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自動車業界の新たな潮流「CASE」が社会や私たちの考え方を変える

2020年10月14日

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 現在、自動車業界は100年に一度という大変革の時代に突入したといわれています。自動車業界に新しい風を吹かせているのが、「コネクテッド(Connected)」、「自動運転(Autonomous)」、「シェアリング(Shared & Services)」、「電動化(Electric)」という4つの変化です。これらは、それぞれの頭文字と取って「CASE」と呼ばれています。今後、CASEの各分野で起こるイノベーションが相互に影響し合い、自動車産業だけでなく、社会全体にも大きな変化をもたらすと考えられています。今回は、そうしたCASEの概要を紹介するとともに、社会への影響について考えます。

CASEが自動車業界に与えた影響

 CASEはもともと、2016年に開催されたパリのモーターショーで、ある自動車メーカーが発表したコンセプトでした。そこでは、自動車業界の枠組みを大きく変えるトレンドとして、「コネクテッド」、「自動運転」、「シェアリング&サービス」、「電動化」が紹介されました。

 これは、ある意味で、従来の自動車を完成させて売る「メーカー」から、移動に関わる幅広いサービスを提供する「モビリティプロバイダー」への転身を告げる宣言と受け取られ、他の自動車メーカーに大きな衝撃を与えました。現在では、多くの自動車メーカーが競争軸を変え、CASEに注力しています。

 CASEのCである「コネクテッド」は、CASE全体を支える基盤にもなっています。これは自動車に内蔵された通信機器により、車両の状態や交通状況といったデータを収集・分析・共有することで、スムーズで安全な移動を実現しようとする試みです。さらに、5Gなどモバイル通信の高速化と遅延解消によって、それぞれの自動車がデータの解析を行う、エッジコンピューティングの発想も取り入れられています。

 現在でも、すでにコネクテッドを活用したサービスが利用されています。例えば、駐車場の空き情報や、精度の高い交通情報がわかるのも、コネクテッドの恩恵です。さらに、故障が発生したときに自動で通報を行うシステムや、盗難にあった際に車両の位置を追跡し、エンジンの再始動を制御するセキュリティ機能、移動中の車内で楽しめる音楽配信など、多くのサービスが登場しています。

 CASEのAは「自動運転」を指します。自動運転は、性能に応じて5つのレベルに分けることができます。日本ではこれまで、ステアリング操作と加減速といった一部の操作を自動化し、渋滞時などにドライバーの疲労を軽減することができるレベル2までの自動車が市販されてきました。

 レベル3では、高速道路など特定の場所で全ての操作を自動化でき、ドライバーは運転から解放されます。日本では2020年4月に道路交通法が改正され、レベル3の自動車が公道でも高速道路など特定の場所で走行できるようになりました。これを受け、国内のある自動車メーカーが2020年度内にレベル3の量産車を市場に投入すると発表しています。

所有から共有へ。自動車の持つ意味が変わる

 CASEのS、「シェアリング」には、事業者や個人が車両ごと利用者に貸し出す「カーシェアリング」と、車両の所有者と利用者を結び付けて相乗りを行う「ライドシェアリング」があります。カーシェアリングには、レンタカー会社やコインパーキングの運営会社などさまざまな企業が参入しており、日本では身近な存在になりつつあります。

 一方、ライドシェアリングは、海外で急速に普及しています。日本では法律の関係上ビジネスを展開できませんが、例外もあり、「公共の交通サービスが存在しない過疎地域」など特定の条件化では許可されています。実際に、関西地方のある自治体は、地域からタクシー会社が撤退したのをきっかけにライドシェアリングを実施しています。今後、さらなる地域の過疎化や少子高齢化などをきっかけに移動困難になる住民が増えると考えられており、その解決のためにライドシェアリングの実証実験に取り組む自治体が徐々に増えています。

 これまで自動車は所有して乗ることが一般的でした。しかし、自動運転とシェアリングが結びつくと、自動車は「所有する」のではなく 「共有する」ものになります。または、「移動」というサービスを提供するためのツールのひとつ、という扱いになるのかもしれません。

 CASEのEである「電動化」も、自動車の未来を語るのに欠かせないキーワードです。ハイブリッド自動車や電気自動車(EV)が増えるのは、世界が脱炭素化を目指す中で必然の流れです。各国が電動化に向けてさまざまな施策を行っています。例えば、イギリスとフランスは2040年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止する方針を発表。中国もガソリン車を禁止する表明を出しています。こうした各国の規制や市場の動向を受けて、自動車メーカーもEVの普及に力を入れています。日本国内でも同様で、2019年に約2万1000台だった電気自動車の販売台数は、今後増加していく見込みです。

自動車の変化が、街の風景も変えていく

 自動車を製造・販売するメーカーが、移動というサービスを提供するモビリティプロバイダーとなることで、街づくりも大きく変化すると考えられます。これからの街づくりは、電動自動車の充電設備はもちろん、シェアリングのための環境整備も考慮に入れなければなりません。来るべきCASEの進展に向け、日本の政府や自治体も準備を進めているところです。

 経済産業省と国土交通省による「スマートモビリティチャレンジ」という実証事業では、さまざまな自治体が自動運転やライドシェアリングといった新たなモビリティサービスによって地域の課題解決に取り組んでいます。そこでは、モビリティから得たデータを地域政策へフィードバックする、移動コンビニや移動郵便局といった商業・医療・行政サービスを住民へ届けるといった構想が立てられています。

 自動車が一個人の所有物から、地域のインフラとして位置づけられれば、私たちの生活も、街づくりのあり方も大きく変化していきます。CASEの進展によって今後、自動車産業や日本社会にどのような変化が生じるのか、注意しながら動向を追ってみてはいかがでしょうか。

 次回は、CASEのEである電気自動車について、詳細な解説をお届けいたします。

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