業の思惑があります。さらに、日本経済の成熟化も大きく影響しているようです。その中で、建造物を長く利用するだけではなく、より価値を高めようとする新たな視点も生まれています。今回は、歴史的建造物活用のトレンドを追います。

歴史的建造物がブームになっている理由とは

近年、歴史的建造物をリノベーションし、商業施設として再利用する事例が増えています。

 特にここ数年で、名建築を最新技術で復元した百貨店や、百貨店を転用した宿泊施設、電話局をリノベーションしたホテルなど、歴史的建造物を活用した商業施設が相次いで開業しており、マスコミで取り上げられるなど大きな注目を浴びています。

 大規模な歴史的建造物をリノベーションして商業施設に転用することは、新築以上に手間もかかることも多く、日本ではあまり積極的に行われてきませんでした。それが現在盛んに行われるようになったのは、「地域の歴史を担っている建造物には、新築では味わうことができない物語や風格が備わっていて、観光資源として大きな価値を持っている」と認知されているからだと考えられます。

 また、長きにわたって地域のランドマークとなってきた建造物を保存することは、地域活性化という点でも意味があります。国や自治体も、歴史的建造物の活用を積極的に支援しています。例えば、ある自治体は、建設後50年が経過した景観上重要だと考えられる建造物を「歴史的建造物」として選定。その建造物保存や修復を支援しています。

 さらに、歴史的建造物の再利用が進む背景には、こうした実利的な理由だけでなく、日本社会の変化も大きく影響しています。

スクラップアンドビルドからストックへ

 日本では近年盛り上がりを見せている歴史的建造物の再利用ですが、欧米では以前からごく一般的に行われてきました。それには、建物に対する文化の違いがあります。

 日本と欧米では、建物に使われている素材が大きく異なります。欧米の伝統的な建物は主に石やレンガで作られているため、長い年月にわたって使用することができます。そのため、建物を長く使う文化が根付いています。

 一方、日本の伝統的な建物は木造。石造の建物と比べて火に弱いという特徴があります。

 特に、江戸時代の下町は木造の家屋が過度に密集していたため、「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉が残っているほど火事が頻発していました。また大きな地震も多かったため、建物が破壊されては新たにつくり直すという「スクラップアンドビルド」の文化が根付き、近年まで受け継がれてきました。戦後からの復興と高度成長期に、増大する需要に応えるべく、建物が次々に建てられたことも、「歴史よりも新しさ」を重視する価値観を後押ししました。

 しかし、日本経済が成熟期を迎える現在、いまある建物をできるだけ長く大事に利用しようという「ストック」という考え方が主流になりつつあります。さらに、近頃では、歴史的建造物が観光資源や地域の象徴として注目されるようになっており、ただ長く利用するだけでなく、適切な管理によって価値を高めていこうというように変化してきています。

歴史的建造物の再生が、地域復興の起爆剤になる

 建物の価値向上は、地域の活性化にもつながります。地域内の歴史的・文化的な建築物を現代の技術を利用して再生すれば、街のランドマークになるだけでなく、住民の心のよりどころにもなります。そして、文化や歴史の面影が残る街並みを観光資源として活用すれば、経済が発展し、雇用が創出される可能性があり、その結果、街に活気が甦ります。歴史的建物の魅力を引き出すことは、地域の資産を活用することでもあるのです。

 この考え方は、現在世界的な潮流となっているSDGs(持続可能な開発目標)にも合致しています。環境負荷を抑えつつ、地域に新しいブランディングと経済成長を実現するためには、既存のリソースをできるだけ生かすことが重要です。「建物の適切な管理・運用」は、コミュニティの再生や、住民のアイデンティティの醸成、さらには地域の記憶を次の世代に引き継ぎながら発展していく「新しい街づくりのかたち」へとリンクしているのです。

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